第547話 おじいちゃんの護衛
「じゃあね、アリリオ、アイルは時々こっそり戻って来るからママとおりこうさんに待ってるんだよ。ビビアナとエンリケは大丈夫だろうけど、何かあったらすぐ通信魔導具で連絡してね」
ビルデオへ向けて出発する日、最後にアリリオのぷくぷくのほっぺにチュッとキスをして家を出た。
「珍しくあっさりアリリオと離れたじゃねぇか」
「そりゃあ、最終手段があるからね。寂しくなったら帰って来るもん」
というのは半分建て前で、本当はあんまりアリリオ達と離れたがらないとおじいちゃんが気にすると思ったからだ。
ちなみにガブリエルに作ってもらった通信魔導具の存在は、ビルデオで別れる時まで内緒にしてサプライズプレゼントにする予定。
馬車を引く馬達を迎えに門前広場まで行くと、おじいちゃんの顔なじみが揃っていた。
バレリオや孤児院の皆、中にはおじいちゃんに訓練してもらった冒険者まで。
「ふふっ、おじいちゃんもすっかりウルスカの住人だったもんね。ここでの生活は楽しかった?」
ピトッと隣にくっつき、聞いてみる。
「ああ、そうだな。妻と過ごした日々の次には楽しかったと思う」
懐かしい物を見るような目をして、孤児院の方を見た。
昨日の内にホセのお母さんのお墓参りに行ったけど、また来るって言っていたからこれで最後じゃないよね。
おじいちゃんが見送りに来た人達に囲まれている間に馬車の準備を終わらせ、見送られながら出発した。
この辺りの景色を目に焼き付けておきたいというおじいちゃんの希望で、今はホセと一緒に御者席だ。
私はちゃんと気を利かせて馬車の中でおとなしくしている。
「それにしてもさぁ、本当なら一瞬で到着できちゃうのに、三カ月近くかけて行くの? アリリオは僕達の事忘れちゃうんだろうな~、アイルは一人だけコッソリ帰って会うのは
向かいに座るエリアスが私の反応を楽しむように、ニヤニヤしながら言ってきた。
「だ、だって、転移魔法がバレたら大変な事になるって皆も言ってたじゃない!」
「エリアス、アイルを
「ああ、
リカルドがエリアスを
「ずっと連絡とかしてないけど、やっぱり今回も伝わってるのかなぁ。案外忘れてたり……しないよねぇ」
「アイルの気持ちはわかるが、恐らく今回も俺達がトレラーガに到着したら待ち構えていると思うぞ」
「僕もリカルドと同意見だよ。だけど僕は案外エドガルドの事は嫌いじゃないけどね。あ、だけどエンリケが来てないから残念がるかも。アイルの次にエドガルドと仲がいいのはエンリケだし」
「そういえば二人でお酒飲んでたりしてたんだっけ、てっきりエドはエリアスと仲がいいと思ってたよ」
「まぁ、仲は悪くはないよね。良くもないけど。だけどエンリケには何だか親近感を抱いていたように見えたかな。共通点なんて無さそうなのに不思議だねぇ、お酒の強さかな?」
「うんうん、それなら納得だよ。お酒って友達の輪を広げるよねぇ」
「アイルはそうやって人をたらして、酔っぱらって迷惑をかけてるんだね。
「いやいや、エドは一方的に私に目をつけていたよね!? エリアスだって見てたじゃない!」
「あはは、確かにエドガルドは下手に拒絶したら、余計に粘着質になるタイプだろうから今の扱いが正解だと僕も思ってるよ。 …………誰かさんは気に入らないだろうけど。それにしても随分変わったよねぇ」
「…………」
エリアスはニヤニヤしながら御者席のある前方に視線を向けてから私を見た。
きっとこの会話はホセにも聞こえているんだろうなぁ。
確かに記憶が欠落した頃のホセに比べたら大人になってるし、最近は結構紳士というか、誠実な態度をとる事が増えた。
恐らく、おじいちゃんが入れ知恵……というか、教育をしていると思われる。
実際ホセが王族として育っていたら、おじいちゃんみたいな性格になってた可能性は高いもんね。
…………あれ? 前は王族として育ってたホセは想像できないって笑い飛ばしたけど、もしかして結構いい男だったりする!?
「アイル、百面相しているところ悪いが、そろそろ休憩場所に到着するぞ」
「え!? あ、うん、わかった!」
転移魔法使用についての追及は免れたけど、また余計な考え事を抱えてしまったのは気のせいだろうか。
◇◇◇
次回、久々に賛否両論な彼が登場!
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