調査

 ――あるとき遥か宇宙から宇宙船が地球に偵察にやって来た。

 

 目的は何かというと、地球の生物が宇宙連邦の脅威になるかという調査の為だ。もちろん現時点の話ではなく、将来での話である。

 

 もし地球の知的生命が将来宇宙の秩序を乱したり、戦争を引き起こし兼ねないと判断したなら、即刻その芽を摘んでしまう。それが彼らの偵察の目的だった。

 

 そう、過去には凶悪な種族が宇宙に存在し、それを排除するために彼らは多くの犠牲を強いられた経験があった。それ以来、悪い芽は早めに摘んでしまえというのが彼らの常套的じょうとうてきな考えになっていた。 

 

 宇宙連邦は全宇宙の知的な生命の集団である。そこに所属する知的生命体は、みな平和的で秩序があり、宇宙の平和と協調を実現していた。

 

 さっそく調査員の手によって地球の知的生命がじっくりと調べられた。彼らはそのベテラン達であり、慣れた手順で生命の身体や頭脳、遺伝子等が徹底的に調べらあげられた。

 

 そしてようやく結果が出て調査員が連邦議会にこう報告した。


「ご安心ください。この惑星の知的生命は実に平和的でやさしい心を持っております。やむなく戦うのは敵に家族や仲間が攻撃された時のみで、自らの欲望によって戦う事など皆無でして、本当に賢く、おとなしく真面目ですばらしい生命であります。また容姿も非常にチャーミングで愛すべき種族であります。このままにしておきましょう」


 連邦議会から返事が返ってきた。


「それは良かった。本当に良かった。それを聞いて安心しました。では引き上げましょう……。 ところでその生命は地球ではなんと呼ばれているのですか?」


「はい。確か……  イ・ル・カです」

 

 そう報告する調査員の尾びれが嬉しそうに上下に動いた。



            

               END

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