第23話、女体化した英雄の受難……最終回でタイトル回収ってかっこいいと思ってたけど無理矢理感だすと途端に格好悪くなる。

前書きーーーーーーーーーーーーー

はいはい最終回。続きは人気出る、もしくは書きた過ぎて禁断症状がでた時に書きます。


続きを書く場合、クリスティアが冒険者Aにイチャイチャトロトロにされる話になるよ。

本文ーーーーーーーーーーー

「――――猿ども、セxクスは終わったか?」


 弩級の悪意を携えて姿を現したのはコーネリア。この国の王女にしてこの国一の人格破綻者である。


「いやはや驚いたぞ小娘。いや、英雄殿とお呼びした方がいいかな? んー?」

「……」


 クリスティアは黙しながら、状況の把握に脳を動かす。

【敵の目的】クリスティアを利用する。

【己の目的】死の回避

【コーネリア】フル装備、無傷

【クリスティア】武器はあるが怪我具合から使用不可、満身創痍

 クリスティアはスッと目を閉じた。


「救世の英雄クリス殿。お前を王家に仇成す反逆者として捕縛する」

「待ってください殿下、何の証拠があってそんな」

「――私の気分だ、異論があるなら掛かってこい。二秒で殺す」


 コーネリアはコイン程度の大きさの魔道具を手に取る。


「ルバート……アレには勝てないよ。こちらにはその戦力がない」

「だが」


 厳然たる事実。ゆえにルバートは言葉を詰まらせ沈黙する。

 絶体絶命、全滅必死。だが、クリスティアは笑っていた。この状況で笑っていた。戦力がない、にも拘わらずだ。何故か? 答えは単純だ。


「――――ま、戦力がないなら、呼び出せばいいだけの話だがな」

「は……?」「……! ッ!」


 コーネリアは何かを察知したのかクリスティアへ迫る。速い、あと一秒もしない内に到達し何らかのアクションを始めるだろう。

 ――――だが、それでも遅すぎた。


〝エル ノ 十八番 ニ 接続アクセス


 何故ならこの能力は時間とかそういった低次元の存在に囚われるものではないのだ。詠唱をくべる際、何者にも邪魔されぬ絶対の空間が構築される。


〝衣纏いし処女の血肉〟

 〝嗚呼、なんと美味であろうか〟

    〝ゆえ汝の乳房 私に寄越せ〟


 それは邪神の理。月の女神を模した悪逆の詩。オリジナルの本質を徹底して侮辱するソレは禍々しくも美しかった。


「〝魔装顕現〟」


 条件は整った。月のルーン導き手に相応しい精神を得た彼女の親和性は以前ソレとは比べ物にならない。

 さあ、畏敬しろ。これこそは神域の怪物。英雄クリストフの所有する最上にして最凶の兵器である。


「〝――――機神獣姫アルテミス〟」


 冒涜、厭悪、嫌悪、憎悪、憤慨、怨恨――想像しうる全ての憎しみがコーネリアから溢れ出す。目の前の存在はそれほどまでに次元が違うのだ。彼女をしてそれを知っているのだ。


 クリスティアの、英雄の本質は徹底した自己放棄だ。その属性が共鳴し現れたのは装備ではなく完全に自立した一つの兵器だった。鋼鉄の機神・・・・・。本当にそうとしか表現できない甲冑が召喚されたのだ。


