終章

第17話 この世界に救いがあるならば


 

 王都キルリにあるギルドではもちろんステイン・グレイの話で持ち切りだった。


 冒険者はならず者、はぐれ者といったイメージが強く、ギルドの冒険者は王都の人気者である王国騎士団のことを良く思っていなかった。


 そこで、今回のグレイの活躍である。


 王国騎士団が手も足も出なかったカオナシをギルドのエースが撃退したのだ。


 ギルドでは何日も振る舞い酒が出され、付近の住民も一目ステイン・グレイの顔を見ようとギルドの近くに集まり、ギルドを中心にして大規模なお祭りのようになっている。


 ただ、グレイは戦いの後、ギルドに顔を出したのは一度、報酬を受け取りにきただけである。


 今回はステインチームでの戦いでなかったため、全額がステインの取り分となった。



 金貨で1500


 ギルドが発行した手形に王室が保証した手形で渡された。


 その時ギルドの周辺にいた住民は5,000人。


 

 救世主とも英雄とも呼ばれ始めていたステイン・グレイをただ遠くから見ていた。


 中には膝を地面につけて頭を深く垂れてステイン・グレイの方を拝む者までいる。



 駐車場に停めてあったPN-1にまたがって飛び出そうとすると、目線の先に知った男がいた。


 ステイン・グレイの方を誇らしげに見つめているが、馴れ馴れしい態度も取らない。


 片腕の男、ステイン・グレイにPN-1を譲った冒険者デビッドだ。


 デビッドはツインデビルから逃げ切ったあと、一命をとりとめた。


 ただ、片腕でホバーバイクの操縦と武器の扱いをすることはできなかったので王都の片隅でホバーバイクの整備工場をやっていた。


 ステイン・グレイは冒険者になってからも何かあるたびにその整備工場を訪れる。


 ステイン・グレイが評価Sとなり高額な報酬を得るようになってからもデビッドは通常の料金以上のお金を受け取ることはなかった。


 今も、油まみれのツナギを着て、それでも満足そうな顔をしてステイン・グレイのほうを見ていた。



 グレイはデビッドに近づくと、恥ずかしがるデビッドを持ち上げてPN-1に乗せた。



 周囲の群衆からは大きな拍手と歓声が上がった。

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この世界に救いがあるならば 海乃 果(うみの はて) @uminohate

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