第15話 おじいちゃんの練習メニュー
ぼくそれから毎日、おじいちゃんに言われたことを一生懸命やった。
そうすると少しづつ打球が遠くまで飛ぶようになって来た。
おじいちゃんってすごい。
ぼく、野球がどんどん上手になっていく気がする。
ぼく、野球がどんどん好きになっていく気がする。
学校のプールが終わったら、自転車公園のグランドで二時間、ボーイズの練習がある。
それから家に帰って来て、夏休みの宿題やってから、おじいちゃんの練習メニューを一時間くらいやる。
おじいちゃんのメニューっていうのは、まず最初に選球眼を鍛える練習。
それからスイングスピードを鍛える素振り500回。
選球眼を鍛えるのはピッチングマシンのボールを100球、ミートする練習。
ピッチングマシンはおじいちゃんがランダム設定っていうのにしてくれた。
これだと70キロから100キロのスピードでいろいろ飛んできて、ボール球も来る。
ボール球をしっかりと見送れるようにボールをよく見て、ボールのスピードに騙されないように、タイミングをはかってミートする。
こうやって自分のミートポイントを身体で覚える。
素振りは、500グラムの軽いバットで力丸スイングを思いっきり500回。
頭の中では、ヒデシくんと対決。
インハイ、アウトロー、アウトハイ、インロー、ど真ん中。
五つのコースをしっかりと意識して、力をこめたスイングをする。
500グラムのバットだと、ヒデシくんみたいな速いスイングになって、すごく気持ちよかった。
おじいちゃんは始めの日だけ、ぼくが教わった通りにやれるか見てくれたけど、「あとは自分で考えながら好きにやればいい」って言って見に来なくなった。
ぼく、おじいちゃんの前では力丸選手の真似でスイングしたけど、おじいちゃんがいなくなると、タカさんスイングに変えた。
なんとなく、おじいちゃんの前ではタカさんのスイングしちゃいけない気がした。
タカさん、左打ちだし……
ぼく、おじいちゃんの言う事聞かずに右打ちに戻したし…
力丸選手のスイング、おじいちゃんも好きみたいだし…
そっちの方がおじいちゃんが喜ぶ気がした。
でも、スタンスを狭くして力を抜いて、体の回転で逆方向にボールを叩く感じ…
タカさんのスイングってかっこいい。
力丸選手の踏み込んで、前でボールを叩く感じも好きだけど…
だからどっちもやる事にした。
おじいちゃんが見ていない時に、こっそりタカさんスイングをやればいい。
ぼく、この間の練習試合で生まれて初めてホームランが打てた。
おじいちゃんも見てたから、力丸選手の真似スイングで……カッキーンって、レフトの向こうに驚くほど飛んだ。
ベースを一周してホームインした時、チームのみんながすごく喜んで迎えてくれた。
ヒデシくんに頭を何度もビシバシ叩かれたけど、すごく気持ちよかった。
8月になると、すぐにボーイズリーグ全国大会の予選が始まる。
絶対頑張って、全国大会に行きたい。
・・・最近
夕方、ぼくが素振りしてる時、外から誰かがじっと見てる気がする。
最初は気にしないように、してたんだけど、この頃毎日同じような時間になると、誰かがこっちを見てる。
ぼく、だんだんと気になって素振りに集中出来なくなってきた。
ぼく、車庫に隠れて確認した。
・・・あっ
自転車に乗ったまま誰か、垣根の隙間からこっち見てる。
三人いた。
・・・あれっ ?
・・・ビクトルだ
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