「どうしていなくなっちゃったの?」とビビは姉のミミにそういった。

 でも姉のミミは、いつものようにとても優しい顔をして、ビビを見て、ただにっこりと笑っているだけで、やっぱり、いつものように本当に大切なことは、なにもビビには言ってくれなかった。

 ビビは悲しそうな顔をしてミミを見る。

 でも、『この場所にいる姉のミミ』はずっと黙ったままだった。

 ……それも、いつものことだった。


 遠くで鳥の鳴く声が聞こえた。

 見ると、青空の中に一羽の白い小鳥が飛んでいた。

 その白い小鳥に目を奪われている間に、いつの間にか、次の瞬間、ビビが視線を大地の上に戻すと、姉のミミの姿が世界から消えていた。

 ……急に、黙って、どこかに消えて、いなくなってしまうこと。

 それもやっぱり、いつも通りのことだった。

 姉のいなくなった楽園のような風景を見つめて、ビビは一人で泣いた。……私はきっと泣くためにこの場所にきているんだと思った。

 姉のミミがいなくなった理由が、ビビには全然わからなかった。

 きっと一生、わからないままなのだと、泣きながら、十五歳のビビは思った。

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