第12話 アンダセーゾーキ ?

 


三日後 

ぼくそれからすぐに、愛知豊ボーイズに入った。


入った時、みんなの前に出て自己紹介とかあったら嫌だな…って心配は大丈夫だった。


野津監督が大声で「新しい仲間だ。下村稔成っていう…みんなよろしくな」って言って、そのままランニングが始まった。

みんな「ちわっ」「よろしく」とか言ってきたけど監督の「体操 !」の声で静かになった。

続いてストレッチ、素振り、ベース間キャッチボール、遠投……キャッチボールはリョーマが相手をしてくれた。


ぼく初めてだから、よくわかんなくてみんなの真似をして必死にやった。

だから緊張するヒマがなかった。


練習の後半は六年、五年が実戦的なノックを受けたり、ティーバッティングやロングティーとかやるのを「ナイスキャッチ」とか「ナイスバッティング」とか声を出しながら球拾いをした。

これもけっこう忙しくて大変だった。


二時間の練習があっという間に終わった。



みんなと野球をするのは、やっぱり楽しかった。

五年六年も上手な人ばかりで、みんな面白くて優しかった。


四年も時々打たせてもらえたし、実戦的な守備練習もやった。

硬球にもだいぶ慣れた。


打っても外野を守っても、ぼくけっこう監督に褒めてもらえた。

野津監督より、五年生や六年生が褒めてくれるのが嬉しかった。

特にヒデシくんが「トシやるじゃん」っていっつも声をかけてくれた。


立花秀志くんは五年生なのに、エースで3番バッター。

チームで一番大きくて、一番足が速い。

“ タカさん動画 ” の西崎選手みたい。

完全にチームの中心選手だった。

そんなヒデシくんに褒められると、すごく力が湧いてきた。

まるでタカさんに褒められた時と同じくらい嬉しかった。


三月になって東支部の対抗戦があった。

六年生の引退試合。

ぼくベンチ入りの15人に選ばれた。

背番号14。

ぼくの大好きな14番。


この大会で豊ボーイズが準優勝だった。

ぼく代打で三回試合に出させてもらえた。

3打数3安打3打点。

みんながぼくの事を「安打製造機」って言って驚いてた。

ライトの守備も二試合やった。

全部で四回ボールが飛んで来たけど、ミスせずにちゃんと捕れた。


試合を見に来ていたみんなが、すごく喜んでくれた。


おじいちゃん、おばあちゃん、ママ……あとサチカさんとユミちゃんも……警察のエリカさんも見に来てくれた。


ぼくまだ補欠だけど、もっと頑張ってレギュラーになりたい。


一人よりみんなでやる野球の方が、ダンゼン楽しかった。

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