第435話 エルフの未来は…?

「どうしたんだ?」



「何でもないよ、ほら、エルフでもイェグディエルみたいに姿が見える人も居ればガブリエルみたいに気配しか感じない人も居るんだから人族でも見える人が居ても不思議じゃ無いって」



 ガブリエルの口をいきなり塞ぐという私の行動を不審がるミカエル達に、適当に有り得そうな事を言って誤魔化してみる。



『まぁそれも間違いじゃないね、教会関係者みたいに女神に近しい人族とか見えたりするし。ウリエルが友達になった人族も気配は感じていたからね』



「あ、やっぱりそうなんだ、カリスト大司教とか見えそうな気がする、女神様大好きだし」



『ああ、教会本部からアイルに会いに来た大司教か、確かに彼なら見えるかも』


『しっかりした理由も無く自然と狂信的になる人は女神と相性が良かったりするからね、波長が合うって言うのかな? そのお陰で神託を受け取れるんだけど、その分僕達が見える可能性は高いんだ』



「やっぱり種族関係なく波長が合う合わないってあるんだねぇ…」



「それよりさ! ほら、五国大陸の王子達が近くの村で待ってるはずだから今日か明日の早くに出発しないとダメじゃない?」



 妖精と話をしていたら自分の失態を誤魔化そうとしているのか、ガブリエルが唐突に話題を変えた。

 ガブリエルが3日か4日後に知らせるって約束しちゃったんだっけ?



「そういえば3人が里を出るのはいつにするの? すぐに出る準備が出来るなら一緒に向かえばいいけど、家を離れるならそんなに早くは出られないよね?」



「問題無い、ミカエルがマジックバッグをくれると言っていたから必要な物は全て放り込めば良いだけだからな」



 私の言葉にタミエルが答えた、そんなに早く娼館に行きたいのかと勘繰かんぐってしまうのは私だけだろうか。

 でもまぁ、ウルスカに行くのなら一緒に行った方が安心かな。

 途中の大きめの町で娼館に入り浸っていつまでも来ない、なんて事態にならないか心配しなくて良いし。



「あれ? 今思ったけど、ウルスカまでは良いとしても王都まではガブリエルが付き添うのかな? あ、でも王立研究所に所属するなら王様の許可が必要だろうし、結局3人で王都に行くの? 初めて里から出る2人を連れての長旅かぁ、頑張ってねガブリエル」



 ポンとガブリエルの肩に手を置いて応援だけしておいた、しかしガブリエルは屈託の無い笑顔を返して来た、嫌な予感しかしない。



「また指名で護衛依頼出すからよろしくね、一旦ウルスカで身体を休めてから行くつもりだから大丈夫だよ!」



 やっぱり!!

 全然大丈夫じゃないからね!?



「やだよ! またビビアナと2ヶ月も離れるなんて!!」



 赤ちゃんが産まれちゃったら今までみたいに気軽にビビアナに甘えられなくなるのに、貴重な時間を娼館に行きたいからって里を出るエルフの為についやすなんて嫌だ。

 涙が出そうにるのを下唇を噛み締めてこらえる。



「まぁまぁアイル、依頼に関してはリカルドが考えてくれるよ。アイルはビビアナの出産に立ち会いたいんでしょ? 間に合わないなら断る様にお願いすれば大丈夫だって、ね? 別に冒険者は僕達だけじゃないんだしさ」



 ガブリエルは裏切られたと言わんばかりのショックを受けた顔をエリアスに向けた。

 たぶん娼婦に教えた知識をバラした件でこれ以上の追撃を避ける為に私をなだめてると見た。

 だがしかし言っている事は正しいので大人しく頷いておく。



「それじゃあ決まった様だし、昼食の後に出発しようか。セラフィエルに料理教える約束したから行かないと、どこに居るかわかる?」



「うん、多分もう台所に居るんじゃないかな、そろそろ昼食の準備に取り掛かる時間だから台所へ案内するよ。あ、3人は昼食までに里を出る準備しておいてね」



 少し元気の無くなったガブリエルに案内され、女子会で約束した料理を教えた。

 その場に女性しか居なかったので、ついでに胸のマッサージは女性ホルモンが出やすい様に好きな人にしてもらう方が効果的だと教えたら、女性陣が狩人の眼になっていたのは見なかった事にしておいた。



 考えてみれば男性が少なめなのに3人も里から出て行っちゃうもんね、純粋に子供が産みたい人だけじゃなくて胸を大きくしたいから、という理由で男性の取り合いが始まるのではないかと少々心配だ。



 でもまぁ、エルフには時間はたっぷりあるんだから男性の取り合いなんて起こらないかな?

 いや、むしろ先に胸を育てた人とまだの人でマウントの取り合いが発生したり…しないよね!?



 とりあえず色々試したい男性と、胸を育てたい女性の利害は一致してるんだから丸く収まるはず。

 ほんの少しだけ心配になる事がひとつあるといえばある、それは百年以上魔導具の研究を続けるガブリエルの様に、長い人生をの研究についやす人が出て来ないかというもの。



 嫌だよ、今回私達が来た事が原因でエロフ爆誕なんて。

 その時は決して書物に私の名前は出したりせずにエリアスの名前だけ残して頂きたい。

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