第527話 ディエゴの訪問
カリスト大司教達がウルスカを出た翌日、ギルドマスターのディエゴが訪ねて来た。
「そろそろ
「それって私達に受けて欲しい依頼があるって事? それなら素直にそう言って欲しいんだけど」
リビングで皆の分もお茶を淹れ、ディエゴの向かいのソファに座った。
今はリカルドとエリアス以外の『
「そういや、ホセのじいさんと赤ん坊はどうした?」
「おじいちゃんはお散歩で、アリリオはお昼寝中だよ」
「アリリオは生まれたばかりに見たきりだが、随分可愛いって評判だなぁ。アイルが離れたがらねぇのもわかるってもんだ」
「でしょぉ~? もう会う人皆が可愛い可愛いって、将来楽しみだって言うん……じゃなくて! 私の機嫌を取って何を頼みたいの?」
ディエゴは時々こうやって気分を良くしたところで頼み事をするのだ。いつもリカルドには通用していないけど、なんだかんだ言いくるめて依頼を受けさせてくる。
腕を組んでジロリと睨むと、苦笑いを浮かべながら口を開いた。
「う……っ。いやぁ、実は最近
「それってヘタしたら森の深部まで行かなきゃいけないんじゃない? その場合片道二日はかかるよね、日帰りが無理なのはちょっと……」
討伐した魔物の素材を丸ごと持って帰れるのは私だけだとディエゴが思っているからだけど、かと言ってエンリケも丸ごと持って帰れる事を勝手にバラす訳にはいかないもんね。
私が
ビビアナに私を説得するように目配せを始めたのだ。しょうがないと言わんばかりの苦笑いを浮かべて口を開くビビアナ。
「アイル、アリリオはやっと寝返りができるようになったばかりよ。うつ伏せからの寝返りができるまでに数日はかかるはずだから、それまでに帰ってくれば問題ないんじゃないかしら? 万が一これが
「簡単だな、オイ」
ビビアナの説得に私は即座に決断した。
ホセが即座にツッコんできたけど、何とでも言うがいい。
「だけど、ウルスカのあの森で
「もう文献にしか残ってないくらい昔にあったらしいぜ。ウルスカの領主の息子と昔馴染みなんだが、学生の頃に文献で読んだって言ってたからな」
「「「学生の頃!?」」」
エンリケ以外がディエゴの言葉に反応した。
「なんだよ、そりゃ俺にだって若い時代はあるんだぜ?」
「いやぁ、ディエゴの学生時代って想像できないっていうか……」
思わず目が勝手にディエゴの頭頂部へと動いた。
ちなみにそれは私だけではなかったようで、頬を引き攣らせながらエンリケ以外の三人を見る。
「お前ら……。言っとくが学生時代はふっさふさだったんだからな!? ……そんな事より! 調査の件、頼んだぞ」
「あはは、わかってるよぅ。早く済ませたいし、明日から行くって事でいいかな? リーダー代理はエンリケにお願いしていい?」
「いいよ、ホセだとアイルと喧嘩始めちゃったら止めなきゃいけないからね」
「それってリーダーの仕事じゃなくて保護者の仕事じゃない? むしろ保護者みたいに食事作ったりして面倒見ているのは私の方だよ。そうだよ、今から食材も買ってこなきゃいけないし」
今日の内に食事のストックを作っておかないと。
ビビアナとおじいちゃんの分は小さい鍋に一食分ずつ小分けして、温めたら食べられるようにしておけば安心だもんね。
まぁ、いざとなったら転移で帰って来るという最終手段もあるから大丈夫なんだけど。
「明日から行ってくれるってんなら助かるぜ、じゃあ
「はいはい……」
ニヤリと笑うディエゴに肩を竦めて答えていると、ホセの耳がピクッと動いた。
「ビビアナ、アリリオが起きたぜ」
「あら、じゃあ寝室に行くわ。ディエゴ、またね」
「おぅ、俺も用事は済んだからギルドに戻るぜ。邪魔したな」
ビビアナがリビングから出て行くと、ディエゴも立ち上がって帰って行った。
「じゃあアイルは俺と買い出しに行く? それともおじいさんが帰って来てから一緒に行く?」
「う~ん、今からサクッと行って明日からの料理を作っておこうかな。転移してからまた作って戻ってっていうのは面倒だもんね、きっと一日中森を移動したらクタクタになると思うし」
「そうだねぇ、しばらく運動らしい運動もしてなかったから筋肉も体力も落ちてるだろうから。もしかしたら、森を歩くだけで筋肉痛になっちゃうかもね」
「う……っ、確かにその可能性は高いかも。よし、とりあえず筋肉のためにも、今日は鶏胸肉多めに買ってこよう」
ホセに留守番を任せて私をエンリケは商店街へと向かった。
◇◇◇
@tamano0403さんからおすすめレビューいただきました!
2巻もご購入ありがとうございます⸜(*ˊᗜˋ*)⸝♡
インフルエンザで咳止めや鎮静作用のお薬飲むと笑っちゃうほど頭働かず更新遅くなりました(´>∀<`)ゝ
とりあえず復活したのでまた最低でも週一更新に戻ります!
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