第33話 貴族の血

ベリスと別れた後、

荷造りを始めていた頃だった。


ノア「早く、早く支度をしないと………」


扉がノックされる。


『コンコン』


ーーーーえっ………?


召使い「ノア様、宜しいですか?」


慌てて荷物を隠し、

返事をする。


ーーーえ、ええ、どうかしたの?



扉を開け、召使いが説明を始める。


「アッシュ様が、今日の夜、

 屋敷に到着するようです」


父から聞いていた日と違い、

驚き、返事をする。


ーーえっ?明日ではないの?


「それが、アッシュ様は、

 待ちきれずノア様に会いたいと

 向かわれているようです」


ーーそ、そう、分かったわ、もう良いわ下がって



ーーはい……。


扉が閉まるのを確認すると、

荷物をまとめ、庭園へと急ぐのだった。


(お父様、ごめんなさい……)



誰にも見つからない様に、

庭園へと着くと、花をかき分け、

庭園を出る。


(急がなくちゃ………)


急ぎベリスの家へと、向かうのだった。


日没


ベリスの家へと着くと、

ドアを叩き、ベリスを呼ぶ。


ーーベリス!!ベリス!!


ノックに気づいたベリスは、

慌ててドアを開く。


「ど、どうしたんだノア?」


「ベリス!今日、アッシュが来るみたいなの!

 急いで街を出ないと!」


ーーなんだって!!?


支度が済んだ、荷物を持つと、

ノアの手を握り外へと駆け出す。


ーー行くぞ、ノア!!


ーーうん!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ライエット邸


アッシュ「さぁ、愛しの妻を、

     迎えようではないか」



バーノス家当主アッシュが、ライエット邸の

門の前へと着くと、召使いに命じる。


ーー門を開けよ!!



門が開かれ、召使いは、

アッシュを客室へと案内する。


召使い「アッシュ様、こちらで

    お待ち下さいませ」


ーーあぁ!早く準備を頼むぞ


召使いは、急ぎラーゴの元へと向かい、

アッシュの到着を知らせる。


召使い「ラーゴ様、アッシュ様が

    客室でお待ちです」



ラーゴ「そうか!!すぐに向かう!

    ノアを呼んできてくれ!」


『かしこまりました』


客室へと着くと、満面の笑みを浮かべ、

挨拶をする。


ラーゴ「アッシュ様!お待ちしておりましたぞ」


「ラーゴ殿、急で申し訳ない、

 早く我が妻に会いたくて、来てしまいました」


「おぉ!それはありがたい、

 きっとそれを聞いたらノアも喜びますぞ!」


その時だった、客室の扉が開かれ、

召使いが慌てた様子で話す。


「ラーゴ様、ノア様が、

 ノア様がいらっしゃいません!」


「ノ、ノアが、どう言う事だ!?」


「わ、分かりません、

 それと荷物も、見当たらないのです!!」


アッシュ「ラーゴ殿、居ないとは、

     どう言う事ですかな?」


「わ、私にも、分かりません………も…もしや!?」



ーーー何か思い当たる事があるのですかな?


