ニアミス


 ――ある時、アタカマ砂漠の標高約五千メートルの高地に建設された巨大な電波望遠鏡の群が宇宙からの電波を受信した。


 それは極めて人工的な規則的な波形を描いていて、銀河の果ての小惑星から送られてきたものだった。


 即時専門家の解析が開始され、あらゆるデータが照合され、地球外生命、それも知的生命の存在が予測された。

 

 調査を進める程にその電波は人工的で故意に作りだされた可能性が大きくなった。

 

 まさにロマンであり、研究者たちは体に震えが来るほどで、オズマ計画でさえ宇宙人からのラブレターを受け取れなかったのだから、その衝撃は並み大抵の物でなかった。


 そして論より証拠と言う人類の古典的な考えに基づき、銀河の果てまで有人宇宙船が飛ばされた。なんと何十年もかかる船旅に人類はついに旅立ったのだ。


 やがて宇宙飛行士達はその小惑星に予定通りに降り立ったのだが、彼らを待ち受けていたものは大きな落胆であり、人生の全てを懸けるには物足りないものだった。


 その惑星に聳える標高一万メーターを超える山々の岩石には、自然に強い電波を放出する特性があって、それは規則正しい波形を描いてはいたが人工の物ではなかった。

 

 彼らは仕方なくその岩石の一部を採取すると、寿命の尽きないうちに大急ぎで地球に引き返してしまった。


 それから一分と経たないうちに彼らはそこに降り立った。緑色の肌を持つ銀色の宇宙艇の連中だ。彼らは二本足歩行をする生物で人間に驚くほどよく似ていた。

 

 彼らもまたその岩石を見上げ深い溜め息をついた。そして実に残念そうな表情を浮かべると、その岩石の一部を砕いて集めると、それを持ってそそくさと無限の宇宙に飛び去ってしまった……。





                END


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

宇宙珍事件 スぺッシャル! 松長良樹 @yoshiki2020

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