heard (your heart.)

over extended.

「なんなんだよもう。起こせよっ」

『いや。寝てたのはあなたですよ。私は起こしました。現に彼女は起きていますし』

「なんであいつは起きられんだよ。あんなだったのに」

『まあ、搾り取るほうと、搾り取られる方の違いですね』

　角を曲がって。塀を飛び越えて。ショートカット。

「おお。いたいた」

　がたいのいい、大柄の男性。

「ごめんなさい急いでますんで」

「おい。世界の命運を懸けて一緒に戦った仲だろうが」

　引き留められる。

「やめてくださいまじで。遅刻してしまう」

「いや、嘘だな。ちょっとだけ話しても、わずかに間に合う」

『たしかに』

「待ってくださいよほんとに。遅刻したくないんですって。余裕もって登校したいんです」

「その分だと、もう大丈夫みたいだな。女と復縁したか」

「ええ。おかげさまで」

「まだ、ひとりで生きてひとりで死ぬとか、思ってねえだろうな？」

「思ってませんよ。離してください。遅刻してしまう」

「いいや。嘘だな。まだ、おまえは。心のどこかで、自分は一人なのだと、孤独なのだと、思い込もうとしている」

『おお。鋭い』

「黙れ」

「おっ。言うようになったな」

「あっ違います隊長に言ったわけでは」

「また、世界の命運を懸けて一緒に戦う機会があったらよろしくな。次は一緒に戦おう」

『ぜひぜひ』

「ええ。わかりましたから。離してください」

『ほらほら。もっと早く走らないと』

　走る。

　彼女のいるところへ。

「くそがっ」