~BEFORE 王位継承(クリア)~
(神様、神様……!)
(貴方様は、どこへ向かってしまったのですか!?)
(貴方様は、どうして急に……アタシを置いておいて、消えてしまったのですか!)
(アタシは、貴方様のためであれば、例えこの身を捧げても、アタシは構いません!)
(ですから、ですから……!)
「お願いします、お願いいたします!」
(自分を、死なせないでください……)
「貴方様が居なくなってしまったら、アタシは……!それに、スカイランドの、他の子たちは……!」
「貴方様だけが、貴方様だけがアタシたちの希望!」
「だから、お願いいたします……!」
(作戦の、計画の、中止を……!)
(アリア、そしてこの前のエリハイア……神様はすでに両国の怒りを買ってしまった。)
(次にアイリスティア、そして他にも……!)
(お願い、本当に、お願いいたします!)
(全世界の国を、どこも敵に回さないでください……!)
(世界の方々を、怒らせないでください……!)
(これ以上、敵を作らないでください……)
(貴方様は亡くなってはならないお方。)
(貴方様が居なくなってしまいましたら、アタシたちは……!)
「はぁ……はぁ……!」
「おや、見つかってしまったか。」
「か、かみさ、神様……!」
「おっと?それ以上動くな……俺の主に近づくな。」
「よせ、デュランダル。彼女は敵ではない。」
「はっ!」
「お前、デュラン……!貴方もやっと、神様の素晴らしさに気づいたのですね!」
「……」
「あぁ、なんて素晴らしいこと!これで、神様の守備は……!」
「お前は、知ったのよな。」
「何を、ですか?神様……」
「私は、死のために計画を立てたってことを。」
「はい、知って、しまいました……神様は、自分の死を引き換えに、世界に平和を……」
「そのために、私は敵を作らないといけないんだ。」
「ま、待ってください!貴方様が亡くなってしまったら、アタシたちは……!」
「あぁ、それは知っている。大丈夫だ、そこについては心配しなくていい。」
「なっ!心配しなくていいって?どういう、ことですか?」
「私が死ぬとともに、世界の記憶から、私という存在を消し去る術式を書いて、発動させたんでね。」
「……!」
「つまり、世界の人々は、何かをずっと憎み続きますが、それが何なのかは……誰もわかることはない。そして……君たちにとって、おそらく大事なものである私も同じだ。」
「そ、そんなの、いやです!」
「拒絶する資格が、君たちにはないの。ごめんね、クリア。」
「そ、そんな!」
「私は神だ。この世界を作った神だ。そして……この世界に憎しみを作ってしまった神だ。自分の責任くらい、果たさせてくれ。」
「そ、そんなの……!憎しみという概念を、感情を破壊すればよいのではないですか!」
「……残念ながら、憎しみという感情は君たち人族や、魔族、そして霊族、獣人、半獣人……どの種族にとって、とてつもない大事な感情なんだ。」
「神、様……」
「だから、壊してはいけないんだ。すまないね。」
「いえ、神様が仰ることは理解できました。けど……」
「やはり、納得は無理なんだな。」
「そう、です……だから、お願いします。」
「何を?」
「これからは、どうか……アタシを置いて、またどこかへ行かないでください……せめて、生きている間に、アタシを傍に……」
「……あぁ、わかったよ。」
「――!あ、ありがとう、ありがとうございます、神様!」
(終わり)
姫様!魔王様!~BEFORE STORY~ 煌黒星 @koukokusei
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