06 over extended. 現実的なアナウンス
「三佐」
「おう。来たぞ」
「いいご身分なこって。週休4日とはねえ」
「点数は稼いでるから、上も文句は言えねえのさ。俺がいないと、諸々解決できないしな」
「お前のいない間、また幻想案件がいくつかあったよ」
「あっそ」
「興味なさげだな」
「どうせあれだろ。数日いなくなってすぐ帰ってきてんだろ」
「まあ、そうだけど。なんか、前とは違うんだよな。失踪してから不在通報119番で見つかるまでが、最大で4日しかない。数年とか、そういう規模じゃなくなってるんだ。あの女の子を最後にさ」
「まあ、いいんじゃないの?」
「おまえが休んでいる4日間と、失踪者がいなくなって戻ってくるまでの期間も。一致するぞ」
「お。なんだ。俺を誘拐で立件するのか?」
「できるわけないだろ。第一、そもそも証拠がない」
「完全犯罪だな」
「案件だから。事件ですらねえよ」
「あ」
「どした?」
「弁当忘れた」
「愛妻弁当か」
アナウンス。
『三佐さん。奥さまが弁当をお持ちでお越しです。ロビーまでどうぞ』
「だってさ」
「おお、ありがたい。ちょっと愛妻に逢ってくる」
「愛の119番だな。119番通報緊急アナウンスの無駄遣いだ」
「そういうなよ。ちゃんと街が平和だってことさ」
「てめえが4日間休んでる間の幻想案件。全部書類にしてまとめとけよ。ちゃんと仕事して点数稼げ」
「わかってるよ。身元確認は任せておけ」
「やっぱりおまえが誘拐してるな?」
「違えよ。元いたところに帰してやってるんだよ」
住人不在の家から、119番通報が相次いでいる。
そのどれもが緊急性を持たないものばかりで。
失踪者がその通報と共に帰ってくる他は、何も事件などは起こっていなかった。
叶わなかった願い、幻想的な旋律 春嵐 @aiot3110
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