第11話 シュアなバッティング

 

ボーイズの見学にはママが一緒だった。


いつもはすごく忙しそうにしているのに、いつもヒマそうなおじいちゃんじゃなくてママが連れてってくれた。


ママはグランドに着いたら、飛び降りるみたいに車から降りた。


「監督さんとお話してくるから、見学しててね」


・・・やっぱりママは忙しそう



グランドでたくさんの小学生が野球をやってた。


・・・わぁー


向こう側には、もっと大きな人たちがやってた。

たぶん中学生の部。

ボーイズリーグは、小学生の部と中学生の部がある。


こっち側は二十人以上の小学生が練習してた。

ほとんどが四年生以上。

でももっと小さい子も三人…四人いた。


・・・あっリョーマくんだ


同じクラス。

学校の時の顔とぜんぜん違った。

ユニフォーム…かっこいい。


・・・いいなぁ



グランドの横でピッチャーが二人並んで、ピッチング練習をしてた。


ビシッ


パンッ


・・・気持ちのいい音


・・・大きな人…ホントに小学生なの ?



すごく速いボールが、キャッチャーが構えたミットにまっすぐとコントロールされていた。


・・・コントロールいいなぁ



ぼくも昨日、硬球でおじいちゃんとキャッチボールした。

最初は、すごく怖かったけど20球くらい受けてみたら慣れた。

硬球って上手に投げるとすごく速い球が投げられる。

でもコントロールよく投げるのはとても難しい。


ぼくは近くに行って、ピッチャーの練習を見た。


ビシッ


パンッ


・・・すごいなぁ


バッティングセンターの85キロよりも速い。


・・・速いなぁ


たぶん90キロくらい。


ビュッ


パンッ


・・・あれっ ?


バッティングセンターの100キロってもっと速かった気がする。



「よお !」


・・・えっ ?


「お前、何年生 ?」


突然、大きなピッチャーがぼくに話し掛けてきた。



「・・・こ…こんちは」


・・・びっくりした


「ははっ こんちは。何年 ?」


「・・・四年」


「見学 ?」


・・・わっ…こっちに近づいて来た


「・・・うん」


「オレ、五年。タチバナヒデシ」


「・・・シモムラ…トシナリ」


「中央通りのバッティングセンター行ってるだろ」


「・・・うん……ときどき」


「お前、シュアなバッティングするよな」


「・・・」


・・・シュアって何 ?


「一緒にやろうぜ」


「・・・うん…」


ぼく、少しアタマを下げてグランドから逃げた。


・・・びっくりした


急に話し掛けてきた。


ドキドキした。


・・・でも


タチバナヒデシくん。


怖そうだけど、ちょっと感じのいい人だった。

あんなに大きいのに五年なんて…すごい。



・・・シュアなバッティングって何だろう ?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る