第214話 制御不能な好奇心(エリアス&ビビアナ)
「じゃあ今日の午前の御者はホセ、頼んだわよ!」
「おぅ」
「馬で移動はリカルドとセシリオでいいかい?」
「ああ」
「はい」
何だか今日はビビアナとエリアスの機嫌が良い、一体どうしたんだろう。
昨夜泊まった宿は普通だったし、2人してこんなに機嫌が良い理由がわからず首を傾げた。
ビビアナはそんな私に腕を絡めていそいそと馬車に乗り込む。
「ビビアナ、何かいい事でもあったの?」
「うふふふ、いい事というか、楽しい事はこれからかしら~?」
「そうそう、とりあえず馬車が動き出してからじゃないとね…」
エリアスもビビアナとアイコンタクトをとってニンマリと笑った。
外からリカルドの出発の合図が聞こえて馬車は動き出し、私の隣をキープしていたエドはビビアナに対面の座席に押しやられ、私の両隣には上機嫌のビビアナとエリアスが陣取った。
「え、あの…、どうしたの?」
「アイル、何かアタシ達に話す事無い?」
「話す事? う~ん…」
馬車の天井を見つめながら何かあったかなと考えを巡らせたが思いつかない。
「ホセの事とかホセと何かあったとかホセとの仲が変化したとかさぁ」
ヒソヒソと話しているのは御者をしているホセに聞かれない為なのだろう、しかし車内に居るエドには聞こえているのでエリアスの言葉にエドが身を乗り出した。
「アイル、アイツと何かあったなんて事は…」
「えぇ!? 無い! 何にも無いよ!? ……無いよね?」
ここ最近色んな事があってちょっとした喧嘩とかはあったかもしれないけど、エドが前のめりになる様な事は無い、はず。
「アイル、最後に酔っ払うまでお酒を飲んだのはいつだい?」
「えぇ~? タイチとアデラの結婚式の夜かな?」
答えると私の頭上でビビアナとエリアスがまたアイコンタクトをとって頷き合った。
「え? 何!? どうしたの!?」
「アイル? もし、もしもよ? ホセがアイルの事好きって言ったら?」
「な…ッ」
エドが立ち上がろうとしたが、ビビアナにビシッと手の平で制されて大人しく座り直した。
ホセとは喧嘩もするけど仲良しだと思ってるから好きと言われれば…。
「それは素直に嬉しいけど?」
「違う! 違うんだよアイル、仲良しの好きじゃなくてエドガルドみたいに独占欲丸出しの恋愛として好きって事だよ!?」
エリアスがズズイと前のめりになって熱弁して来た、近い、顔が近いよ。
「無い無い、無いでしょ」
「わからないじゃない、とりあえずもしもよ、も・し・も」
「ああ、そうじゃなくて、ホセを恋愛対象として見るって事が無いって事」
「「えっ!?」どうしてだい!?」
エリアスとビビアナは驚いた顔をしたが、エドはホッとした様で座席に深く座り直した。
「考えてもみてよ、エリアス達は
「ふふっ、なるほどねぇ」
「願い下げ…」
「自分の欲の為だけに…、願い下げ…(ボソボソ)」
ビビアナは納得した様だが、エリアスは何やらショックを受けていた、普段モテるからナシと言われたのがショックなのだろうか。
ついでに何故かエドまで顔色が悪くなってなにやら呟いている。
過去の行いを考えたらしっかりバッチリとエドも当て嵌まるもんね。
「ところでどうしていきなりそんな事言い出したの?」
「えっ!? いやぁ、何だかホセの様子がいつもと違う気がしてさ、あはは…は」
「確かに今日は妙に私の邪魔をして来たな…」
皆が言う程違うかなぁ、もしかしてエドが移動中昼食に私の手料理食べたら何だか前より距離が近くなってるからガードしてくれようとしてるのかも?
それを皆勘違いしてるだけなんじゃないかな、しかしそうでないと翌日わかる事になる。
意識してホセの行動を観察したら確かにおかしいのだ、まずいつもより距離が近い。
エドと2人で会話してたら確実に混ざりに来る、それなりにエドと仲良くなって来たエリアスが2人で話してても混ざりに行かないのに。
「どうしたんだアイル?」
そんな訳で翌日の昼食タイムに私はエドともホセとも離れてリカルドの隣に座っている。
「安心と信頼のリカルドだから…」
「はは、何だそれ。まぁ信頼してくれてるのは嬉しいがな」
エリアスだと面白がってエドやホセとも一緒に過ごさせ様とするのが目に見える、ビビアナはセシリオとラブラブなので邪魔したくない、そんな訳でリカルドの隣をキープ。
ちなみに私は皆の分の盛り付けをしているので皆が食べ始めてから適当な場所に座って食べる、エドがわかりやすく場所を空けてくれているのはスルーした。
いったいホセに何があったんだろう、午後からはエドが御者だから邪魔されずに問いただせる。
午後から馬に乗るのはビビアナとセシリオ、エリアスが車内にいるのがちょっと気になるけどこの際仕方ないよね。
「ねぇホセ、何かあったの? 昨日から妙に私に構ってない? タイチの結婚式の夜に私がホセに何か言ったりした?」
「ッ!? お前何か覚えてんのか!?」
「って事はやっぱり私が何かやらかしたの!?」
わかりやすく動揺したのでの問い詰める、エリアスわくわくした顔するのやめて。
「あ、いや、大した事じゃねぇから気にすんな」
そんなあからさまに何かありましたと言わんばかりに目を逸らされて気にせずに居られる訳が無い。
「誤魔化されないよ!? あの夜何があったの!?」
顔を挟んで無理矢理こちらに向ける。
「バ…っ、クソッ、わかったよ! あの夜酔ったお前が祝いの席くらい自分も酔ってもいいだろって泣いて怒ったから誰かがついてたらって条件で皆にも許可貰ってやるって約束したんだよ! だけどお前が忘れてるみたいだったから無かった事に…したんだ…」
気まずさからかホセは再び目を逸らした。
どうやら罪悪感から私を過保護気味に構っていた様だ。
「ふ、ふふふ、と言う事はこれから祝い事の時は制限無しって事で良いのね!?」
「チッ、皆にも聞かなきゃなんねぇけどな」
バッと振り返って期待を込めた目でリカルドとエリアスを見ると苦笑いしつつ頷いてくれた。
「祝い事の時くらいはな…」
「確かに可哀想かもね」
「やったぁぁ~!! ホセ大好き!」
「ああ、あの夜もそう言ってたよ」
喜びのあまりホセにムギュッと抱き着いた、いつもなら適当に引き剥がされるが、申し訳ないと思っているのか抱き締め返してくれた上にヨシヨシと頭を撫でてくれた。
「全くもぅ、ホセが紛らわしい態度するからビビアナとエリアスが私の事好きになっちゃったんじゃないか~とか言い出してたんだからね!」
「ねぇよ!」
ヨシヨシと撫でていた手がワシャワシャと乱暴に髪を乱した。
「だよね~、あはは」
次の休憩でビビアナにも伝えて飲酒の許可を貰って喜びのハグでマシュマロ乳に埋もれてている時、ホセがため息を吐きながら頭を抱えていた事に私は気付かなかった。
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