第4話 暗い廊下の向こう側

第4話 暗い廊下の向こう側


 そこは古い古い、老朽化の進んだ病院。

歩けば廊下の軋む音が聞こえ、風が吹けばカタカタと窓が揺れる。

そのため昼間でも不気味な雰囲気が漂っている。


 ある夜中のことだ。

暗闇の中に伸びる影は飲み込まれそうなぐらいの漆黒。

薄ぼんやりした常夜灯に照らされて、ゆらりと揺れていた。

まるでひとりでに動き出しそうで背筋が凍る。

ゆらりゆらり伸びた影がどんどん大きくなって、闇に飲み込まれていく。


 ギシリギシリと歩くたびに響く、私は自分の足音にすら恐怖を抱きながら夜の廊下を歩いていた。

自身の心臓の音が響く。

薄暗い廊下の先は懐中電灯で照らしても見えない。

見えないからこそ不安を掻き立てる。

その向こうに何かいるんじゃないか。


 廊下の曲がり角の向こうに何かを引きずる音とひたひたと足音が響く。

自分の足音が響いてるだけ。

そう思って立ち止まる。

しかし、足音は止まない。

裸足で歩くような足音だ。

私よりゆっくりとした足取りで、スルスルと何が軽い物を引きずっているような音。

ゆっくりとゆっくりと近づいてくる。

廊下をこちらに向かって歩いて来るようだ。

角から影が見える。

すぐそばまで来ている。


 恐怖に耐えながら、一気に懐中電灯で照らす。

見たくないけど、確かめなきゃいけない。

逃げられない。

そこにいたのは――。


 老人だ。

ふらふらと何が布のような物を持っている。

思わず叫びだそうとした。

だけど、恐怖のあまり声がでない。

金縛りのように体が動かない。


 彼はひたひたと私に近づいてくる。

私に向かってゆっくりと。

その手に持っている物をゆっくりと差し出す。

それは――











彼自身が着ているパジャマと同じ柄の、ズボンだった。

思わず視線を下に向けると、彼のあらわになった下半身が目に入った。

 引きずっていたのは自身のパジャマのズボン。

ちなみに履いていたはずの下着はベットの上に投げ捨てられていた……。

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本当にあった病院の怖い話 結羽 @yu_uy0315

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