モテる奴はやっぱり顔か。

てるた

第1話合コン

《カンパーイ》

 その言葉と同時に男3人女3人の持ち上げられていたビールが相手を向かうように、グラスがぶつかり今日の戦いがはじまろうとしていた。

『席替えタイム』

 定番中の定番席替えが突如、進行役の男性から発せられた。

「モアイ」お前はそこの席な。

 俺は大学生の仲間から 『モアイ』 と言うあだ名をつけられた。

 今まで20年間そんなあだ名で呼ばれたことはなかったが、ゼミで一緒の1人の男がお前は顔が角張っていてあごが長いからと言われ、そこから俺は 『モアイ』 と言われ続けている。

 まったくお世辞にもいいあだ名とは思えない。


 指名された席に向かうと横には今日の合コンで一番可愛い星野愛子ほしのあいこちゃんがいるではないか。

 俺は彼女の横に座ると固まった。

 まるでオハフ島にいる本当のモアイ像の様に体が動かなかった。

 女性と話すのは慣れていないのだ、むしろ嫌いな部類に入る。

 男性とは普通に喋れるんだが、女性だとつい。

「た…たのしんでる?」

「……」

 無視かよ。

 星野は俺の所を何も見ずにただ黙々と真っ直ぐにお酒を飲んでいる。

 このヤロー少しは興味持てよ。

「なんかあなた某有名なプロレスラーに似てますね」

 おぃーーーーーー。

 完全にあごが長い見た目だからだろ。

「闘魂注入してもいいかな」

「……」

 おぃーーーーーー。

 また無視かよ。

 俺のボケスルーしたよこの子。

 俺達は次の席替えがあるまで一言も喋らずに、ただ自分の飲み物を飲んでいた。


 俺が着いた次の席は星野さんが清楚系ならギャル系の近藤美香こんどうみかだ。

 席に着いた瞬間分かるこいつとは気が合わん。

「私あんたタイプじゃない」

 うるせー。

 俺も別にタイプじゃないわ。

 席替えで仕方なくここにいるだっけだっての。

「いい男いねー」

 近藤は独り言の様に呟いた。

 俺も同じだよ。

 こいつ失礼な奴だわ。

「き…今日いい天気だよね?」

 俺は勇気を出してギャルと言う魔王に攻撃した。

「はぁ……」

 魔王はあきれ顔をして俺の所をウジ虫でも見る様な目つきで見た。

 俺は一瞬で戦意喪失し、何ごともなく次の席替えを迎えた。


 最後の席の子は見た目は地味系で一番男の人に慣れてなさそうな雰囲気だ。

 付き合うとしたら俺はこういう人と一緒になった方がいいのだろう。

「き…今日いい人いました?」

 相変わらず気持ち悪い感じに挙動不審になってしまう。

「こういう場所初めてなので中々男性の方と上手くおしゃべり出来ないんですよ」

 これこれこういう人を求めていたんだよ。

 この清純の感じが好きなのよ。

「僕もです。ただでさえ女性と話す事に慣れていませんので」

「同じ人がいて良かったです」

『ハハハ』

 お互いが存在している空気が優しい雰囲気に変わった。

 その後趣味の話しなどをして盛り上がり解散となった。

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