3 春 ……あなたは消えてしまった。

 春


 ……あなたは消えてしまった。


 季節は秋。

 世界には秋の気持ちのいい風が吹いていた。(秋はビビの一番好きな季節だった)

 ……いい匂い。とても素敵な秋の匂いがする。とくんくんとその秋の風の匂いを嗅ぎながら、そんなことをその心地よい秋風の中を歩きながらビビは思った。


「なに考えてるの? ビビ」

 ビビの隣を歩いている姉のジジがそういった。

「別に、なんにも」ビビは言う。

「なに考えていたか、当ててみようか?」にっこりと笑ってジジは言う。

 ビビは無言のまま、駅までの紅葉する木々の植えられている並木道の歩道の上を歩いている。

「……ミミのことでしょ?」

 秋の透き通った空を見上げてジジは言う。

 

 ジジは紺色のタンクトップの上着にデニムのズボンを履いて、その上に白いふわふわのついたダウンジャケットを着ている。足元は白いスニーカー。

 その横を歩いているビビは白色のセーターに紺色のミニスカート。その上に赤色のダッフルコートを着ていた。細くて長い自慢の足には黒のストッキングを履いて、足元には黒の革靴を履いていた。


「……違うよ。大好きな秋の季節のこと、考えてた」

 少し間を置いてから姉のジジを見上げて、にっこりと笑ってビビはいった。

「そっか。……ごめん」

 にっこりと笑ってジジはいった。


 背の高いジジと並んで歩くと、ビビの顔はちょうどジジの大きな胸(姉妹の中でジジが一番胸が大きかった)のあたりにあった。それからジジはそっとビビの頭を優しく撫でてくれた。


「もうこの辺りでいいよ。見送りどうもありがとう」と駅前に着くとジジはいった。「うん。わかった。気をつけて」とにっこりと笑ってビビはいった。


「じゃあ、またね、ビビ。いい子にしてるんだよ」

「わかった。いい子にしている」とビビはいった。

 それからビビは手を振って駅の中に入っていく笑顔のジジを見送ってから、今歩いて来た道を引き返して自分の家に帰ることにした。


 でも、その途中で、ビビはふと気が変わって、少しこの辺りの道を散歩してから家に帰ることにした。ビビは近くにある大きな公園に寄ることにした。秋の色に染まった公園。それはとても、(ビビの思っていた以上に)本当に素敵な場所だった。

 その秋の公園の中にある白い休憩所のような小屋のところで、ビビはある一人の女性と出会った。

 その女性はどこかいなくなった姉のミミに似ていた。(その人の後ろ姿を見たとき、思わずビビはぶるっと自分の心と体が震えるのを感じた)

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ビビとミミ 雨世界 @amesekai

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