第354話 主役無しの2次会

 家に到着すると、ビビアナとセシリオは予想通りすぐに寝室に引っ込み、ホセはおじいちゃんに寝室に寝かしつけられたので私達はリビングで2次会をする事にした。



 全員に洗浄魔法を掛けてから夜着に着替えてのパジャマパーティーだ。

 今日は司会進行としてもホスト役としても頑張ったから今夜くらいは自分にご褒美あげてもいいよね、皆が飲み食いしてるのを横目に最低限しか食事もしてないし。



 2次会参加の男性陣は移動と着替えの間に酔いが覚めて来たらしく、一緒にお酒を飲む気満々だ。

 パーティーでは殆ど食べられない事を予測していた私はちゃんと一部の料理を取り置きしておいたので、それらをテーブルに並べる。



「あれ? コーンはパーティーに無かったよね?」



 エンリケが目敏めざとく新たに出したコーンのバター醤油炒めを見つけて言った。



「うん、コーンは夏にしか採れないからたくさん出せないし、皆が食べられる分の粒を外すのも大変だから出さなかったの。だけどレシピは登録してあるからその内街中で食べられる様になるかもね」



「ほぅ、ならば今はここに居る者の特権という訳だな、頂こう……んん、美味い! イカバター醤油とはまた違って甘みが引き立ってて…これにはビールだろう」



「おじいちゃんわかってるね~! ちょっと待ってね小樽出すから…っと、はいどうぞ」



「うむ、ありがとう」



 ストレージからビール小樽を出してジョッキにそそぎ、おじいちゃんに渡した。

 他の3人も各自好きなお酒をいでグラスを合わせる。



「「「「「かんぱーい!」」」」」



「んぐ…んぐ…ぷはぁっ、…ふふっ、それにしても我ながら良い式だったよね、ビビアナも綺麗だったし、皆も喜んでくれてたし」



「そうだねぇ、そういやアイルは気付いてた? ホセが…」



「エリアスってば、それは言っちゃいけないお約束ってやつだよぅ。式の途中でホセがだなんて~」



「やっぱり気付いてたんだね、アイルの位置からならよく見えると思ってたんだ」



 式場の最前列にはバージンロード側からおじいちゃん、マザー、ホセ、エリアス…と並んでいたので、きっとマザーとエリアスしか気付いて無かったのだろう、リカルドとエンリケが驚いている。



「そういや…、ホセの泣いてるところは見た事無いな」



「僕もだよ、きっとビビアナやマザー達みたいに子供時代を知ってる人しか見た事無いんじゃない?」



 リカルドとエリアスも見た事無かったのか、それは貴重なものを見たな。

 私の泣き顔は何度かホセに見られてるから1度くらい見ても良いよね、むしろもっと感動して鼻水垂らすくらい号泣してくれても良かったのに。



 まぁ、それで揶揄からかったら仕返し待った無しだから、その時はエリアスに任せて犠牲になって貰わなきゃだけどね。

 普段からビビアナと絶対の信頼関係が築かれてるってわかる2人だもんね、心中複雑になるのも仕方ないよ。



「それにしても『希望エスペランサ』の中で次に結婚するのは誰だろうね」



 エンリケが他人事ひとごとの様に言った、実際恋愛に興味が無くなってるらしいから他人事なんだろうけど。



「エリアスじゃないか? その内子供を抱えた女が現れても俺は驚かないぞ、ははは」



「やめてよね! リカルドこそ両親からのプレッシャーに負けてお見合いでもするんじゃ無いの!?」



「いや、俺は今のところ大丈夫だろう、妹達が1年以内に結婚する様な事を言っていたし(アイルとの結婚を家族が望んでいる事を知られない様にしないと)」



「ふぅん…、エンリケは…置いといて。アイルの場合は恋人が出来たらエドガルドに暗殺されそうだよね、あははは」



洒落しゃれにならないからやめて!? 本当にやりそうで怖いよ! 今のところそんな心配する相手も居ないけどさ。あっ、そうだ! 今度エドの前で『エリアスの事が好きになっちゃったの…』って言ってみようか?」



「ングッ! ゲホゲホゲホッ、それこそ洒落にならないよ!? 僕が殺されても良いのかい!?」



「あははは」



「いや、笑えないからね!?」



 シナを作って上目遣いで演技してみたら、エリアスがせてしまった。

 実際に言ったら本当に狙われそうだから言わないけどね!



「ところで何故エンリケは置いておかれたのだ? もういつ結婚してもおかしくない歳だろう?」



 おじいちゃんがエンリケを見て首を傾げた、確かに事情を知らないとエンリケが1番結婚に近いと思うかもしれない。



「俺はねぇ…、ちょっと複雑な事情を抱えてるから結婚には不向きなんだ。そうだなぁ…、条件だけで言えば結婚相手に考えられるのは今のところアイルだけかな?」



「ちょっとエンリケ! 条件って何よ、条件って! ふつうそこは結婚したいと思う相手はって言うところじゃないの!? せいりゃく結婚じゃないんだから、全くぅ…乙女心をなんだと思ってるのよ…」



「ははっ、ごめんごめん」



 ビシッとエンリケを指差してお説教をしてやった、条件なんて言われても何のトキメキも起こらないんだからね!

 たぶん竜人だって知ってるからなんだろうけどさ。



「今ので驚いたり焦ったりしないのがアイルらしいよね…、僕でもちょっと吃驚びっくりしたのに」



「まぁ…、よく言えば冷静と言えるんじゃないか? 少し呂律ろれつが怪しくなってるが頭はまだしっかりしているみたいだな」



 エリアスとリカルドが何か言ってるが、今のは「アイルいい」と「アイルいい」くらい違うからね!?

 えーと、ビールでお腹がたぷたぷして来たから今度はウィスキーに切り替えようかな。



 そして私はのお酒をグラスに注いだ。

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