第7話 サチカさんのプレゼント

 

「トシくん、スマホ貸してくれる ?」


9歳の誕生日に、サチカさんがお祝いに来てくれた。

もちろん、ユミちゃんも一緒。

ユミちゃんって信じられないくらい、どんどん可愛くなってく。

ぼくはサチカさんが、ぼくのスマホをいじっている間、ずっとユミちゃんを見てた。


「はい。ありがとう。今、動画を入れたの。私からのお誕生日プレゼントよ。でも、このことタカさんには秘密。いい ?」


「・・・ うん 」


サチカさんは、そう言ってスマホを返してくれた。


この時、サチカさんがスマホに入れてくれた動画は、僕の一生の宝物になった。




・・・それって…



タカさんが野球をやってる動画だった。


・・・タカさんって野球の選手だったの ? それもピッチャー


あとで知ったんだけど、タカさんの大学生の時の動画だった。


その動画はタカさんばかりが映っていた。

サチカさんが特別に作ったやつ。

2時間くらいの動画。


タカさんの投げるボール、すごく速かった。

スライダーって言うの ? それが信じられないくらいギュイーンって変化してた。


・・・すごい


お客さんがたくさんの球場で、タカさんが三振をとって、みんなから胴上げされてる。


・・・タカさんってすごい


「あれ?」


・・・今の



「あれ ?」



・・・どうして ?



「あれ ? あれ ?」



・・・これってしろくまの大沢選手 ?


・・・水野選手に… 三枝投手 ?


始めのうちは分からなかったけど、何度も見てるうちに、有名なプロ野球選手がたくさん映ってることが分かってきた。


・・・アスレチックスの力丸…あっ辻合だ…えっ大石投手 ?



・・・えっえっえっ、なんで ? なんで ?


西崎投手 ?……本物 ?


西崎透也がタカさんと一緒に映ってる。



ぼくはこの動画を何百回も見た。

見れば見るほどすごかった。


だってタカさんって、ドリームスターズの和倉と戦ってたし、しろくまの深町監督も映っていたし、マトリックスの葛城や北見、加治川、太刀川、紀尾井たちとも試合をしてた。


タカさんって、自分では何にも言わないけど、すごい野球選手だった。


サチカさん、すごいプレゼントをくれたみたい。




四年生になったら、おじいちゃんが毎日家にいるようになった。

お仕事が終わったって言ってた。

これからは、ずっとおうちにいるみたい。


「よし、これからはおじいちゃんがバッティングを教えてやるからな」


このころ、タカさんが忙しくてあんまりバッティングセンターに行けなくなってたから、ぼく、とても嬉しかった。


次の土曜日、朝からおじいちゃんの特訓が始まった。


「手が逆 !」


ぼくがバットを持って構えたら、おじいちゃんがそう言った。


「えっ ?」


「トシは左バッターになるんだ」


「えっ ?」


「バッターは左の方が有利だから、トシくらい小さいうちに左でしっかり振り込んでおけば、いい選手に成れる」


・・・えっ ?


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