第16話 ステイン・グレイ
速かった
一体どれほどのスピードが出ていたのか。
PN-1とそれに乗るステイン・グレイの姿は人間の目では捉えることができなかった。
通り過ぎた後には衝撃波とPN-1独特の駆動音だけが残った。
騎士団の団長ガラナは東から接近するPN-1にいち早く気付いて、周囲の騎士団に道を開けさせた。
そこに、ステイン・グレイが突っ込む。
弾丸のようなPN-1の動きにカオナシもさすがに対応しきれず至近距離まで距離が詰まる。
そこから、グレイの長刀がカオナシの首に叩きこまれる。
カオナシの首筋から大量の出血。
グレイはターンしながら第二撃を反対側の首筋に入れる。
一撃目ほどではないが、反対側の首筋からも出血している。
それを見ていた王国騎士団から驚嘆の声が上がる。
ギャラリーなどは気にせずグレイは神業を超えるようなバイクさばきを見せ絶妙な位置でターンしカオナシに攻撃を加えていく。
カオナシは首、顔、腹、腕、足、背中とあらゆるところから出血が見られる。
全身白っぽい巨体だが、今は自らの血で真っ赤に染め上げられている。
ただ、それでもまだカオナシは立ち続けている。
一旦、グレイは距離を取って空中で停止する。
カオナシは多少傷つけられても立っていられるが、グレイは一撃食らえば終わりだ。
一瞬、カオナシとステイン・グレイの間に両者しか分からないような意思の伝達があったようだ。
その後、ゆっくりとカオナシは西の方へと歩き始める。
致命傷は受けていない。
それでも、王国騎士団も、ステイン・グレイも追わない。
ただ、それでもこれですぐにまたカオナシが王都を襲うことはないだろうと思えた。
カオナシが王都から立ち去るまでステイン・グレイは見ていたが、城壁の外に出た瞬間ゆっくりと東のほうに帰り始めた。
ガラナ団長は、カオナシ追尾のために1班つけ、自身はグレイのほうへ向かった。
「また借りができたな」
「借りじゃないだろ、報酬は頂く」
「ああ、そうだな」
短く言葉を交わして2人は別れた。
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