「そ、それが……昔雇っていた召使いの息子が

 居たのですが、娘と仲が良すぎた為、

 出入りを禁止したのですが、

 もしかしたら、娘をたぶらかし

 連れ去ったのでは………」


ーーーほう。


「それは探し出さなくては、いけませんなぁ〜」


ラーゴ「はっ、はい、直ぐにでも使いの物を!」


「いえ、その必要は、ありませんよ」


そう言うと、アッシュは、

剣に手をかけニヤリと笑う。


ラーゴ「そ、それはどう言う意味…」


ラーゴが言いかけたその時、

剣が抜かれラーゴの身体へと突き刺さる。


『グフッ』


「ど……どうして……?」


「フフフフフフフ、この私を侮辱して

 当然の事だと思うがね?」


「そ、そんな………ノ……ア………」


『キャァァァァーー』


召使いが悲鳴を上げ、走り去る。


アッシュ「あの召使いを殺せ、そして、

     屋敷を焼き払え」


騎士が剣を抜き、召使いの後を追う。


「さぁ、追いかけるぞ、我が愛しの妻を!」


残った騎士が問いかける。


「アッシュ様、でもどこを追いかければ……」


『フッ』


「これだからバカは困る、

 身寄りのない男と女が向かう場所なんて

 一つしかないだろう」


「ヘッヘッへ、フィーネですな?」


「分かったら、さっさと支度をしろ!」


『はっ!!』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『はっはっ』


「大丈夫か?ノア?」


「うん!私はまだまだ大丈夫よ」


「よしっ!国境まで後少しだ!」


『うんっ!』


だが、ベリス達は、後方より馬に乗り、

追っ手がすぐそばまで来ていることに、

気付いてなかった。



走る二人が、月明かりに照らされ、

アッシュの視界へと入る。


アッシュ「ようやく見つけぇたぞ、

    さぁ、あの男目掛けて、矢を放てェェ」


ーーそれでは行きますぞぉ!!!!



鋭い矢が、ベリス目掛けて放たれる。


後方から、微かな声に気付いたノアは、

振り向くと構えられた弓に気付き、

ベリスを突き飛ばす。


ーーベリス、危ない!!


ベリスの代わりに、

鋭い矢がノアの胸を貫く。



ーーーうっ。


突き飛ばされたベリスは、起き上がり

倒れ込むノアを抱き寄せ寝かせる。


「ノア、どうして、どうして、

 俺なんかを庇って!」


ベリスは、涙を流し声を荒げる。


ーーどうしてだ、ノア!俺なんかを。


ベリスの頬を触り、囁く。


ベリス……私は……

貴方の為なら……命なんて惜しくはないわ……。


ーー俺は、俺は……。


「お前が居なくなったら、俺は生きて

 行けねぇよ」


ベリスの頬をつたりノアの顔に、

ベリスの涙がこぼれ落ちる。


「大丈夫よベリス……私は……貴方の中で…ずっと…」


ベリスの手を握ると、

ベリスのゲートの中へと、光を

送り込む。


「あぁ、ノア、俺はお前とずっと一緒だ」


ーーうん……。


ーーねぇ、ベリス……。


ノアの手を強く握りしめる。


ーーどうしたんだ?


ーーベリス……世界で1番………愛してるわ。


ノアは、ベリスに精一杯の笑顔を作り、

愛を伝える。


「あぁ…あぁ俺もだ………お前を、

 お前を世界一愛してる……」


ーーベリ……ス…あ……りがと……う……。


ノアの手から力が抜ける。


ーーノア!?ノア?ノアァァ?


ノアからの、返事が無く、

ベリスは、強く抱きしめる。


アッシュと、その他数人の騎士が、

追いつき、馬から降りる。


「よぉぉぉやく、追いついたかぁぁ」


ノアと、ベリスを見ると嘲笑うように言う。


「フッ、庇って死におったか、

 最早私の物にならぬのなら、死んで当然だ、

 其奴も後を追わせてやれ」


手下が剣を抜き、構える。


ーーノア、少し待っててくれ。


ベリスは、そう言うと、

ノアを寝かせ、剣を抜く。


「やらせねぇよ、俺の中で、ノアが

 生きてる限り、ぜってぇになぁぁ!!」


アッシュ「何を戯言を、お前等さっさと、

     其奴も殺せ」


手下「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


手下の1人が、ベリスに斬りかかる、

その時ベリスの瞳が輝き、

ベリスは、剣に魔力を流し込み、

手下を切り捨てる。


手下「ひぇぇぇ、こ、こやつ、

   どうして剣に魔力をぉぉぉ」


ーーーほう。


アッシュ「貴様、貴族の血が流れておるのか?」


「あぁ、、貴族と召使いの間になんて、

 よくある話だろ?」


ーーーフッ。


アッシュ「面白い、このアッシュ様が直々に、

     貴様を葬ってやるわぁ!」

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この歌が貴方に届く時 君は僕を救う あなたは私を救う すばろう @tak1234

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