雨上がりのタオル

一ノ瀬春樹

第1話 相原 一生

「モテたい」ってなんて残酷な言葉なんだって思う。好きな人からは好かれずよくわかんない奴からモテる。もちろんこっちからアプローチすれば好意を持ってもらえるかもしれないがまたそれは別の話だ。俺だって中学の時は可愛いって言われる子と付き合ったり、今この福岡九州高校のそこそこ可愛いって子と付き合ったりしたりもした。相原君付き合って下さいって言われたりも少なくはない。だから多少はわからなくもない。あーでもまだ恋人とはキス泊まりだったな。ワンチャン先月別れた隣のクラスの灰原ならイケたかもな。こんな考え事を国語の睡眠時間の授業で有名である谷崎先生の授業中に1番後ろの俺の席から斜め前のうちのクラスのマドンナである神木優香を見ながら妄想を膨らませている。神木も少しウトウトしているが可愛いすぎて先生も注意する勇気なんてない。神木優香といったらうちの高校で知らないやつなんていないんじゃないか?3年の先輩もちょいちょい見に来るし、俺には星よりも遠い存在に見えてしまう。俺は小学校からサッカーをしていて、今高校で2年ながらレギュラーに入っていた。「入っていた」ってことは今は入ってないってこと。足の靭帯をやっちゃってかれこれ2ヶ月帰宅部生活。サッカーを何度辞めようかと思ったか、どんくらい落ち込んだかはもう覚えていない。考えているのにも疲れている自分がいる。最近は帰宅部の連中と一緒に帰って、カラオケとか高校生っぽいことしかしてない。本当は楽しくないって叫びちらかしたい。クラスの女子とか他クラスの女子とかもたまに一緒に行ったりもして帰り際に2人きりになってそれっぽい話しをして進展もないのにドキドキしている自分がいる。「お前はぜんぜん可愛くないし、俺との進展とかないからな?」って言いてー。楽しくないわけなんかじゃない。自分よりも下のやつを見るのが気分がいいのかもしれないな。だって俺は2が月前までコート場を走り回るストライカーだったから。過去形の言葉である。「だった」が何度も脳に響帰ってくる。家でベットに寝転びながら何度も何度も脳に響帰ってくる。サッカーしたいと思ってもまともに走れない俺からしたら嫌になるから何も考えたくない。俺の周りのやつは高校生なのにタバコを吸ってる。俺もついつい1度吸ってしまってからこいつらといる時だけ吸っている。「自分のことダサいってわかっていながらも」。2年の夏休みに入る前、クラスでBBQをするとこになっている。正直クラスにサッカー部がいる時点で気が向かないけど、俺以外全員行くから仕方なく参加することになった。BBQ当日には女子は気合いを入れているのがもろわかりだし、男子もそれなりにカッコつけてんなってわかる。服装、髪、肌、顔のパーツに色々手つけたり、よくできてる。可愛いやつは上手いって思うけど、可愛くないやつは下手くそって思う。化粧が濃ゆい女は何もにも言うことは無い。クラスのヤンキーの佐藤も原付に乗って来てるし、クラス愛が強いのか?一瞬思った。順調にみんなで楽しく海辺で過ごす時間も悪くはなかった。サッカー部の谷口が話しかけてくるまでは。

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