 右手には槍を、左手にはバリスタの機能が付いた大盾を。

 ロボット、と表現するには表面が滑らかで凹凸がなく。

 甲冑と呼ぶには巨大で、神々し過ぎた。


「っ!」


 コーネリアは機神獣姫アルテミスを目にした途端、その場で止まり即座に背後で跳躍した。


「はい、それで正解です。流石は姫様、これがどんなものが分かっておられる」

「……ペッ、糞が、面倒なものを」


 コーネリアが先ほどまでいた場所は、地面が腐っていた。もしコーネリアが進んでいれば、諸共腐肉にされていただろ。


 ――――過回復による破壊。豊穣の女神とは思えぬ邪悪さを撒き散らしつつも本質だけは違えていない。ゆえに忌々しく神への冒涜とすら思える有様だ。


「交渉は対等な位置にいる者同士でのみ行われる……そうでしょう?」


 コーネリアは知っている。目の前の怪物の威力を、目の前の怪物は国一つ程度は滅ぼせる・・・・・・・・・・ということを。

 クリスティアは彼女が、その程度知っているということを識っていた。


「何が望みだ」

「私を見逃してほしい、それだけです」


 クリスティアは自分の要求を簡潔に告げる。


「糞が……はぁ……おいカス、交渉、と言ったな」

「はい、クリスです」


 コーネリアは一秒ほど思考し、問いかける。


「カス、次の条件を達成すれば飲んでやる。

 現在王国内で起きてる内戦の首謀者と周辺人物の殺害。これが出来たら飲んでやる」


 本当に理不尽過ぎる態度。今、クリスティアの気分を損なおうものなら殺されるのにも関わらず、だ。

 一体どこからその自信が来るのか、彼女の心臓には自信の源泉湯でも付いているのだろう。


「分かりました――――機神獣姫アルテミス行って」

「キュァ――――!!」


 クリスティアの呼び声に応えるように機神獣姫アルテミスは天空を駆ける――――目の前にコーネリアがいるにも拘わらず、だ。


「は……?」


 コーネリアは思わず声を漏らした。それだけクリスティアの行動が予想外だったのだ。

 当然だ、コーネリアは屑だが馬鹿ではない。ゆえ己の邪悪さを理解している――――だからこそ理解できなかったのだ。


「お前……馬鹿か? 私が約束を破る可能性、この場でお前を殺す可能性、考え得るだけでも十数個はあったはずだ。それが分からんお前はではないだろう」

「――いいや、貴女はしない」


 クリスティアは否定した。ハッキリと断言する形でだ。

 それは一見、相手を肯定する言葉のように聞こえる。だが本質は全く別だ。彼女が伝えようとしていることは肯定ではなく単純な事実。誤魔化しようがない事実なのだ。


「貴女は屑でも馬鹿じゃない。確かに貴女は気分で人を殺したりする最悪の人だ――――だが、言ってしまえばそれだけだ」


 二人の間に風が抜ける。タピオカミルクティーは空気だった。

 コーネリアの本質は一文で表現するならば【性格が悪辣】である。しかし同時に彼女はそれ以外の欠点が存在しないのだ。


「貴女は私の知る限り、間違いなく一番頭が良い。齢10にして貿易に手を出し王国で栄えさせた神童。その貴女が契約を破る・・・・・というのがどういう意味か知らないはずがない」

「…………」


 所詮、口約束。証拠も証明も出来ない音の羅列――――だがコーネリアはそれの本質を知っている。識っているのだ。


 クリスティアとてコーネリアが好きなわけじゃない。本音を言えば大嫌いであり顔面に拳を叩き込みたいぐらいに怒りを覚えている。


 だが、クリスティアは主観と客観を同一視などはしない。事実は事実として認識している――――誠実に向き合う。言ってしまえばそれだけなのだ。


「…………」


 コーネリアは沈黙する。クリスティアの言葉は、コーネリアの人生で初めてもらったものだったゆえだ。


 邪悪、悪辣、悪鬼、化け物、気狂い――――思い付く限りの悪意ある陰口を叩かれる人生過ごした少女コーネリア。

 そんな彼女はクリスティアの言葉を聞いて、


「……気持ち悪い」


 そう呟いた。


「気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いッ!! 気持ち悪いんだよこのド畜生がッ!! なんだお前は気持ち悪いぞこの異常者が! 可笑しいぞ狂っているぞ便所の糞以下の暗黒物質が近寄るなッ!!」


