第5話
「ねえ!倒れた新入生ってここにいる!?」
がらりと、保健室のドアが開く音がし、誰かが姫乃の話に割って入ってくる。
俺らは反射的に、ドアの方に目を向ける。
目線の先にいたのは、今朝学校に行く途中で出会ったかぐや姫の子だった。
かぐや姫の彼女は、俺たちを見るや否や目を丸くしている。
「わーお、リューゲの姫乃サラちゃんじゃん。え、もしかして君、サラちゃんとそういう·····?」
ニヤニヤと俺の顔色を伺うかぐや姫の彼女は、どうやらあらぬ誤解を招いている気がして、俺は慌てて否定した。
「ち、違うからな!?勘違いするなよ!?俺と姫乃が付き合うなんて絶対にありえないし、来世でもないから!」
「誰も付き合ってるでしょなんて聞いてないよ?」
そう言って、かぐや姫の彼女はムフフと笑う。
なんだこいつ、意地汚いやつだ。
俺はため息をつき、このまま体育館に戻るつもりもなかったから、再び眠りにつこうとした。それに、目の前に美少女が2人もいる状況に俺は耐えられない。さすがDT。
すると今度は、廊下からパタパタパタと誰かが走ってくる音が聞こえてくる。
保健室の先生か?俺は寝るのをやめて、かぐや姫が入ってきたドアの方を見つめる。
「失礼します·····って、あれ?サラちゃんに竹岡さん·····?」
入ってきたのは、ツインテールが似合う赤ずきんの彼女。
体育館から走ってきたのか、軽く中腰になって、息を整えている。
大きな胸に手をあてて「はぁ·····」と言ってるその仕草だけで、クラスの大半の男子は恋に落ちるだろう。
俺は赤ずきんの彼女をボーッと見つめていると、廊下から冷たい風が入ってきて、俺の頬を撫でてきた。
その冷たい空気でハッとした俺は我に返った。
なんで俺の前に超絶美少女が3人もいるんだ?
こんな可愛い子達は、本来なら俺みたいな陰キャじゃなくて、スクールカースト最上に位置するサッカー部とか野球部と絡んでいるものじゃないのか·····?
「な、なあ·····お前たち3人何しに来たんだ·····?」
普通に考えれば、今は体育館で入学式の真っ最中。シンデレラの彼女は、俺を保健室まで運んだら、すぐに体育館に戻ればいいし、かぐや姫の彼女と赤ずきんの彼女はここに来る意味が分からない。
俺、ひょっとして彼女達に恨みを買われるようなことをしたか·····?
俺がモヤモヤしていると、先頭切って喋りだしたのはシンデレラの彼女だった。
「もしかして、2人も·····?」
かぐや姫の彼女と赤ずきんの彼女を見るシンデレラの彼女は、少し悲しそうな顔をしている。
「え、サラちゃんも·····?」
全く状況が飲み込めない俺をおいてけぼりにして、赤ずきんの彼女は、かなり驚いたような顔をして姫乃を見ている。
「えぇ!?ボクこんな経験初めてなんだけど!一度に色んなこと起こりすぎて頭パンクしそう·····」
かぐや姫の彼女も、姫乃が言った意味がわかったのか、ヘラヘラした笑顔から一変、引きつった笑顔をしている。
さすがに気になった俺は、3人にこの状況について尋ねてみた。
「おいおい、どういうことだよ·····俺全然把握できてないんだけど·····」
すると3人は、それぞれアイコンタクトをとり、気を取り直したのか一斉に喋り出す。
「ボクのおじいちゃんだよね?」
「狼くんなの·····?」
「王子様でしょっ!」
陰キャな俺のラブコメは前世から始まってたってマジですか? 飴宮まる @amemiyamaru
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