第359話 微妙なお年頃
孤児院に到着すると、ビビアナ達が子供達に囲まれていたが、数人が離れた場所で暗い顔をしている。
いつもビビアナの事を
「どうしたの?」
「あっ、アイル…。あのね、ファビオがね、ビビアナ姉ちゃんの子供が産まれたら私達の事なんて忘れてここに来なくなっちゃうって言うの…」
「そんなの決まってるだろ! よその子より自分の子供が大事なのが普通なんだよ!」
ハッハ~ン、そういやこのファビオってビビアナに憧れてた子だよね。
結婚してセシリオにビビアナを取られたと思ってたところに子供が出来たから拗ねてるのか。
ちなみに子供達はビビアナに聞こえない様に声を
「そりゃビビアナに赤ちゃんが産まれたら忙しいからここに来る回数は減るかもしれないけどさ、それは子供が手の掛かる赤ちゃんだからだよ。あなた達はビビアナの子供じゃ無いけど家族である事には変わりないでしょ? って事はあなた達にも家族が増えるって事なんじゃない? ファビオもホセみたいにおじさんって呼ばれちゃうかもよ?」
「な…っ!」
「あはは、ファビオがおじさんだって」
ニヤニヤしながら言うと、ファビオは顔を赤くして言葉を詰まらせた。
それを聞いたリタがファビオを揶揄って笑う。
「笑ってるけど、それならリタだってリタおばさんなんだからな!」
「違うもん! あたしはリタ姉ちゃんって呼ばれるもん!!」
「どうだかな~、リタおばさ~ん」
「ファビオ~!!」
さっきの泣きそうな顔はどこへやら、元気に追いかけっこを始めてしまった。
ホセはそんな2人を呆れた様な、少し嬉しそうな顔で眺めている。
結婚式で涙ぐんじゃったくらいだから2人の気持ちもわかるんだろうね、ププッ。
こっそり笑っていたら鋭い視線を感じて振り返ると、ホセが凄い顔で睨んでいた。
私の考えが読み取られてたんだろうか、コワイ。
「アイルさん、今のはボクでもどんな事を考えていたのかわかりましたよ?」
さっきまで居なかったテディが苦笑いしつつ近寄って来た。
「あれ? テディさっきまで居なかったよね?」
「はい、今日の依頼は朝市の荷下ろしのお手伝いだったから終わって帰って来たんです」
「そっか、お疲れ様」
既にあまり身長が変わらなくなっているテディの頭を撫でつつ、さりげなく熊耳の感触を楽しむ。
「アイルさん…、そろそろ頭を撫でられるのは恥ずかしいんですけど…」
モジモジしながらテディが本当に恥ずかしそうに言った。
何ですと!? 私は今でも普通に頭撫でられて喜んでいるというのに子供時代限定のナデナデを拒否するとは!!
しかも撫でられないという事はもうテディの熊耳の感触を楽しむ事が出来ないという事で…!
「そ、そっか…。テディも大きくなったもんね…」
ションボリしちゃダメだ、成長を祝ってあげなきゃ!
ちょっと前までもっと小さかったのに、あっと言う間に大きくなってしまった。
獣人だから仕方ないかもしれないんだろうけど…、本当の動物の赤ちゃんもあっという間に大きくなるもんね。
ビビアナが産む赤ちゃんは獣人みたいにすぐ大きくならないし、いっぱいお世話頑張っちゃうんだから!
思いを馳せてうっとりとしていたらまだ言い合っていた2人からとんでもない言葉が聴こえて来た。
「あたしがオバサンだったらアイルはもっとオバサンなんだからね!?」
「そんなの当然だろ!? なに当たり前の事言ってんだよ!」
向こうで爆笑しているホセには後できっちり話し合うとして、まだ喧嘩を続けている2人をどうしてやろうか。
ふざけ合ってたのが段々ムキになってきて口喧嘩に発展した様だ、私を巻き込むのはやめて頂きたい。
「『
まだ走り回っていた2人の真後ろに瞬時に移動し、ガッシリと肩を掴む。
「「ヒィッ」」
さっきまで居なかった私がいきなり現れたので2人は小さく悲鳴を上げた。
「さっき何て言ったのかな~? んん?」
肩を掴んだままにこやかに問いかける私。
「べ、別に何も言ってないよ…、なぁリタ?」
「うんうん、何も言ってないよ!?」
こういう時に結託する素早さはビビアナとホセの連携を見ている様だ、この2人も喧嘩しつつも結局仲良しだもんね。
「そっかぁ……。だけど…、次は無いよ?」
ファビオとリタはコクコクと激しく頷いた、そんなに怖い顔してなかったと思うんだけどなぁ。
だけど本当に元から16歳ならこんな風に怒ったりしなかったんだろうな、元の年齢が27歳という微妙なお年頃のせいだと思う。
子供達も落ち着いたところで私達は帰る事にした、午後からは冒険者ギルドにビビアナの休業を知らせに行く予定だ。
食材の買い物をして家に帰り、昼食を作ってもまだお昼を食べるには少し時間が早かったので、私は孤児院でのOHANASHIをする為にホセの部屋を訪ねた。
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