3話 墓所の悪魔

 僕は、ハーフ。とても珍しい。なぜなら昔、戦争があったからだ。ドワーフ軍と人間軍の戦争。いや、そこまで規模はデカくならなかった。ドワーフと人間の国境付近で取れる資源を目的とした争いで、どちらの領土かで揉めていたからだ。わかると思うが、僕は人間とドワーフのハーフだ。

 裕福では無いが、それなりに幸せな日々を過ごしていた。そう僕が8歳になる直後までは。

 僕の誕生日の前日、悲劇が起きた。


 「起きなさーい」

 お母さんの声だ。

 僕はいつもこの声が聞こえるまでベットからは出ない。優しくて穏やかで、声なのに暖かく感じる。お母さんの声を聞かない限り目が覚めていてもベットからは出なかった。

 僕は部屋から出て、階段を降りてお母さんに挨拶をした。

 「おはよう、お母さん。」

 「おはよう、早く顔洗って歯を磨いてきなさい。今日はあなたの好きな目玉焼きサンドよ。」

 「はーい。良いのそんなに奮発して。誕生日は明日だよ。」

 「子供がそんなこと気にしないの、さっさと顔洗ってきなさい。」

 「はーい。でも僕もう8歳だよ、もしかしたら明日でスキルが手に入っちゃうかもだよ。」

 「何言ってんのよ、お父さんも私も11歳の時にスキルが発現したんだからね。あー、またあれでしょ。お父さんの本の話に出てくる勇者様。」

 そう、僕は昔お父さんが寝る前に読んでくれた本の勇者様に憧れているのだ。その勇者様は8歳の誕生日の日に6レベルのスキルが発現して、お嬢様を助ける。典型的な勇者の物語だ。それでも、僕は勇者に憧れた。

 「顔洗って歯を磨いたら、お父さんを起こしてきて。」

 「はーい。」

 僕は顔を洗って、歯を磨きながら、お父さんの部屋に入った。

 「おぼぅうざん。おぎてー。」

 口から溢れそうなほど泡を立てて言ったので何を言ったのか、自分でもわからなかった。

 「何を言ってるか分からん。先に口をすすいでこい。」

 そう言って、髭の濃ゆい3頭身が布団に潜った。

 僕はその布団を引っ剥がして、洗面台に向かった。

 「おはよう、明日で8歳か。6レベルのスキルがくると良いな。」

 「おうよ、そして僕もお父さんを超える強い冒険者になるんだ!」

 「はは!勇者じゃ無いんだな。まぁ、まずは3レベルを超えれることだな。」

 お父さんが歯を磨き終わり、席について家族みんなで、朝食を食べた。

 「今日、お母さん村に行って買い物してくるから、お父さんと二人でお留守番お願いね。」 

 そう言って、お母さんは人間の村に出かけて行った。

 「よし、お前がどんなスキルを貰うか知らんが冒険者には、筋力や技術が必要だ。今か特訓するぞ!」

 そう言って僕に木刀を渡してお父さんは剣を構えた。

 お父さんの剣から繰り出される剣術は3頭身が繰り出しているのとは思えないぐらいの綺麗な剣術だった。昔お父さんは危険度Aのミノタウロスを倒したと言っていたが、あの時は嘘だと思っていたが、体の傷とこの剣捌きを見た時は、本当なんだと思い知った。

