第404話 ガブリエルからの指名依頼
「アイル、僕達そろそろ帰った方がいいんじゃないかなぁ…」
目を泳がせながらエリアスが提案したが、このまま帰れると本気で思っているのだろうか、ジトリとした目を向けると両手で顔を覆ってしまった。
仕方が無い、エリアスには時々助けて貰ってるし、私もたまには助けてあげよう。
「レミエル、さっきエリアスに手にキスされてドキドキしたでしょう? 見た目の良い異性にそんな事されたら大抵の人はそうなるけど、それは恋じゃないからね。今のレミエルは驚いたのと恥ずかしいって気持ちが混ざってドキドキしてるだけで恋とは別物だよ」
「へ!?」
レミエルから美女らしからぬ声が漏れた。
「怖かったり驚いたりするドキドキを頭が恋心と勘違いする現象を吊り橋効果って言うんだけど、落ち着いてよーく考えたら好きじゃないってわかるから。それを利用して口説こうとする人も居るだろうから気をつけてね。何もしてなくても側に居るだけでドキドキしたら話は違うけどさ」
「何もしてなくてもドキドキするのが恋…」
そう言ってチラリとエリアスを見るレミエルの目は恋する乙女のそれになっている。
「レミエル、エリアスは冒険者やってるせいもあるだろうけど、娼館にも普通に通う人だからね!?」
「ハジメテは慣れた人の方が良いって聞いた事ある…」
あ、エリアスが固まった。
それにしてもガブリエルが220歳くらいでレミエルは9歳下…それで2人共経験無しか…。
30歳過ぎて経験無い人は男性は魔法使い、女性は妖精って言われるけど、2人はぶっちぎりでそれを超えた賢者と精霊って言っても良いんじゃなかろうか。
「ガブリエル、どうする?」
呑気にクッキー食べてる場合じゃないと思う、何かもう完全に
「とりあえず今夜はレミエルには宿に泊まってもらって、『
これは…、さりげなくエリアスを
「遠出なら急に言われても困るよ、どれくらい掛かるの? それに私達がエルフの里に行っても大丈夫?」
「アイル達の準備が終わるまで待つよ、私も途中になってる仕事を終わらせたいし。身体強化使って走った場合で片道2週間だったから、馬車を使えば往復3週間ってところかな? エルフが一緒じゃないと里が見つからない様になってるけど、今回は私もレミエルも居るから大丈夫だよ。ただ…人族はあまり歓迎されないと思うけど…」
「やっぱり魔導期終わってから利用しようとする人達が居たから?」
「そうだね、中には誘拐されて違法な隷属の魔導具で従わされてた人も居たって聞いてる、解呪が使える聖職者のエルフは数が少ないから助け出すのにかなり時間が掛かったらしいよ。実際捕まってた人も里に居るから反発されるかも」
それってレミエルがエリアスを好きだとしても反対されるんじゃないかなぁ。
それともエリアスを人身御供にするつもりじゃなかったのかもしれない。
「じゃあエルフと人族の間に出来た子供とか居ないの?」
「いない事もないよ、ただ完全にどちらかに似る場合と、ハーフエルフって呼ばれる半端な姿の場合があるんだ。母親がエルフだと高確率でエルフが産まれるらしいけど、伴侶のどちらかがハーフエルフだと子供が出来た事が無いんだって。それもあってあまり居ないかな、それに…伴侶が先に老いて死んでしまう恐怖もあるから基本的にエルフはエルフと結婚してるね」
「そうなんだ、やっぱりエルフと人族が結婚とか難しいんだねぇ。アイル、用は済んだんだから帰ろうよ」
ガブリエルの説明を聞いてエリアスは少しホッとした様だけど、レミエルはさっきから話を聞かずにエリアスをチラ見ばかりしているから手遅れな気がする。
ひと晩経てば落ち着くかなぁ、あんな事言われたりされたりした事無かっただろうから幻滅しない限り無理だろうな。
「そうだね、レミエルは宿までガブリエルに案内してもらう? それとも私達が案内しようか?」
「だったら…その…」
「レミエルは私が宿まで案内するから大丈夫だよ、これから食材の買い出しにも行くんじゃないのかい? 2人共レミエルを連れて来てくれてありがとう」
レミエルがモジモジしている間にガブリエルが答えた。
エリアス、あからさまにホッとするのは失礼だと思うの、反対にレミエルはちょっとガッカリしてるし。
「そうだね、一緒にエルフの里まで行くなら料理も追加で作っておいた方が良いし、買い出ししてから帰ろうかな。バレリオにラーメンスープの依頼出しちゃおうかなぁ、うふふふ」
「あ、それ賛成! 材料をこっちで準備するなら早くしないと出発に間に合わないんじゃないかな!? それじゃあガブリエル、レミエル、またね!」
私をグイグイ押し出す様にエリアスはガブリエルの部屋を出る。
「私の研究はあと3日は掛かると思うからそれ以降になると思うってリカルドに言っておいてね~」
「わかった~」
ガブリエルに返事をしながらもエリアスが足を止める事は無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます