第444話 エリアスの懇願
リビングで家族の
「ただいま…、あの、アイル…賢者様の知恵を貸して下さい!!」
「は!?」
いきなり
エリアスの後から姿を見せたのはホセとプルプルしているエルフ二人、もちろんカマエルとタミエルだ。
「アイル…我々はもう里に帰りたい…」
タミエルが床の一点を見つめながらポツリと漏らした。
「え? いきなりそんな事言い出すなんて…何があったの?」
しゃがんでエリアスと目線を合わせ、プルプルしているエルフ二人を交互に見る。
そしてその瞬間エリアスからフワリと匂った独特の香り、スンスンと匂いを嗅いでジトリとした目をエリアスに向けると視線を逸らした。
「その…ね、僕達が連れて行ったという
エルフ二人は夕方ガン見していたビビアナの胸には一切視線を向けようとしていない、
「で、何があったの? 怖い思いしたみたいだけど」
とりあえず座る様に促して話を聞く事にした、すると
「我々はこれまで魔物だろうと動物だろうと狩る側だった…、しかし今日初めて捕食される側の気持ちを体験したんだ…!」
「エリアスがサービスしてやってくれって代金上乗せしたせいじゃねぇの? そんな事しなくてもアイツらエルフの客なんて初めてだってヤル気だったのによ」
「ホセだってどうせなら巨乳の娼婦にしてやろうって賛成してたじゃないか!」
エルフの二人は膝を抱えて絨毯の上で小さくなっており、曇り無き
どうやら張り切った娼婦のお姐さんに食べられて
「二人ともうるさい! どうせどっちも悪いんだから黙ってて!」
「「はい」」
責任の
私は笑いを堪えてプルプルしているビビアナを視界の端に捉えながらため息を吐いた。
「はぁ…、とりあえず里に帰るのはダメだよ、もう王様に連絡しちゃっただろうから今更やっぱり宮廷魔導師の話は無かった事に…なんて言ったら罰を受けるんじゃないかな? 宮廷魔導師はずっと空席だったって言ってたから凄く期待してるだろうし、違う?」
王宮の事には詳しいであろうおじいちゃんに視線を向けると、おじいちゃんは頷いた。
「そうだろうな、恐らく二人だけでなくこの話を出したガブリエルも罰を受ける事になるだろう。しかもセゴニアに対する
おじいちゃんの言葉に
とりあえず娼婦に怯えても私と話していても平気みたいだから何とかなりそうかな。
「怖かったのならもう娼館に行かなきゃ良いだけの話でしょ? 早く子供が欲しいから里に帰りたいというのなら話は別だけど、その場合でも代わりが見つかるまでは我慢するしかないけどね。長くて二十年もすればこれから生まれる子供達の中から才能のある子が見つかるんじゃないかな、もっと早く見つかれば弟子にして育てれば良いじゃない」
「そうか…! アイルと女神のお陰でこれからは魔法が使える子供が生まれるんだったな」
宮廷魔導師になる予定のカマエルの目に光が戻った。
しかしまだタミエルの目は泳いでいる。
「私はあくまでガブリエルの助手という立場のはずだから居なくても問題無いのでは…」
どうやらまだエルフの里に帰る事を諦めていない様だ。
タミエルはウルスカに住む予定だから街中で
「あのねぇ、タミエルの事も既に王様の耳に入ってるんだから同じなの。大体娼婦のお姐さんはお金を払わないと相手してくれないんだからそんなに怯える必要なんて無いからね。基本的に花街から出てくる事も無いから昼間に街中で会う事も無い…よね?」
その辺は詳しいであろうエリアスに聞けばわかるはず、問いかけるとコクコクと頷いた。
「うん、娼婦は基本的に花街から出ないよ。逃げ出すのを防止するのもそうだけど、客の関係で知らない内に女性から恨まれてたりするから安全の為にも普段の買い物は人に任せるか商人を呼び出すのが普通だし」
「だってさ、安心した? もし貴族や一般の女性が言い寄って来ても婚約者が居るとか、男にしか興味が持てないとか言えば回避できるでしょ。いざとなったら責任取ってエリアスに恋人のフリして貰えばいいんじゃない? そうすれば二重の意味で女性避けになるよ、あははは」
「「なるほど」」
「やめて!? 僕が娼館に行けなくなるじゃないか!」
私の提案にエルフの二人は納得した様だが、エリアスが悲鳴の様な声を上げた。
いくらエルフの里がベビーラッシュになりそうだとはいえ、貴重なエルフ男性を女性恐怖症の危機に追い込んだ罪は大きいのだ。
焦るエリアスにエルフの二人以外が笑っている、笑っているけどエルフは二人居るんだから恋人役も二人必要なんだってわかってるのかな、ホセ。
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