第353話 披露パーティー
教会の庭には既にテーブルやカトラリーが準備され、一部は年配者用に椅子もあるテーブル席となっている。
パーティーからは招待客じゃない人も大勢混ざると思われるので基本的に立食形式にしたのだ。
私とバレリオは動きやすい服装に着替えてエプロンを着けると庭へ移動して受け入れ準備を開始する。
「よしっ、これでこっちは問題無いね。バレリオ、ここは任せたよ!」
「任せておけ! 俺の自慢のスープで未来の客の胃袋鷲掴みにしてやるぜ!」
「おお、頼もしい! 子供達が交代で手伝いに来てくれるから頑張って!」
ラーメンエリアはバレリオに任せ、ストレージに入れておいた出来立ての料理を並べていく。
式場から抜けてエプロンを身につけた子供達が手伝いに来てくれたので、その内の1人に準備完了を伝えて招待客を呼んで来てもらった。
この日の為にラーメン用に木で出来た器を50個注文してある、足りなくなったら子供達に洗ってもらわなくてはならない。
最初のお手伝いグループは食べるのを我慢しないといけないので自制ができる年嵩の子達だが、客が来る前に唐揚げを口に放り込んでいた。
「もうっ、招待客が来たらつまみ食いしちゃダメだからね!? 交代時間まで我慢だよ!」
「「「「はーい」」」」
調子のいい返事を聞きながら他の料理を並べていく、エールとビールは大樽ひとつずつあるし、ドワーフ用にブランデーやウィスキーも準備した、ワインはこの辺りで良く飲まれているものを数種類、あとはいつも市場で果実水の店をしている2店舗に出張をお願いしてあるから飲み物は問題ないはず。
主食エリアにはラーメン、カレー、パン、白米、ナン、パスタを準備。
ひやむぎは伸びやすいので今回は無し、ラーメンはバレリオが麺を茹でる。
カレーは甘口と辛口の2種類、パスタはナポリタンとペペロンチーノとカルボナーラの3種類。
肉エリアには鶏だけじゃなく
肉肉しいステーキから低温調理した鶏ハム、生姜焼きや鶏の照り焼き、豚カツなどその他肉料理は多めだ。
海鮮エリアはイカの醤油バター焼き、カニ…赤鎧の脚、赤鎧の本体を使ったカニ玉、秋刀魚は迷ったけど上手に解せるか怪しいのでやめた、決して数が減るのが惜しいからでは無い。
白身魚のフライは大丈夫だろうけど、お刺身は食べた事の無い人も多い様なので今回は無し。
スープエリアにはミネストローネとコンソメ野菜スープとシチューの3種類。
あとサラダはキャベツの千切りやレタス、胡瓜とトマトと茹で卵を自分でチョイスしてもらう形式にした、トマトが苦手な子供が多いのだ。
気合を入れて待ち構えていると、ゾロゾロとお腹を空かせた招待客が移動してきた。
「おお~! すっげぇご馳走様じゃねぇか! まずは噂のラーメンとやらを頂こうか」
真っ先に現れたのはギルマスのディエゴだった、バネッサと一緒にバレリオからラーメンを受け取っている。
ディエゴ達に続いてブラス親方も来たが、ドワーフである親方が向かったのは当然ながらお酒のエリアだ。
セシリオの騎士仲間も目を輝かせて肉エリアに突撃し、子供達も各々好きな物の場所へと向かった。
特大のお皿に盛ってあった料理が次々に消えて行く、見ていて気持ちが良いくらいだ。
そしてお皿がひと通り入れ替えられたくらいにお色直ししたビビアナとセシリオが姿を現した。
そしてその瞬間私の鑑定が仕事をして目を疑う事になった、2人に女神の加護が発現していたのだ、恐らくさっきの結婚式で私が祈ったせいだと思う。
きっとコレが知られれば大騒ぎになる事間違いない、この件に関しては本人達以外には秘密にしようと心に決めた。
気を取り直してストレージからワイングラスとフォークを取り出す。
私はグラスをフォークで叩いて注目を集め、ビビアナとセシリオの前にあるテーブルに長方形の平で大きいケーキをストレージから取り出して2人に長いケーキナイフを渡す。
「これからビビアナとセシリオに夫婦になって初めての共同作業をしてもらいます! ケーキ入刀!」
【結婚おめでとう お幸せに♡】と書かれた大きなケーキにナイフを入れる2人、普通ならここでカメラを持った友人達が前に来るが、カメラは無いもんね。
しかしそこは抜かり無く絵師を呼んでいたりする、孤児院出身の絵師がいるとマザーから聞いてトレラーガから呼び寄せたのだ。
肖像画が完成したら2人の寝室に飾ってもらおう、絵師の彼には式の間に先に食事を済ませてもらっている、じゃないと絵に集中してもらえなくなりそうだったし。
そして本当はファーストバイトもしようかと思ったのだが、アレって新郎からは「一生食べ物には困らせません」、新婦からは「一生美味しいものを作ります」って意味でケーキを食べさせるらしいんだよね。
お分かりだろうか、この2人にはそれが当て嵌まらない事を。
「はい、皆拍手~! 順番に並んで食べたい人は取りに来てね~」
拍手が鳴り止まない内に子供達はダッシュでケーキの元へ集まって来た。
男性陣は恥ずかしいのかあまり並んでないが、女性はやはり集まって来ている。
先にビビアナとセシリオの分を確保して残りを切り分けお皿にのせていく、そしてあっという間にケーキがテーブルから消えた。
「おーい、アイル、氷がなくなったぞ」
「このパンはもう無いのか?」
「あ~! リアナがジュース零した~!」
段々大人達にお酒が入り、子供達もお腹が膨れて集中力無くなって来たのでパーティー会場の庭が騒がしくなって来た。
気付くと予想通り招待客以外の人も結構混ざってるし…。
2時間後には子供達は撤収し、残ってるのは飲み足りない酔っ払い達だけになっていた。
「いや~、良い式だったな、貴族でもこんなに凄くはないんじゃないか?」
やり切った笑顔のバレリオが私の頭をワシワシと撫でながら言った。
「うん、我ながら頑張ったと思う。お皿を見てよ、綺麗に無くなったよねぇ、バレリオのラーメンも全部無くなったでしょ?」
「ああ、仲間達も手応え感じてやる気になってくれたぜ」
洗浄魔法とストレージを活用しながら片付けが終わる頃には『
ホセは酔い潰れておじいちゃんに背負われている、そんなホセにビビアナは慈愛の籠った眼差しを向けていた。
「あーあ、完全に潰れちゃったねぇ、ホセってば酔っ払ってめでたいって言いながらもう自分が守る必要ないのかって寂しそうにしてたよ。弟分としては複雑なんだろうね、ふふっ」
エリアス、それはきっと皆にバラしちゃいけない事だと思うの。
だけど今後ネタとして使わせてもらおう、私はそっと心のメモ帳に書き
その後、マザーに挨拶して家へと皆で帰る、私は浮かれているセシリオの背後にそっと近付きコソッと話し掛けた。
「セシリオ、私にも誓ったんだから誓いを破ったらどうなるか…一生知らずに終わると良いね」
ヒュッと息を飲み、壊れた人形の様にガクガクと首を縦に振るセシリオを見て私は満面の笑みを浮かべるのだった。
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