第270話 海より深く反省
船室で正座する私の前には
騒ぎで起きてきたがビビアナとエンリケは私に甘いという事でカリスト大司教達の気を逸らす為にもここには居ない。
「今オレ達が請け負ってる依頼は何だ?」
「カリスト大司教の護衛…」
「そのカリスト大司教を放ったらかしにして船から離れたお前は何をしてたんだ?」
「イ………魔物の……回収」
「何でだ?」
「……………」
「な・ん・で・だ」
「………食材だったもん」
「バカかお前は! そのせいで1人海に取り残されるところだったじゃねぇか! もし船の方にもう1体出て来たらどうするつもりだよ!」
「そうしたらすぐに戻ったもん! ちゃんと大丈夫だったからいいじゃない!」
「お・ま・え・は、反省してねぇみてぇだな?」
ホセの大きな手で頭を掴まれ、その指先に力が込められる。
「痛い痛い! ごめんなさい!! 反省します!!」
私の悲鳴の様な声にやっと手を離してくれたホセ、痛みに涙目になって頭を抱えていると苦笑いしながらリカルドが口を開いた。
「ホセがこれだけ怒ってるのはアイルを心配したからなんだぞ?」
「へ?」
「考えてもみろ、俺達は一旦船内に退避しただろう? その間に姿が見えなくなってたから、アイルが魔物に海に引き摺り込まれたんじゃないかって焦ったんだぞ?」
「そうだよ、アイルが海の中で魔物に食べられてるんじゃないかと海に飛び込もうとしたくらいには心配したんだよ? エンリケが探索魔法使って大丈夫だって言うのがあと少し遅かったら実際飛び込んでたよ、ホセが」
「エリアス…っ!」
さらりと恐ろしい事を言うエリアス、そして続く言葉に驚かされた。
怒りなのか、照れなのか、顔を赤くしたホセがエリアスを
「あはは、ちゃんと言っておかないとどれだけ心配掛けたかアイルはわからないらでしょ?」
「ごめんねホセ!! 今凄く反省した! 本当にごめんなさい!!」
「てめっ、今って事はさっきまでは何だったんだ!」
立ち上がって抱き着いた私に怒鳴ってるけど、無理に引き剥がそうとはしなかったのでギュッと抱き締める。
魔法も使えないのにあの大海原に飛び込むなんて凄く怖くて勇気のいる事なのに、ホセは私を探す為に飛び込もうとしてくれたんだと思うと申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちでいっぱいになった。
そうだよね、いきなり居なくなってたら海に落ちたとか、引き摺り込まれたと思っちゃうよね。
それなのに私ったら必死に私の名前を呼んで探してる皆に満面の笑みで飛んできて「材料がたくさん手に入ったからイカ
咄嗟に立ち上がって抱き着いたものの、麻痺してた足がじわりと痺れてきた。
今ホセに動かれたらヤバい、逃がさない様に抱き締めた腕に力を込める、しかしそこで悪魔のひと言が放たれた。
「アイル、足痺れてるんじゃない? 大丈夫?」
にこにこ笑顔でそう言ったエリアス、完全に面白がってる!!
嫌な予感がしてそっとホセを見上げると、ニタ~と表現すべき悪い笑みを浮かべていた。
「さー、説教も終わったし解散だな」
何その棒読み!
ホセが無遠慮に一歩踏み出した、当然バランスを取る為に私も一歩…。
「うぐぅっ」
無理! 歩くの無理!!
ホセから手を離して踏ん張ると、ビリビリと太腿まで痺れが走り思わず
「どうした? もう部屋から出てもいいぞ? ビビアナ達と交代して寝かせてやろうぜ、な?」
凄く良い笑顔で私の肩を抱いて歩かそうとするホセ、2人目の悪魔がここに居る!
リカルドに助けを求めて視線を送るが、リカルドは苦笑いを浮かべて肩を竦めるだけだった、どうやら甘んじて受け入れろという事らしい、それだけリカルドにも心配掛けたって事なんだね…。
よし、自力で何とかしよう。
「『
痺れを治す為に正常化の魔法を使おうとしたらホセの大きな手が私の口を塞いだ。
「させねぇよ? 反省してるならそんなズルい事出来ねぇよなぁ?」
「んグ~ッ! ンムムムムムッ!!」
口を塞がれたまま痺れが切れるまで引きずる様に歩かされ、ぐったりとしたままカリスト大司教達と船室で合流した。
「アイル様、どうされましたか!?」
ぐったりした私をカリスト大司教が心配してくれた、しかしまさか説教と足の痺れでぐったりしてますなんて言えない。
「大丈夫、ちょっと疲れただけだから。な、アイル?」
「そ、そうそう、ちょっと大物だったから疲れちゃったかも…」
屈辱だったがニヤニヤしながら言うホセの話に合わせた、ビビアナは状況を察しているのかクスクス笑っている。
「ビビアナとエンリケは休んでくれ、周辺に大きな魔物は居ないと確認したから大丈夫だ」
「わかった」
「それじゃあ後は頼んだわね」
リカルドに言われて2人は自室へと戻って行った、様子を見に行くというカリスト大司教について行くと、甲板もすっかり落ち着きを取り戻した様だ。
私の姿を見つけて船長が駆け寄って来て私とその護衛依頼者であるカリスト大司教にお礼を言った。
確かにカリスト大司教が居なきゃ私はここに居なかったもんね、その場合今後この航路を達船はいつ襲われるかわからない恐怖に怯える事になっていただろうし。
案外これは女神様のお導き…だったりして。
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