後悔したくない

不意にその景色がデジャヴのように重なり合って、俺はピクッと指先を動かした。


「颯人、起きろっ!」

「先輩っ!早く!!」


ーーーだから、俺はまだ、諦めてないんだって!


状況は、相変わらずわからない。二重にも三重にも夢を見せられて、片方は勝手に自分自身ででっちあげた成功体験であって、もうひとつは紛れもない亜香里との思い出で。


上田のシュートしたボールは、リングに当たりながらこぼれ落ちようとしていた。


それを俺は誰よりも早く飛んでキャッチする。


「それを決めたら勝ちっす!先輩!!」


上田しか元気が無いのだろうか、と横に目をやると、隣にいた神崎は小刻みに震えていた。その後ろの人物に目をやり、さらに驚いた。


なんとまさかの、神崎が須藤を体でブロックしていた。


「ぐ、ぬ、ど、けやああああっ!!!」


須藤は叫んでいるがびくともしない。神崎は渾身の力で、俺と須藤の間の壁になってくれていた。須藤はセンターポジションでは無いが、そんなの関係なく、動けなくして力勝負だとしても分が悪すぎる。


だが、それでも神崎は目で行けと俺に言っている。


「行かせるかぁ!!!」


壁が動いたらオフェンスのファールになってしまう。だから、神崎は須藤に対して動きをこれ以上妨害することはできない。


今、打つしか、ない!


ーーー俺が先に跳んだ。


遅れて須藤が俺に覆いかぶさるように跳んできた。ボールに手を伸ばされる。


チリッ。


リリースしたボールは須藤の指先に掠ったらしい。


入れえええええ!!!!!!!


ビーーーーーーーーーー!


ガツン、コロッ・・・・・・ファサッ。


「ブザービータだ!!!!!」


へへっ。


誰かが叫んだ合図で、


どっと俺はその場に倒れて意識を失った。

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俺の進路希望調査票に何故か幼馴染の名前がある とろにか @adgjmp2010

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