第352話 ビビアナの結婚式
「うわぁぁ、ビビアナお姉ちゃん綺麗~!」
「うん、こんな美人の花嫁なんて見た事ねぇよ!」
私達がウルスカに帰って来てから1ヶ月後、ビビアナはウェディングドレスを着て控室に居る。
孤児院の子供達達が順番に覗きに来てはビビアナの美しさを褒め称えていた。
「うふふ、皆ありがとう」
「さて、そろそろ移動しようか。私は先に式場で待ってるけど、説明した通りビビアナは5分遅くおじいちゃんと腕組んでゆっくり歩いて私達の所まで来てね」
「わかったわ、階段の手前でおじい様から手を離してセシリオの横に立つのよね」
「そうそう、じゃあ後でね」
本当はマザーとバージンロードを歩いてもらおうかとも思ったのだが、その話をしていた時におじいちゃんのケモ耳が卑怯な動きをしたのだ。
どうやらホセのお母さんの時はビルデオの昔ながらの方式だったのでバージンロードを歩いたりしなかったらしい。
ビルデオ自体があんまり賢者の文化に染まって無い感じかな?
賢者が近付かなかったからビルデオも賢者の文化を積極的に取り入れようとはしなかったのだろう。
きっと私の事は孤児院あたりからジワジワと広がって行くんじゃないだろうか。
そんな事を考えながら式場へと向かう、子供達が手伝ってくれたので飾り付けも完璧だ。
私は女神様の衣裳を参考に布面積を増やしたものを注文して、今日はそれを着ている。
一応それっぽい格好した方が招待客も喜ぶかなと思って用意したのだ。
私が式場に姿を見せると客が騒ついた、今日は交流のある町の人達や冒険者仲間と、王都に居るセシリオの騎士仲間も数人招待している。
控えめな性格のセシリオは普段から仲良くしていた人は5人だったので全員参加出来た。
休暇申請の理由が王様にまで伝わった為、王様からの祝いの品を届ける係として任命されたらしい。
なのでビビアナが着けているアクセサリーは王様からの祝いの品だったりする。
立派な装飾品だが、それらに負けない美しさのビビアナが凄い。
「新郎入場」
私が合図すると孤児院の子供2人が扉を開ける、そして緊張でガチガチになったセシリオが私の前まで歩いて来た。
そこかしこからクスクスと笑い声がしているが、きっとセシリオの耳には届いてないだろう。
セシリオが私の前まで来るとシスターの1人がハープを奏で始めた、結婚式の定番の曲らしい。
開かれた扉の前におじいちゃんと腕を組んだビビアナが現れ、ゆっくりとバージンロードを歩く。
ビビアナの姿に会場内にため息が漏れた、うんうん、ベール越しでもわかるくらい今日のビビアナは凄く綺麗だもんね。
そしてセシリオがヒュッと息を飲んだのがわかった、式の前に新郎が新婦に会うのは良くないと聞いた事があったから控室に入ってから2人がお互いの姿を見るのは初めてなのだ。
ビビアナもカッチリと髪をセットしたタキシード姿のセシリオを見て、蕩ける様な微笑みを浮かべている。
一部の人はおじいちゃんの事を誰だろうと不思議そうに見ていたけど、幸せそうなビビアナに気を取られてすぐに気にならなくなった様だ。
セシリオが手を差し出すと、おじいちゃんの腕から手を離したビビアナがセシリオの手をとった。
新婦側の客席の最前列、ホセの隣におじいちゃんが座るのを確認して私は式場を見回した。
半分はうっとりとビビアナを見つめ、半分は私が何を言うのかと好奇心いっぱいの目を向けている。
「こほん。これから騎士セシリオと冒険者ビビアナの結婚式を始めます、この式に異議のある方はいますか? いるのならば今すぐ名乗り出なさい、そして名乗り出ないのであれば一生その口を
咳払いをしてからうろ覚えながら結婚式のお決まりの言葉で始めた、皆は初めて聞いたのか、驚いた様な顔で式場はシンと静まりかえっている。
誰も言葉を発さない事に私は満足気に頷く。
「異議はありませんね? ではセシリオ、あなたは残りの人生いついかなる時もビビアナを愛して共に幸せになる努力をする事を女神様とビビアナと私に誓いますか?」
「はいっ、誓います!」
「ビビアナ、あなたもセシリオを愛し続けて残りの人生を共に幸せになる努力をする事を女神様とセシリオに誓いますか?」
「はい、誓います」
誓いの言葉と共に艶やかに微笑むビビアナに鼻の奥がツンとした、ああ、ビビアナは本当に結婚しちゃうんだな。
絶対幸せになって貰いたい、女神様、どうかこの2人の前途に祝福を。
心の中で女神様に語りかけると、「わかったわ、二人に祝福と加護を授けましょう」脳裏にウィンクする女神様の姿が見えた。
今は動揺しちゃダメだ、言ったら大騒ぎになるだろうから後で報告しよう。
「結婚証明書にサインを」
平静を装いそう告げると、私の前にある小さなテーブルに置かれた結婚証明書に2人がサインをする。
そして一度それを皆に見える様に掲げて見せると拍手が起こった。
「これで2人の婚姻が成立しました。では、皆の前で誓いのキスを」
セシリオが震える手でビビアナのベールを上げ、緊張のあまりキスする前に深呼吸を繰り返した。
そしてそんなセシリオにビビアナが小さく笑い、次の瞬間ネクタイを掴んで引っ張り口付ける。
会場はビビアナらしい行動に笑いが起き、歓声と拍手に包まれた。
おじいちゃんと『
「新郎新婦退場! ……『
これからガーデンパーティーになるので先に2人には着替えて貰う為、退場を促す。
私が幻影魔法でバージンロードに花を降らせると客席から歓声が上がり、温かい皆拍手で見送られながらビビアナとセシリオは式場を後にした。
「では休憩を挟んで庭でパーティーです、全て食べ尽くすつもりで楽しんでいって下さい。すぐに準備するので呼びに来るまでは庭に出てはいけませんよ?」
さっきよりも大きな歓声が上がる、既にビュッフェ形式で賢者の料理が食べ放題という噂が流れていたせいだろう。
私とバレリオはこの後の忙しさを覚悟しながら準備へと向かった。
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