男の一人語り
@koichan
第1話
「ちょっと話を聞いてくれやしないか。退屈なんだ。」
男は言う。
「私でよければ。ちょうど私も退屈していたところだ。」
男は人好い笑みを浮かべながら、肩をすくめて言った。
「では、遠慮なく。なに、一晩の退屈しのぎくらいにはなるさ。」
「これは俺がまだ十四か十五だった頃の話だ。地元を離れることになって、友達と皆でタイムカプセルを埋めようという話になったんだ。古風だし子供っぽいかもしれないが田舎の子供で金もなかった俺たちには、そうして再会を願うしかなかった。各々が自分の大切なものを用意することになった。もちろん俺もとびきりのモンを用意したさ。親がプレゼントしてくれたロケットだ。ソイツは俺にとっての宝物で、ずっと肌身離さず身に着けていた。いざ埋めようとした日の朝だ。俺はロケットがなくなっていることに気づいたんだ。家じゅう探し回ったがどこにもなかった。皆にも手伝ってもらったが結局見つからなかった。結局その日はタイムカプセルを埋めることなくお開きになっちまった。その次の日になると、今度はキャシー・・・あぁ話してなかったな。俺が一緒にタイムカプセルを埋める約束をしたのは俺の幼馴染のトム、キャシー、テインの三人だ。つまり俺を含めて四人だな。それでキャシーの宝物がなくなったっていうんだ。キャシーは俺たち四人の思い出を集めたアルバムを作っていたらしいがそれも俺のロケットみたくなくなっちまったらしい。さすがに二人も続くと俺たちも少し怪しく思ったさ。でも見つからないものは見つからない。結局その日もそのままお開きさ。薄々察しているかもしれないが、ここから、トムとテインの宝物も続けざまになくなった。もうなくしたもの探しというよりかは犯人捜しだったな。あちこち聞きこんでみたり、お互いのアリバイを言い合ったりしてさ。結局犯人は見つからないままおれはその町を離れることになっちまった。」
「それでは犯人はわからず終いなのか?」
それまでずっと聞きに徹していた男が問いかけた。
「残念だが、そういうこった。・・・いったい誰の仕業だったんだろうな。」
男は看守にそういった。
男の一人語り @koichan
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