第405話 報告会議
「ガブリエルの話を聞くと売れ残りを買い占めるつもりで買っておいた方が良さそうだね。途中に全く町や村が無い訳じゃなさそうだし宿はあるかもしれないけどさ」
そう言って振り返ると、後ろをついて来ているエリアスはぼんやりしていた。
「エリアス? 結婚させられそうでショック受けてるの?」
「え? あ、いや…そうじゃなくて…。そんな事より早くしないとお店が閉まっちゃうんじゃない? 急ごうよ」
「そうだね! 終わりの時間だから安く大量購入するチャ~ンス!!」
とりあえずエリアスはついて来ている様だったので、店仕舞い直前の食材を買いに走った。
私が時々大量買いする事は知られているので残りを全部買う代わりに安くしてくれるお店は多いのだ。
ひと晩経つと傷んで売れなくなる物もあるので、安くても売れた方がお店としては嬉しいし、win-winの関係で歓迎されている。
魔物肉は自分達で狩るのであまり買わないが、鶏、豚、牛は店に出ている分を買い占める。
あくまでお店が閉まる直前の時だけだ、昼間にやってしまうと他のお客さんが買えなくなるので事前にわかってる時は予約をするのだ。
そんな訳で今回は残っていたお肉と明日取りに来る分の鶏肉を予約しておいた。
家に帰ると既にリカルド達は帰っていて、ホセがお腹空いたと騒ぐのでおじいちゃんとビビアナにただいまのハグをしてから台所へと向かう。
台所ではエリシア達が夕食の下拵えをしてくれていた、言っておいた通り塩気の強いものは控えてくれている様だ。
夏バテ防止にトマト入りの野菜スープ、それとまだ生の鶏胸肉が置いてある。
「ただいま、主菜は何をする予定?」
「あっ、アイル! お帰りなさい!」
「お帰りなさい、昼は
ルシアが私の腕に飛びつき出迎えてくれ、ベリンダが夕食の説明してくれた。
「そっか、ホセがお腹空いたって騒いでるから簡単に蒸し鷄にしちゃおうか、蒸してる間に各自好きな味で食べられる様にソース類を作っちゃおう。胸肉はフォークで穴をあけてお酒と塩胡椒を少し擦り込んでね。ついでに腿肉も茹でちゃおうか」
「「「はーい」」」
3人は手際良く鶏肉の下準備を進める、これだけだとご飯のおかずというにはちょっと弱いかな。
でもまぁ、ご飯をガッツリ食べたいであろう男性陣にはストレージにあるコッテリ系おかずを出せば良いか。
出産まではビビアナの体調優先メニューにして貰ってるから私達が居ない間おじいちゃんはともかく、セシリオには物足りなかったかもしれないな。
セシリオの事だからビビアナと子供の為なら喜んで合わせてくれるだろうけど。
「そういえばマヨネーズ作って余った卵白は言われた通り冷凍庫に入れておいたよ」
「ありがとうエリシア、その卵白は明日にでもお菓子に使おうか」
「「「お菓子!?」」」
「卵白と同じ重さのバターと砂糖と小麦粉を混ぜて焼くだけだから簡単だよ、混ぜる順番は作る時に教えるね」
お菓子の言葉に3人共喰いついた、最近お菓子の差し入れしてなかったもんね。
卵白を消費出来るお菓子といえばラングドシャだけど、バターと砂糖たっぷりで嘘みたいにカロリーが高いからなぁ。
だけど少量でカロリー高いなら探索に行く冒険者に良いかも、バター使うからコストが高いし孤児院で作って売ったりするには厳しいかな。
ここで作って孤児院への差し入れにするのが無難だよね、胃が小さい子供に間食って大事みたいだし。
キャッキャと喜ぶ3人とマヨネーズや付けダレを作り、鶏の香りに誘われて我慢できずに来たホセと3人だけ先に食事をしてもらう事にした。
単純に全員揃って座れないって理由なんだけど。
そして3人はホセに送ってもらう事にして私達は食事を始めた。
そう、ここからは報告会議である。
「リカルド、皆にも話があるんだけど」
食事の途中でそう切り出した私の言葉にエリアスがピクリと反応した。
きっとレミエルの事を言われると思ってるだろうけど、初っ端からその事は言わないよ。
「何だ? ガブリエルの所で何かあったのか?」
「う~ん、あったというか、3日以上後になるけどガブリエルが指名依頼出すって言ってたの。内容はレミエルをエルフの里までガブリエルと一緒に護衛だって」
レミエルに関しては私が料理を作ってる間にリカルドがビビアナとおじいちゃんに説明してくれていた。
「エルフの里は遠いのではないか? また長期間居なくなるのか…」
ああっ、おじいちゃんのケモ耳がヘタってしまった!
今夜は久々に一緒に寝よう、そして心ゆくまでおじいちゃんをモフ…慰めよう。
「ごめんね、往復で3週間くらいだって」
「あら、意外に近いところにあるのね、王都より近いじゃない。この大陸のどこかにあるって噂は知ってたけど本当だったのね」
ビビアナは食事という最大の問題が無くなっている為か余裕そうである。
3日あればある程度教えられるから食事は問題無いはず、ビビアナに週1回くらい外で食事してあの子達を労ってもらおう。
ついでにその食堂で私が料理を教えている事を匂わせて就職先を探せればなお良し。
「エルフの里まで護衛という事は、レミエルはガブリエルと結婚してウルスカに住むんじゃないんだな」
リカルド達はあのやり取りを知らないからまだレミエルとガブリエルが婚約者だと思ってるもんね、ちゃんと教えてあげなきゃ。
「うん、何かガブリエルは全くその気が無くてとっくに断ってたらしいよ。レミエルは今ガブリエルじゃなくエリアスの子供産む気になってるの」
「「「「はぁぁぁあ~~!?」」」」
リカルド、エンリケ、ビビアナ、おじいちゃんの声が見事にハモった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます