『古墳めぐり』 後編


 主さんはおっしゃいました。


 『あなたは、わが一族の流れを汲むかたなのです。しかし、あなたは、子がないから、あなたさまの流れは、まもなく、終わるでしょう。』


 少し、間をあけて。


 『しかしながら、あなたさまには、いまいちど、さらに奮励努力していただきたい。

 すなわち、まだ、あの世に行くのは早かろうとぞんじますれば。』


 主は、沸いていたお湯で、お茶をいれてくださいました。


 『これは、薬茶でござります。ぜひ、お飲みください。』


 『はあ。それはまた、なぜ?』


 『あなたさまには、まさに、危急存亡の時が、訪れようとしております。あまり、栄えあることができなかった先祖としては、申し訳もないが、多少、お役に立てれば、と。』


 主さんは、それ以上は、語りません。


 どこからか、荒れた風が吹きわたりました。


 確かに、お茶は、頂きました。


 やや、甘い香りなのですが、これがまた、苦い苦い。


 『ぶっ😃💨』


 思わず、失礼なことですが、少し、吹いてしまったのです。


 『は、ははははははははははははは。良薬口に苦しですな。あははははははははは。』



 『ほほほほほほほほほほほほほほ。』


 さきほどの女性も、袖でお口を覆いなが、笑いました。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 おふろで、倒れているぼくを、別居している奥さんが、たまたま発見いたしました。


 幸い、いのちは、助かりました。


 お医者さまは、こう、おっしゃいました。


 『いやあ。良かったです。しかし、医師としては、こういう言い方は、良くないことは、わかりますが、この症例で、後遺症もあまりなく、回復したのは、奇跡にちかいですなあ。びっくしですよ。はははははは。あなた、なにか、お薬を飲みましたか。まさかね。』

 

 

 それから暫くして、ぼくは、行こうと思っていた古墳に、やっと、参りました。


 穴こそ小さいけれど、それは、あの古墳に違いなかったのであります。


 中には入れませんでしたが、手を合わせて、お礼をいたしました。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

              おわり


          12、 11 /2020

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『小さなお話し』 その260・・・・・『古墳めぐり』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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