第406話 種馬候補達
「ちょ、ちょっと待ってアイル、どうしてそんな面白…じゃない、大変な事になってるのかしら?」
今漏れた、本音が漏れちゃってるよビビアナ。
エリアスは耳を塞いでいるけど言っちゃうもんね。
「それがね、レミエルが恋心がどんなものかわからないって言った時にエリアスが手にキスして口説く素振りを見せたら…免疫の無いレミエルはそのまま恋に落ちたみたいなの」
「馬鹿ね」
「馬鹿なのか?」
「馬鹿だねぇ」
「それにしてもそのレミエルというエルフは簡単過ぎないか?」
「だよね!? 僕だってまさかあの程度で惚れられるなんて思って無かったんだよ!」
口々に馬鹿と連呼され、唯一エリアスの肩を持つ発言をしたおじいちゃんに訴えた。
「エリアスはレミエルの事はどう思っておるのだ? エルフというからには美形なのだろう?」
おお、おじいちゃんが核心を突きに行ったー!
まさか一旦同意して心を開かせてから情報を引き出す作戦か!?
実際皆興味津々でエリアスの答えを待っている。
「そりゃあ…、見た目が好きかと聞かれたら美人だし好きだよ。しかも親の言う事に従って結婚しようとする素直さも貴重だと思う、だけど…今まで僕の子供が欲しいって言われた事なんて無かったし戸惑いの方が大きいかなぁ。それにあの程度で僕に惚れちゃうなら僕じゃなくてもコロッといっちゃうんじゃないかって思わなくもないんだよね」
「「「「「……………」」」」」
「え? 何? 何で黙ってるの?」
「あ、いや、思ったより真面目に考えていたんだな…と思ってな」
リカルドの言葉に皆が頷いた。
「何か僕の評価酷くない!?」
「それは日頃の行いじゃないかしら?」
エリアスの抗議にビビアナがシレッと返す。
「じゃあ…とりあえずエルフの里への道中のテントは1人で使える様にしようか、そうすればいつでもレミエルと話し合う事が出来るから断るなり受け入れるなり決めやすいでしょ?」
「外堀埋められてる気がするのは僕の気のせいかな!?」
「気のせいだよぅ」
と言いつつ、これで途中で手を出しちゃったりしたらエリアスの自己責任というものだ。
研究所からの帰り道といい、エリアスの様子がいつもと違うから時間の問題だと思うのは私だけだろうか。
「ご馳走様、とりあえずホセが帰って来たら指名依頼の件も含めて報告しておいた方が良いな。アイル、リビングで少し飲みたいんだが良いか?」
食事が済んだリカルドが立ち上がり、酒盛りの提案をしてきた。
普段なら食事の時に1、2杯飲んで済ませる事が多いのに。
「珍しいね、リカルドからそんな事言うの」
「俺というよりエリアスが飲みたいんじゃないかと思ってな」
「そうだね…、ちょっと飲みたい気分ではあるかな…」
心なしかエリアスが
「わかった、飲みたいボトルだけ並べておいて、氷とか準備してくるよ『
洗浄魔法で食器を綺麗にしてストレージに片付け、台所へ向かう。
アイスペールに氷魔法で氷を放り込み、水割り用のチェイサーを準備。
やっぱりハイボールの為に炭酸水が欲しいなぁ、魔導具で作れないかガブリエルに聞こうと思って忘れてるし。
酒盛りの準備をしていたらセシリオの声が聞こえて来たので1人分の夕食も準備して一旦ストレージに収納。
食堂に戻るとビビアナと2人だけ席に着いていた、どうやら他の3人はお酒を飲む為にリビングに移動したらしい。
「おかえり、お疲れ様セシリオ、すぐにご飯食べるでしょ?」
「ただいま戻りました、皆さんはもう食べた様ですね、食堂に良い匂いがしてるから凄くお腹が空いてきました」
「ははっ、いっぱい食べてね。ご飯のおかわりは台所の魔導炊飯器に入ってるからね」
セシリオの前に夕食を並べていると、ビビアナがニマニマと笑いながら私を見ていた。
「アイルったらソワソワしちゃってぇ~、どうせお酒が飲みたいんでしょ、早くしないとホセが帰って来ちゃうものね? こっちは食べ終わったらあたしが片付けておくからもう行っていいわよ」
どうやらビビアナにはお見通しだった様だ。
「えへへ、ありがとう。台所に食器置いとくだけでいいからね、後はよろしく!」
いそいそとリビングのドアを開けるとそこには2対のケモ耳、つまりはホセが帰って来ていた。
ま、まぁ良いや、どうせおじいちゃんと寝るつもりだったから3杯以内に抑えるつもりだったもんね。
「ホセ帰ってたんだね、おかえり」
「ああ、門前広場でセシリオとかち合ったから一緒に帰って来たんだよ。それよりエリアスが大変だったって?」
「あ、もう聞いたんだ。そうなの、だけどエルフの里に到着したらホセ達も大変かもしれないよ」
「アイル、どういう事だ?」
リビングのテーブルに酒盛りセットを並べながら忠告すると、ジョッキに伸ばしかけた手を止めてリカルドが聞いた。
ふむふむ、リカルドはビールだね、ビールの小樽を取り出して説明をする。
「だって、子孫を残す為にガブリエルが呼び出されてるんだよ? そこに相手がエルフじゃなくてもいいと言うレミエルが居るでしょ、相手の居ないエルフの女性がそれなら自分も相手がエルフじゃなくても良いって言い出したら? 種馬として目を付けられるのはリカルド達でしょ」
「そ、そんな事…」
「あるかもしれないね、俺はホラ、特殊な身の上だから簡単に子供作るなんて考えられないけど、リカルドとホセなら…ねぇ?」
完全に
確かに竜人が産まれたら
エリアスは仲間を見つけたと言わんばかりに目を輝かせている。
「美人とヤれるんなら得なんじゃねぇの? 今まで見たエルフは中身はともかく見た目は美形ばっかりだったしな、ははっ」
「ホセ、お前は自分の出自を忘れてはならんぞ、お前の子供にも王位継承権が発生する事を忘れてはならん」
ホセは不満そうにしながらブツブツ言っているが、耳が伏せられているので反省している様だ。
「俺も一応貴族だからな…、ホセ程じゃないが無闇に子供を作るのはちょっと…」
リカルドも種馬扱いは嫌らしく、ビールを注いだジョッキに口を付けながら言い訳じみた事を言っている。
「結局僕だけじゃないか…!」
『
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