 最大限の殺意を込めた罵倒。だが、コーネリアは拳を振り上げようとはしなかった。

 怒りに肩を震わせ、最大の殺意と罵倒を浴びせるだけだ。


「ああ、ぁああッ糞がッ!!!!! 糞が糞が糞が糞が!!!!!」


 意味もなく自己紹介をするコーネリア。その声は当たり前に流される。

 コーネリアは身を翻し、唾を地へ吐く。


「命拾いしたな劣等――――二度と私に近寄るな」


 底の冷えるような殺意の波をクリスティアへ叩き付ける。

 そして彼女は、王族に伝わる秘技、転移を行使し姿を消した。


「カスから劣等にランクアップ、でいいのかな……?」


 人と向き合う、その当たり前の誠実さを見せた少女の声が静かに響いた。


◇◇◇

 ――――一週間後。ナニータの街、デシュタール家の別館。


「(うん、大丈夫そうだ)」


 クリスティアは鏡の前で一回点ほどして自分の身だしなみを確認する。

 左手の薬指に簡装機を付けて、旅の準備が完成ことを確認する。


 クリスティアは扉に手をかけて旅を再開する――――刹那に。


「(あ、忘れていました)」


 ふと、足を止める。扉から手を離して振り返り旅の仲間・・・・を呼ぶ。


「マリ――」「はい、今行きますっ」


 食い気味にマリンから返される返事に苦笑する。

 クリスティアはニ週間ほど前、ルバートと殺し合いコミュニケーションをして重傷を負った。その後、応急処置をして馬車の旅を数日。

 ナニータの街にて治療を行い一週間、旅の準備で更に数日と滞在していたのだ。


「今日から本格的に社会見学・・・・が始まります、準備は大丈夫ですか?」

「はい、多分準備は終わってます」

「再確認、しましたか?」

「………………すー、はー――――はい、してません!(きりっ)」

「うん、確認しなさい」

「うぅ……はい……」


 マリンは社会見学としてクリスティアに同行することと成った。

 事の発端はクリスティアが経った後のミハルの里。マリンはクリスティアのことが脳裏に浮かび仕事が捗らない日々を過ごしていた。

 それを見兼ねた住民が提案したのがこの社会見学。


 里長としての視野を広めるために外の世界を回ると良い、と唆されて気が付けば旅荷物を用意されていて里から追い出されていたのだという。

 要約するとこうだ――――クリスティア追いかけろ。


 二人の旅。これから彼女らが歩む道はどのようなものか。それは誰にも分からない。しかし少しだけボコられてほしいという願いが聞こえた気がした……


 おしまい。


後書きーーーーーーーーーーーーーーーー

【贋作神器/機神獣姫】

能力:常時エネルギードレイン

   考えてない

【月煌】

能力:超範囲のエネルギードレイン(並兵士を数分で腐肉に変える程度の威力)

   魔力吸収

   不死属性


この作品がラストだけ短い理由ですが二つほど存在します。


 一つ、GA文庫大賞に出そうと思ってるがページ数が大幅に超えてる!!

 これね……GA文庫大賞に出そうと思ってるんです。ですがこの作品のページ数が、多すぎる……!

 コーネリアの戦闘シーン書いてたらどうしようもなくなるんですよ!!


 二つ、多分コーネリアと戦っても瞬殺で面白くない。

 アルテミス出した場合→コーネリア瞬殺される。

 アルテミス出さない場合→クリスが瞬殺される。


 コーネリアちゃん、かなり強いんですよ。なんなら別作品に登場するアメリアちゃんとも戦えてもしかしたら相打ち出来る。そんぐらいに強いです。

 なので瞬殺するか瞬殺されるかの二択しか出せないんですよ、戦うと。

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女体化した英雄の受難 クリス『あの、え…? ちょっ、まっ、ひぎぃっ! がぁ゛ッ、も゛、殴らぇ゛ゅの゛っ、やだよぉ…っ』 足将軍 @504329

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