第517話 前情報
「あらぁ、残念ねぇ。もう少し見ていたかったんだけれど」
幻影魔法を解除したことで、残念そうにしつつマザーとシスターイレネがホセを放した。
「アイル! 二度とオレに幻影魔法かけんじゃねぇぞ!?」
撫でまわされて乱れた髪を撫でつけつつ、ホセが私を睨む。
「えぇ~? マザーもシスターイレネもおじいちゃんも喜んでくれたのにぃ~」
「だったらお前がオレの姿になってやれよ、幻影魔法ならできんだろ!?」
「もぅ、ホセはわかってないなぁ。ホセ本人だからこそ価値があるってものだよ、ね?」
「そうね、本人じゃなければ姿絵と同じような感覚で見てしまうのではないかしら?」
マザー達に同意を求めると、笑顔で頷く。
「ぐ……、けどもう嫌だからな」
言い負かされそうだと思ったのか、プイとそっぽ向いてしまった。
その時、シスターイレネが何かを思い出したらしく、ポンと手を打った。
「そうそう、皆さんにお知らせする事があったんです。巡礼しながらなのでいつになるか正確にはわかりませんが、カリスト大司教様がこの大陸に入ったのでウルスカにも立ち寄られるそうですよ。ウリエル大司教様に頼まれたらしく、五国大陸にいるエルフの方のところにも寄ったそうです」
「「「「「…………」」」」」
「ほぅ、噂の
思わず無言になってしまった『
「まだひと月程先になるかもしれませんが、いらっしゃったらお知らせします。それでは私達はこれで失礼しますね。何かあったらいつでも呼んでちょうだい」
そう言ってマザー達は教会へと帰って行った。
そして残された私達。
「来ちゃうかぁ……、これはバレちゃうかもね」
二人が帰って静かになったリビングで、エンリケがポツリと漏らした。
「だよねぇ、あのカリスト大司教がアイルの変化に気付かない訳ないもんね。アイルが女神様の化身として崇められちゃうのも時間の問題じゃない?」
「だがまぁ……、カリスト大司教であればアイルの気持ちを優先してくれそうな気もするが」
エリアスが不安になるような事を言ったが、リカルドが希望の光をくれた。
そうだよね、私が教会本部に行った時もちゃんと約束守って私の気持ち優先してくれたし!
「けどよ、やっぱりウルスカを聖地にして、
「ホセ、それ笑えないよ。本当になってもおかしくないからね!?」
ホセの軽口にエリアスが
「皆はカリスト大司教という御仁が好きなのだろう? まるで来てほしくないような言い方をするのだな?」
皆の会話を聞きながら、おじいちゃんが首を傾げた。
「カリスト大司教はいい人だし、皆も好きなんだよ? だけどね、私に対してとっても丁寧というか、女神様に連れてこられた賢者だからって信仰の対象みたいな態度なの。だから落ち着かないというか……。それなのに女神の化身になっちゃった事を知ったら、前以上に信仰の対象にされちゃうんじゃないかなぁって」
「ぷぷっ、そういえばアイルが初めてカリスト大司教達と会った時って、いきなり
おじいちゃんに説明していたら、エリアスが
「やめてよ! 本当にやりそうだし!」
「ま、まぁ、大司教ともなれば信心深いのだろうな。一緒に過ごしていると忘れてしまうが女神の化身……か、ははっ」
「なんで笑ったの!? そりゃあ女神様とは比べ物にならないけどさぁ……」
おじいちゃん……カリスト大司教のフォローはしたのに、私の事は笑うって酷いよ!
「いやいや、可愛らしい女神の化身だと思っただけだ。アイルは十分女神の化身としてふさわしいと思っているぞ」
「おじいちゃん……!」
「おいおい、あんまりアイルを甘やかさねぇ方がいいぜ? 酒癖は
ホセの言葉にムッとして睨むと、なぜかエリアスがニヤニヤしながら口を開いた。
「ホセってばそんな事言っちゃって~、そんなアイルの事が好きなク・セ・に。おじいさんとアイルが仲良くしてるからってヤキモチかい?」
エリアスってば、そんな言い方したらムキになって否定するに決まってるのに。
そう思ってチラリとホセを見ると、見た事が無いくらい顔を赤くしていた。
「え? ウソでしょ!? ホセがこんなに素直な反応するなんて!」
凄く嬉しそうに目を輝かせるエリアス。
これは私が好きだからなのか、それともヤキモチ焼いたのを言い当てられたせいなのかがわからない。
とりあえず照れてるホセなんてもの凄く久しぶりに見たので、思わずジッと見つめてしまう。
するといきなり視界が塞がれた、ホセが私の顔を掴むようにして目を
「わわっ、なんで顔掴むの!? 余計な事言ってるのはエリアスでしょ!?」
痛くは無いけど、何度もアイアンクローを喰らっている身としては緊張してしまう。
ホセの手首を掴んで抵抗を
「見るんじゃねぇよ。…………恥ずかしいだろうが」
そんな事を言われたら余計に見たくなるというのが人情というものだろう、照れているレアなホセを見るためにあがく私。
結果、顔を掴む手に力を入れられ、ホセの顔から赤みが引くまで大人しくさせられたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます