6__羨斗
あかりひとつないほぼ真っ暗で何も見えない部屋。その中で俺は虚空に問いかけていた。
学校から家までの帰路の間ずっと考えていた事を。でも考えれば考えるほど分からなくなるその疑問を。
説得できる自信もないのになんで止めようとしたんだろうか?
物事を解決できない正義や感情主義よりかは物事を解決出来る悪の方が絶対的に正しいに決まっている。
それに彼女が俺を止めるメリットもあるはずない。
なのに、何故。
いくら問いかけても同じ答えしか出ない疑問に自分でも眉間にシワがよっていくのが分かる。
こんなちっぽけな悩みごときに振り回されているのはとてつもなく癪に障るが解決策のない俺はとりあえずスマホに逃げることにした。あ、そう言えば雨宮のLINE貰ってたんだっけ。解決策を見つけた俺ははやる気持ちを抑えつつLINEの友だち追加からIDを入力して雨宮のトーク画面が表示させる。よろしく、と簡素な挨拶を入力する。モヤモヤを解決したくて返事も待たずに
『あの時、なんで俺を止めようとしたんだ?』
と打った。これであとは待つだけだ、と呪縛から解放された俺はスマホYouTubeのアイコンをタップした。でも次に俺の目に飛び込んできたのはYouTubeのホームではなく翔からの電話だった。
最悪のタイミングで最悪の相手から連絡が来たことについ腹が立ち舌打ちをしてしまった。
どうせ逃げても無駄なので俺はめんどくさいという気持ちを飲み込んで通話ボタンを押す。
「今日。能力使ったよな?」
確認を求めるような台詞だがその中からはそんな気持ち一切感じられず威圧感ばかりが顔を覗かせている。画面の向こうで俺を睨みつけているのが嫌でもわかる。返事するのが億劫で黙ってスマホについているストラップでチャラチャラと遊んでいると数十秒の沈黙の後、今度はため息とともに説教が聞こえてきた。
「こんな言い方しちゃいけないんだと思うけど。僕は羨斗を心配しているんだよ?そんな力無闇に使ったら絶対自分が損するっ」
「あのさ、心配するってのは相手の気持ちになるって事と一緒なのか?……俺はそうは思わないな。」
つい言い方が乱暴になってしまった事も気にせず通話を切る。
アイツが俺に対して思ったのは『心配』じゃなくて『哀れみ』だ。
努力がちゃんと報われ、認められるアイツとこんな俺とじゃ住む世界が違う。まぁ、今更そんな現実突きつけられたとて涙どころか何の感情を湧いてこない。
だって、俺は好き勝手生きてやるって決めたから。
異質的世界 蒼乱 @mntmt
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異質的世界の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます