第2話 現実
フリーズした。は現在を表しているだろう。
俺はどんな間抜けな表情をしているか、腑抜けた声を揚げないか。と考える暇も無く、彼女が発した言葉がフラッシュバックする。
“第5世代人類“
“設定された“
“識別目的"
23年間活動してきた俺の脳内では処理出来ないのだろうか。否、23年間で朽ちる程に柔な脳はしていないだろう。じゃあ、何故理解出来ない。
矛盾?俺が拒絶している?俺に悪影響?
考えたって仕方ないな。俺は割り切って深く息を吸い、吐いた。それだけでは抑えきれず、爪を噛む。癖では無いが、自然と指が動き、歯が噛んだ。
転移して帰還してきた。の説明よりも愚直に聞いた方がいいだろう。
『00039さん。俺にセカイを教えて欲しい』
識別No.00039さんが感じるのは俺に対する疑問だろう。何故、常識を知らないのか、と。
俺の推測に過ぎず、正解かどうかは分からないが、多分合っていると考えたい。
〈世界は5年間の間に変貌を遂げた〉
そう考えている内に彼女は潤った赤い唇を
開いた。
「世界ですか?それはつまり私達は無限循環再生型惑星チキュウにいることですか?それとも、世界統一国家〈HEVEN〉に関することですか?」
「そ・れ・と・も、性の事ですか?」
無限循環再生型惑星?
世界統一国家〈HEVEN〉?
俺は部分的な意味同士を繋げて解釈した。
無限に循環して再生する地球と世界の国々を一つに統合した国、HEVENが存在すること。
悪ふざけが過ぎた女性だな。
『男として最後の言葉は忘れるとしよう。まぁ、君が了承してくれるのならば、一晩お願いしたいものだがね。話が逸れたが無限循環再生型惑星とはどういう意味なんだ?』
彼女が性に関すると言った刹那、服を破き、胸を揉みしだいて犯そうと考えたが、やはり生理用品の事を思い出して、我慢した。
"一晩お願いしたい"と私が言った時の彼女の表情は、生理後の性欲が高まった女の顔をしていた。
彼女は少し紅潮した頬をして、両手で自らのボディラインをなぞり、円を描くように胸もなぞり話してきた。
「それはですね……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺の理性が途切れ、羽毛に倒される女。
女の声。
軋む羽毛。
多量の体液。
彼女と交じって一晩過ごした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝。
彼女は施設の制服らしき服に着替えていた。
俺はキャリーバッグに入れておいた下着とワイシャツに着替えた。下半身は黒のジーンズにした。
俺は朝食は取らない派だ。
朝はギリギリまで寝たいからな。
彼女は携帯食と記載された袋の中から、緑色のカプセル状を口に入れた。
『おはよう、00039さん。口にしたのは?』
「おはようございます。カミザキさん。先程、私が口にしたのは、野菜ベースの健康重視された携帯食料Vですね」
『へぇ、Vって事は何種類か携帯食があるだね』
「はい、肉ベースの携帯食料M、穀物ベースの携帯食料C、甘味用の携帯食料D、そして、私が口にした携帯食料Vの4種類がありますね。カミザキも如何ですか?」
肉、meetのMだろうな。穀物、cornのCで甘味用はdesertのD、野菜はvegetableのV。
ここは、食べるべきだろうな。
『じゃあ、ご好意に甘えていただきます』
00039さんが一粒掴んだ野菜ベースの携帯食料Vを俺の手に乗せてくれた。
00039さんが食べたのは緑色のカプセルだったが、俺が食べたのは緑と青の二色構成だった。
変に思ったが、5年前のペットボトルのお茶やお菓子に多少の変色や沈殿物が有るのは珍しい事ではなかったからかもしれない。
その時、手が触れて、ドキッとした。そのまま、勢いで口に入れた。水は必要なかった。
飲み込んだ為、味はしなかった。ただ、舌に触れた時、苦味があり、満腹感が襲った。
何故か気まずかった俺は口を開いた。
『昨日は押し倒しちゃってすみません』
「いえ、私こそ生理後で……なんだかおかしくなってて、ごめんなさい」
生理後だった。
『話は変わるけど、無限循環再生型惑星ってどういう意味なんだ?』
「そのままの意味ですよ。燃料資源ボイドノイドが無限に再生する事が可能で、発生した熱や電気で生活を循環させて生き延びる事が出来る惑星。ってことですね」
「それよりもカミザキさんって、HEVENが行ってきた政策を知らな過ぎませんかー?」
ボイドノイド。
それは5年前にもあった。
地球の核近くに存在する科学生命体だ。
ボイドノイドは増殖、爆発、再生、増殖の
工程を繰り返す。それを100回繰り返すと
力尽きて消滅する旨しの研究成果が発表
されている。だが、それも5年前。
『実は、コールドスリープさせられていた』
世界を疑い抗った彼の最果て 篠原りあ @ivyent_lia
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