第7話
ひとつ、またひとつと竹箒の身で石段を跳ね上がる。やっとの思いで境内へとたどり着いた頃には
「藪に捨てたやつもオバケになってたらやだなあ……」
「
「誰っ!?」
わたしは
意外にも、声の主はわたしのすぐ
「大昔の
「はあ……そ、そうだ!」
この悪夢で
その事実があまりに
「どうして人の姿でいられるんですか!? わたし、元の姿に戻れますか!?」
「あなた、箒にいたずらでもしたの?」
「うっ」
「いけませんわ。古来より、箒はなににもまして人に近しい、魂を掃き集める
「そ、それよりわたし、オバケ箒に追われてて」
「オバケではなく付喪神です」
「どっちでもいいじゃん!」
女性のマイペース加減にわたしはイライラしてしまい、たまらず大声で叫んだ。
そのせいで気づかれたのだろう。次の瞬間、遠くの藪をがさがさ揺らしながら、
「出たぁ!?」
「…………」
(見てる!? すごいこっち見てるよぉ……!?)
数秒ほどのにらみ合いののち、オバケと化したあの竹箒がぴょんと一歩を踏み出す。
「やば、こっち来た……」
「お迎えに行きましょう」
「えっ!? でも」
「あなたは悪いことをしても謝らないの?」
「そういうわけじゃ……」
「大丈夫。わたくしがそばについていますわ」
優しい口調でそう答えると、女性はわたしの体に手を
――いつしか箒がそこにいた。
目配せするわたしに女性は
ごめんなさい。
そんなありきたりな言葉で謝ったと思う。というのも、あの竹箒に気持ちを伝えたところで急に意識がもうろうとし始めたのである。
やがてわたしの悪夢は、女性のこんな一言によってあっけなく幕を閉じたのだった。
「ミキはこれからも、人としてまっすぐに生きましょうね」
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