 お父さんからの手厳しい剣術の特訓が終わり、僕とお父さんはお昼ご飯を食べていた。

 ドスドスドスッ、と何人かの足音が聞こえた。お父さんは僕に

 「隠れていなさい」

 と言って足音の方に行った。

 僕は言われたとうりに、隠し扉の中に隠れた。

 「今少し人間と喧嘩しててな、ちからかしてくれねーか。」

 ドワーフの人達らしい。ドワーフの人達なら大丈夫だろうと思い隠し扉を開けようかと思ったが、お父さんの言われたとうり隠れていた。

 「今から此処はになるんだ、わかるだろ?」

 「しるか、喧嘩ならよそでやってくれ。」

 ドスンッと一回大きな音がしてドスドスドスと玄関の方に歩いて行った。

 ガチャンと、扉が閉まる音がしたから、僕は隠し扉を開けて玄関方向を見ながら歩いていった。

 「何の話をしてたの?」

 ベチャッ。

 そこには、赤く染まった廊下に横たわるお父さんがいた。お父さんの背中には剣がささていた。

 「あ、あぁ、お父さん!お父さん!止血剤、止血剤取ってくるよ!」

 「あぁ、大丈夫ぅだ、お父さんもう無理そうだ。」

 僕は何をして良いのかわからなかった。

 頭が真っ白になった。

 「聞け、息子よ。お父さんもう死ぬと思う......お父さんが死んでもお母さんは死なせちゃダメだ。お母さんのためにもお前のためにも。」

 「死なないでよお父さん...僕、まだお父さんと冒険してないよ。一緒に行くって約束したでしょ。」

 「あはは...そうだったな。すまん守れそうにない。」

 「やだよ...死んじゃダメだよ。」

 「...最後に...いっておかないといけない...な。ミノタウロス倒したって言ったの嘘だ......」

 そう言ってお父さんの心臓の鼓動が止まった。 

 お父さんは死んだのにもかかわらず生きていた時と同じように笑顔だった。

 僕はお父さんが死んだのにもかかわらず少し笑ってしまった。涙は溢れているのにほっぺたが上に上がってしまう。

 

 僕は泣き止んでいないままお母さんの元に走った。泣き止もうとしても、お父さんのこと思い出してまた涙が溢れてくる。必死になって涙を拭ながら、前に行ったことのある人間の村まで走った。

 ドスンッ。

 何かに引っかかってこけた。

 足元を見ると丸焦げになった死体があった。

 その死体は、見覚えのある服、見覚えのあるバックそして『happy birthday』と書いてあるチョコプレートとケーキと8本ろうそくが散らばっていた。

 まだ僕はチョコプレートの文字が読めなかったが、この死体が誰なのかは、一目で分かった。

 ガサガサッ。と物音がしたので、泣いてぐちゃぐちゃになった顔を下にし、声を殺した。

 「あの女ドワーフと暮らしてるんだろ。」

 「おいおい、あんな裏切り者の話なんかすんなよ。気が狂うだろ。」

 「あははは、そうだなやめだやめ。さっさとあの女の元に夫さんを送ってあげないと。」

 「子供も忘れんなよ。あの子供も子供で不気味なんだよ、褐色の肌でまだ子供なのに筋肉質で容姿は人間だぜ。」

 「子供は奴隷だよ。多分かなり金になるぜ。」

 僕は家まで走った。殺す!殺す!殺す!こいつらを殺すことで頭がいっぱいだった。

 「ん?物音しなかったか?」

 「気のせいだろ。」

 

 家に着くと家が燃えていた。燃えてる中、裏口から剣が置いてある場所に口を服で覆って火の中に飛び込んだ。

 剣を手に取ると、外から声がした。

 「雑魚が調子に乗るなって話だよな。3レベルの

スキルを手に入れたぐらいで。」

 「俺も2レベルのスキルだが、あんなやつ雑魚同然のやつなんか一差しで死んだよ。」

 「あんな気持ち悪い人間と暮らしやがって、裏切り者は死んで当然だろ。」

 「あとは女と子供か、女は殺して、子供は奴隷として売れば金にはなるだろ。」


 僕は体の力が抜けた。

 すると目の前にステータスボード出現し、スキルの欄に文字が刻まれていく......

 


 .......あの時からだ。目が死んでいるといわれるようになったのは。

 今は人間の村もドワーフの村も見当たらない。此処は僕と、沢山の石と、大きな石、あとは大きな石の前にいつも置かれてある花があるだけの殺風景な場所になった。

 

 大きな石にはこう刻まれている、

   『Father and mother sleep here』

              と、刻まれている。

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異世界最強になるにはスキル?それとも愛? dakii @dakii

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