第350話 リカルドのお迎えで
「アイル様、お待ちしておりました。そちらの方は?」
門の前で息を整えていたら家令のおじ様が出迎えてくれた。
「仲間のホセの身内です、タリファスに来たこと無いから一緒に来たんですよ。ね、おじいちゃん」
「隠居した身でビルデオから遊びに来たブラウリオ・デ・チャルトリスキだ」
おじいちゃんがにこやかに名乗ると、家名がある事で貴族だとわかったのだろう、家令は軽く目を見張ってから頭を下げた。
「ようこそいらっしゃました。では皆様お待ちかねですのでご案内致します」
え? リカルドじゃなくて皆様がお待ちかねなの!?
訳がわからないまま案内されるままについて行くと、サロンにシドニア男爵一家が勢揃いしていた。
「来たわね! 待っていたのよ、座ってちょうだい。そちらのおじい様もこちらへどうぞ、リカルドからお話は伺ってるわ、私はリカルドの母です」
男爵が口を開くより早く男爵夫人が歓迎してくれた、これは貴族の対応としてアウトな気がするが、半分身内みたいなものだから良いのだろうか。
おじいちゃんが苦笑いしているので本来ならアウトなのだろう。
「すまないね、アイルが先日来たと知って妻と娘達が
男爵の言葉にチラリとリカルドを見ると、申し訳なさそうな苦笑いを浮かべていた。
「すまないアイル、最初はアイルに色んなドレスを着せたいと言っていたのを話すだけという約束で落ち着かせたんだ」
どうやらリカルドは頑張ってくれていた様だ、しかし母と妹達の勢いに負けたというところか。
「ビビアナの結婚式の準備があるので長居はできませんが、少しだけなら」
「嬉しいわ! アイルさん、私の隣に座って!」
「聞きたい事が色々あるの、まずは今恋人や好きな人はいるのかしら!?」
リカルドの妹達に挟まれ
「あっ、そうだわ! いつの間にかお父様だけアイルさんの事を呼び捨てにしてるのはズルいと思うの。ほら、わたし達はもう家族同然でしょ? お互い名前だけで呼び合った方が良いと思うの、どうかしら?」
「いいですよ」
なかなかの勢いに
せめてリカルドだけでもこっちへ来て欲しいところだが、1度もこちらを見ようとしない。
さては巻き込まれるのが嫌で目を合わせない様にしているな!?
男爵とおじいちゃんは貴族同士だからか凄くウマが合う様だ、男爵家女性陣の話し声のせいで何を話しているか聞こえないけど、笑顔で楽しそうである。
それに対し、こちらはリカルドから聞いたというエンリケの話から何故かエドの事まで知っていてどう思っているのか根掘り葉掘り聞かれた。
これはちょっとウルスカの家に帰ってから私がリカルドを尋問すべきだと思う。
「で? そのエドガルドという方の事はどう思ってるの?」
どうしよう、見た目は好みだけど変態だから守備範囲外ですなんて言えないし…。
「え~っと…、あっ、そうだ! そんな事より先に知っておいた方が良い事があるんです! 男爵にはその内王様からの報せが来ると思うので」
王様、と言った途端に男爵がこちらを向いた。
「アイル、一体どんな報せが来ると言うんだ?」
「リカルドは何も言ってないの?」
「ああ、事が事だけに独断で話して良いかわからなかったからな」
「なんだ、リカルドは知っていた事なのか?」
男爵は片眉を上げてリカルドを見た。
「ええ、まぁ…」
「今頃教会本部から各国の王様に連絡が行ってるはずなので貴族を招集する手続きに王宮は大忙しだと思いますよ。その内容なんですけど…」
さっきリカルドは私を助けようとしてくれなかったけど、私は男爵の追求からリカルドを助けてあげた。
これで更にリカルドを責める理由が出来た、ふふふふ。
そんな事を考えながら男爵家の人達に教会本部に連絡した内容を教えてあげた。
「何と…! それが本当ならば娘達の結婚を早めた方が良いかもしれんな、魔法の能力が
「そうね、結婚式のドレスも来週には仮縫いですから姉妹揃って式を挙げるという手もありだと思いますわ」
男爵の提案に夫人も頷いた、当の本人達は顔を赤くしながらモジモジとしている。
あ~…、もしかして子作りの事を考えちゃったのかな?
貴族であれば気軽に付き合ったり別れたり出来ないから
その点男の人は娼館に行って実践で学んだり出来るんだから狡いよね、女性はそういう事って親から習ったりするんだろうか、………そんなの精神的にキツ過ぎる。
さすがにリカルド達の前では聞けないから、もうちょっと仲良くなったらコッソリ聞いてみよう。
地球と夜の技の違いとかあったりするのかちょっとだけ、ほんのちょ~っとだけ気になる。
その内娼婦の知り合いとか出来ないだろうか、お酒を飲みつつそんな話を聞いてみたい。
「アイル? 何だか
「えっ!? え~と、その、こっちとあっちの技術の違いってどの程度あるのかな~って」
「ふぅん?」
嘘を吐く時は真実を混ぜると良いって聞いた事あるから『何の』技術とは言わずに答えると、よくわかって無いのかリカルドは首を傾げた。
「そろそろ戻らないと! お邪魔しました」
「また遊びに来てちょうだいね?」
「はい! 結婚式に呼んで貰えればお祝いに駆けつけますよ」
「ふふっ、じゃあ1年以内に会えるわね」
別れ際も男爵夫人が中心となって挨拶を交わし、私達は町の門を出て転移した。
家に戻り、早速リカルドを尋問しようとしたら、リカルドは私の耳元に顔を寄せて揶揄う様に囁いた。
「アイルもそういう事に興味はあるんだな」
その言葉で固まってしまった私は、リカルドの尋問を断念した。
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