2話 美しい料理

     その日、貴族の半分が死んだ


 人間の国の中級貴族の集まる街があった。街の中華街にひっそりとたたずむ店、天誅店。此処の今の店長&シェフしているのが僕である。母と父が切り盛りしていた時は、ゆうのもなんだがかなり儲かっていた。でも今は、ダメダメである。僕のスキルは2レベルの料理人。にも関わらず、料理は美味しくない。このままだったらたぶん潰れてしうだろう。

 「店長いますかぁー?」

 店いっぱいに広がる透き通った声、目の前にいるのにも関わらずいつも彼女はこの言葉を言って入ってくる。いつもしている髪留めはキラキラと輝き、美しい顔をより一層引き立てる。

 「いらっしゃいませ。」

 僕は、そう答え、料理を作る準備をした。

 「今日はー、店長のおすすめが食べたい気分です」

 「いつもそれしか、いわないじゃないですか。」

 「私は店長のおすすめが食べたいんですぅー。」

 二人は同じタイミングでクスクスと笑った。その後も、たわいもない話で盛り上がりながら、料理を作り、作った料理を彼女に差し出した。

「唐揚げ定食ですね!唐揚げ!今食べたかったんですよ。もしかして私の心の中見えちゃってます?」

「そのようなスキルは持ち合わせておりませんよ。」

 またもや同じタイミングで笑った。その後もたわいもない話をたくさんして、たくさん笑った。こんな時間が永遠に続けば良いのにと思うぐらい店は幸せな空気でいっぱいになっていた。

 「もうこんな時間、帰りますね。ごちそうさまでした。今日のご飯も美味しかったですよ。また来ますね。」

 その一言を聞いてから、もう彼女の声を聞くことはなくなった。


 時が経ち、彼女がいなくなって一週間、玄関でドサっと音がした。

 「此処がこいつの通ってた店だろ、こいつも此処に帰って嬉しいだろうな。」

 外から、男の声がした。

 玄関に出ると赤い色をした袋が玄関の前に置いてあった。中を覗くとぐちゃぐちゃの血肉の塊があり、中にその肉の赤黒い輝きを、より一層輝かせんとする見覚えのある輝きがあった。

 走って、さっきの男の胸ぐらを掴んで僕は、初めて出すような声で怒鳴り上げた。

 「あーあれですか、あなたの常連さんじゃないですかw」

 その時僕の中の何かが切れ、細かく刻まれ、燃えて消えた。

 それからは、一瞬の出来事だった。男の四肢が綺麗に切り落とされ、切れた部分は、燃えて止血され、俺は男の顔を握っていた。

 「お前は単独犯か?」

 男は、一瞬の出来事に、脳が追いついていない。でも男は、一瞬で何かを理解した。男は全てを嘘偽りなく話した。

 

 その夜一人の貴族が死んだ。死んだ貴族の家族、傘下、同盟関係の貴族や、出来事に関与していた人物が、次々と波の様に死んでいった。

 

 その日、貴族の半分が死んだ。

 

 僕は、次の日に美しい料理に巡り会えた。お肉に卵や片栗粉などいろんなものをつけ、油で揚げる料理。とても美しい料理、それを食品サンプルのようにできる魔法をかけ、冷蔵庫に入れた。

 

 料理は技術ではない食材が全てを決める。何で作るか何を添えるか。それが全て。


 最後に冷蔵庫のドアを開け、輝く髪飾りをそっととても綺麗な食品サンプルに添えた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る