3
それからしばらくして、山の中を歩いている二人の頭の上に冷たい雪が降り始めた。
「……雪だ」
その雪を見つめながら、足を止めて幹はいった。
「うん。雪だね」
同じように薄暗い灰色をした雪の降り出した空を見上げて鳩がいった。
「これは急がないといけないな。早くしないとこの山の中で遭難してしまうかもしれない」
鳩を見て幹が言う。
「遭難する前に凍えて死んでしまうかもしれない」
冗談でも言うように、にっこりと笑って鳩はいう。
「そうならないように、早く『山小屋』を見つけないといけないな」
鳩を見て幹はいう。
二人はお互いに通っている高校と中学校の制服を着ている。その上に幹は焦げた色のダッフルコートをきていて、鳩は真っ白な色をしたコートをきていた。靴も二人とも学校指定の革靴だった。
それは二人が学校に通うときにきている服装だった。
いつもの朝と違うのは、二人が一緒に同じ道の上を歩いていることと、学校カバンの代わりに二人が荷物のいっぱいはいったリュックサックと大きな旅行鞄を持っていること、ここが学校に向かう通学路の上ではなくて、遠い場所にある名前もよくわからない山の中だということだけだった。
それから二人は無言になって、黙々と雪の降り始めた山の中を歩き続けた。
そして二時間後。
二人は予定通りに、山の中にある小さな山小屋にたどり着いた。
「ついた」
と雪の降る慣れない山の中を重たい荷物を持ちながら歩き続けて、くたくたになった二人は、二時間ぶりに同じ言葉を同じタイミングで、嬉しそうな同じ表情をしてそういった。
冬の山小屋 雨世界 @amesekai
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