第13話 全国大会 ?

 

ぼく五年生になった。


うちの庭がすごい事になってる。



・・・おじいちゃんってすごい



ピッチングマシン買って、車庫の横に防球ネットを張って… もう一か月以上もかけて、ああしたり、こうしたり、あっちもこっちもネットを張って、家の庭にバッティングセンター作っちゃった。


車庫におじいちゃんの大きくて立派な車があったけど、いつの間にかそれが小さくてかわいい車に変わってた。


ママもおばあちゃんも呆れてたけど、おじいちゃん愉しそうだった。



ボーイズの練習って、トスバッティングを交代でやるだけだから、あんまりピッチャーが投げたボールを打つことがない。


だから、家にピッチングマシンがあるなんてすごく嬉しかった。

おじいちゃんにそう言ったら…「そうか、そりゃよかった」って大笑いした。

ぼくも一緒に大笑いした。



これで毎日100キロのボールが好きなだけ打てる。

家にピッチングマシンがあるなんてすごい。

ホントはリョーマくんとか誘って一緒に練習したかったけど……なんかぼくだけ “ エコヒーキ ” みたいで言えなかった。


夏に豊市市長杯って大会があった。

愛知県の強いチームが 8チーム出場してトーナメントで戦う。


ぼくレギュラーに選ばれた。


“ 六番、ライト下村、背番号14 ”


これぜーんぶ……


大学野球の時のタカさんとおんなじ。


・・・ぼくタカさんと一緒



一回戦


タカさんも見に来てくれた。


・・・タカさん…同じなの気づいてるかな ?


おじいちゃんも、おばあちゃんも見に来てくれた。



この大会、ビデシくんがすごかった。

ヒデシくんが投げると、相手は三振だらけ。

その上、ヒデシくんランニングホームランまで打った。


ぼくも活躍出来た。

一回戦は4打席、3打数2安打2打点1四球。

ヒットは 2本ともセンター前ヒット。

ぼくの打球っていつもセンターばかり。

あと、ライトの守備で右中間に飛んだ打球を飛び込んでキャッチした。


この時、タカさんがぼくに向かって、拳を突き出した。

恥ずかしかったけど、ぼくもタカさんに向かってマネした。

応援してくれる人たちが、みんなワァーって大騒ぎになって、すごく気持ちよかった。


二試合目の準決勝からは、タカさんいなくなっちゃけど、一回戦を見てもらえただけで、ぼく十分だった。

タカさん、警察の仕事が忙しいのに見に来てくれた。



豊ボーイズはヒデシくんの活躍で優勝した。

ぼく、三試合フル出場だった。

打撃成績は、12打数6安打5打点2四球。

センター前ヒットが 4本、内野安打が2本。

ぼく、ヒデシくんみたいにすごいバッティングは出来なかったけど、監督も、ヒデシくんも、ほかの六年生もすごく褒めてくれた。


ぜんぶ、おじいちゃんが作ってくれたバッティングセンターのおかげ。



「とし、あしたから毎日500回。夕ご飯の前に素振りしてみないか ?」


家でおじいちゃんが愉しそうに言った。


「・・・素振り ?」


「そうだ。素振りをたくさんすれば、今よりどんどんスイングスピードが速くなって、打球がどんどん速くなって、ホームランも打てるようになる。秋の全国大会でおじいちゃんにすごいの見せてくれ」


・・・全国大会 ?



「・・・うん」



最近のおじいちゃん、ノリノリですごく元気。



・・・ぼく素振り、頑張んなきゃ





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