ひなたざか

@smile_cheese

ひなたざか

『いつだって、未来は味方だ』


私の頭の中にずっと残っているこの言葉は、一体誰がかけてくれた言葉なんだろう。

それは今でも私の支えになっている。


私、佐々木美玲はけやき坂46のメンバーとして、先が見えない真っ暗闇の坂道を手探りで上っていた。

私たちにはまだこれといった色がない。

一体どうすれば応援してもらえるアイドルになれるんだろう。

そんな悩みを抱えながらも、ただ過ぎ去っていく日々に私は焦っていた。

私たちは本当に必要な存在なんだろうか。

そんな私の不安な気持ちを和らげてくれていたのはキャプテンの佐々木久美だった。

久美は常に先にある明るい未来を見ていた。

私たちなら大丈夫だから。

ずっとそうやって、私たちのことを引っ張ってくれていた。

そこから少しずつ、私たちは変わっていくことができた。

けれど、そんなときに再び心が崩れてしまうような事件が起きた。


けやき坂46の増員が決定。

私たちって意味ないんだと、そのときは本気でそう思った。

気がつくと私は逃げることを考えるようになっていた。

私一人が逃げ出したところで誰も困りはしないんだ。

このときの私はもうマイナスなことしか考えられなくなっていた。


いつも僕だけ一人

うまくいかないのは なぜ?

背中丸めて 俯きながら

答えを探そうか?


いくら探したって答えなんて見つかるはずないのに。

私は椅子から転げ落ち、深い海へと沈んでいくような感覚へと陥った。

このままどこまでも沈んでいこう。

誰にも見つかることのないまま。

そんな葛藤を繰り返していたある日のこと、私宛に1通の手紙が届いた。

差出人は書かれていなかったが、その手紙の消印には『2020年9月23日』と記されていた。

未来からの手紙とでもいうのだろうか。

手紙にはたった一行、こう書かれていた。


『いつだって、未来は味方だ』


一体誰がこんなイタズラを?

私には真っ暗闇にしか見えない未来が味方のはずがない。

私は気味が悪くなり、その手紙を破り捨ててしまった。

この言葉に救われるどころか、余計に深い海の底へと沈んでいくようだった。

私は来る日も来る日も悩み続けた。

苦しい。誰か、お願い。私を助けて。

私は精一杯、腕を伸ばした。

誰かにその手を掴んで欲しくて。


助けて!


そのとき、誰かが私の伸ばした手を掴んで引き上げてくれた。

救ってくれたのは金村美玖だった。

いや、美玖だけではない。

美玖の体を2期生たち全員で必死に支えてくれていたのだ。

彼女たちは私、いや、私たちとは真逆の存在だった。

一度は拒絶してしまった彼女たちの存在が私たちに光をくれた。

私は再びあの言葉を思い出していた。

2期生の存在はこのグループにとって味方であり、未来そのものなんだ。

私たちなら大丈夫。

久美の言っていた言葉も今なら理解できる。

私は再び前を向いて歩き出すことにした。


それからは色々なことがあった。

日向坂46という素敵な名前をいただいた。

卒業していった仲間もいた。

戻ってきた仲間もいた。

新しい仲間だって増えた。

もちろん楽しいことばかりではなかったけど、もう私は逃げたりなんかしない。

そう、私たちなら大丈夫。


2020年9月23日。

大切な1stアルバムが発売される日。

美玖が私の元へとやって来て、こう囁いた。


『いつだって、未来は味方だ』


私はどうしてその言葉を知っているのか美玖に尋ねた。

すると、あの日、美玖も私と同じ手紙を受け取っていたことが分かった。

あの手紙の消印が今日だったことに気がついた私たちは冗談半分で過去の自分たちに手紙を書いてみることにした。

もちろん差出人は書かず、あの言葉を添えて。


日陰だって照らせば明るくなる。

太陽が当たらないトンネルの中にいるように思えた時期もある。

それでも、いつかを信じて進んできた。

大切な仲間だっていっぱい増えた。

支え合って歩んできた。

たくさんのおひさまを浴びて、私たちはこんなに大きく成長しました。

信じて進めば、未来はある。


『いつだって、未来は味方だ』



完。

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