第281話 男達のパジャマトーク

【三人称です】


「ところでエンリケはどうしてアイルにあんな事したんだ?」



「あんな事?」



 ホセがアイルにモフられている頃、『希望エスペランサ』の男性陣は部屋で各自ベッドに入ってパジャマトークをしていた。

 リカルドに問われてエンリケはコテリと首を傾げる。



「心臓の音の確認した事…というか、胸に顔を埋めた事じゃない?」



 本気でわかってなさそうなエンリケにエリアスが助け舟を出す。



「ああ! 昼間の事か!」



「そうだ」



 やっとわかったエンリケはパンッと手を打ち鳴らし、リカルドはエンリケの真意を探る為、感情を出さずに頷いた。



「あれはね~、ああすればアイルが怒ってくれるかなぁと思って…」



「「は!?」」



 モジモジと指先を合わせて恥ずかしそうに言うエンリケに、2人は一瞬エドガルドの様に特殊な性癖でも持っているのかと驚きの声が出てしまった。



「ほら、アイルっていつも優しいでしょ? だけど皆に甘えたり怒ったりしてるのに俺にだけそういうのして来ないから、家族というには遠慮があるというか…、皆に比べて距離を感じてたんだ。で、甘えてもらうのは難しそうだけど、怒らせるならホセの真似するのが1番かなぁって…、思った通り成功したしね」



「「…………ッ」」



 ニコニコと微笑みながら言うエンリケに、リカルドとエリアスは思わず吹き出しそうになったのをこらえた。



「ま、まぁ…それが狙いというのなら成功していたな。頬を引っ張られていたし、ククッ」



「今ホセが居なくて良かったねぇ、居たら凄く不機嫌になって…っ、ぷふっ」



 しゃべると堪えきれなくなるのか笑いを漏らす2人、しかしこれで苦笑いしつつもアイルに抵抗しなかった理由がわかった。



「うん、結構遠慮なく引っ張られたからちょっと痛かったけど、ちゃんと俺も家族として扱ってくれてるんだとわかったから嬉しいんだ」



 ニコニコと心の底から嬉しそうにエンリケが笑った。



「そういや会ったばかりの頃はビビアナとホセに懐いてる感じだったが、いつの間にか同じくらい馴染んでいたな」



「いやぁ、リカルドに対してはあの時からでしょ、初めて一緒にお酒飲んだ日っていうか翌朝かな」



「ははは、確かにそうかもしれないな」



「えぇ~? 俺も一緒にお酒飲んだのに変わらなかったよ?」



 納得出来ないと言わんばかりにエンリケは眉間に皺を寄せた。

 そんなエンリケにエリアスはニヤニヤと笑いながらアイルの失態を暴露する。



「……って、僕にまで暴言…って程でも無いけど文句言ったりしてね、最終的にリカルドの服の中に入っていって寝ちゃったんだよ」



「そうそう、しかも朝起きた時にはよだれが俺の胸元とアイルの頬に付いてたみたいでな、目を覚ましたと思ったら自分の袖で俺と自分に付いた涎を拭いて無かった事にしようとしてたぞ」



「え~、あの時アイルそんな事してたんだ!? あはははは」



「はははっ、恥ずかしいところを見られて開き直ったってとこかな、思った以上に面白いね。エリアスは何が切っ掛けで仲良くなったの?」



 リカルドとのエピソードが面白かった分、期待した目でエリアスに話を求める。



「う~ん…、僕の場合は普通に揶揄からかって遊んだり、料理の手伝いしてたら自然にかなぁ」



「ぷっ、やっぱり怒らせるのが1番早く仲良くなるっていうか、遠慮が無くなるんだね。アイルはわかりやすくて良いねぇ、皆が大事にしてるのがわかるよ」



「目を離すと何をしでかすかわからないっていうのもあるがな」



 リカルドは苦笑いして肩を竦めた。



「本人の意識と関係無く厄介事に巻き込まれる事も多いもんね、……本人が原因の時も普通にあるけど」



 その後、アイルの話の延長でホセやビビアナのやらかしも暴露するリカルドとエリアスだった。





[女性部屋 side]



「あら、アイルったらもう寝ちゃったの? 相変わらず誰かと一緒に寝ると早いわね」



 隣に温もりがある方が安心する為、早々に眠ってしまったアイルの寝息を聞いてビビアナが笑った。

 モソモソとアイルの腕の中から抜け出し、アイルが熟睡しているのを確認してホセは獣化を解いた。



 ホセはベッドから出てサイドテーブルに置いてあった自分の夜着…エドガルドの屋敷から貰って来たパジャマを着直す。



「ふふっ、それにしてもホセも大きくなったわよねぇ…」



 室内の常夜灯じょうやとうの薄明かりの中、ホセの姿を見てビビアナがしみじみと呟く。

 ビビアナはホセが孤児院に来た日には既に入っていたので物心つく前から共に過ごしている。



「そりゃそうだろ、いつまでもガキじゃ「子供の頃はこーんなだったのに」



 返事を求めていた訳じゃ無いらしく、ホセが話している途中でビビアナは人差し指と親指をほんの数㎝離した。



「どこの話してんだよ!」



「シッ! アイルが起きるわよ、目の前でブラブラさせるホセが悪いんじゃない、ふふふ」



 思わず怒鳴ったホセに指を1本立てて黙らせると、シレッと自分を正当化した。

 子供の頃から一緒にお風呂にも入り、家で獣化を解くたびに裸を見ているので、ホセの獣人としての感性も手伝ってビビアナに裸を見られる事も、ビビアナがホセの裸を見る事に対してお互い何の恥じらいも無い。

 どうせ口では勝てないと経験上知っているホセは諦めた様にため息を吐くと、ドアノブに手を掛ける。



「おやすみ」



「ふふっ、おやすみ」



 少し拗ねた子供の頃と変わらない表情で部屋を出て行くホセを見ながら、ビビアナは口元をゆるめて目を閉じた。




◇◇◇


まだ評価をされていなくて、こういうベタな下ネタギャグをアリだと思う方は是非★〜★★★で評価をお願いします( * ´ 艸`)


キャッチコピーにも書きましたが、「第3回ドラゴンノベルス新世代ファンタジー小説コンテスト」の中間選考を通過しました!

これも本作を読んで応援して下さってる皆様のお陰です、ありがとうございます(*´∇`*)

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