第193話 デンカーズ5
フードを被ったまま貴族っぽい偉そうなおじさんの手前2mまで近づいて行くと、おじさんは私を見てあからさまに顔を顰めた。
「ふん、ここは質の良い宿と聞いたがこの様な怪しげな輩も出入りさせているのか? 向こうへ行け」
従業員が「あっ」という顔をした、ふふふ、怪しげな輩ねぇ?
向こうへ行けって言ったのはあんたですからー!
ギターを持った着流しの懐かしい芸人が頭を過った。
「賢者を呼んでたから来てあげたのに…じゃあ向こうへ行くよ、その代わり二度と呼び出さないでね」
「な…っ、ハァ!?」
おじさんは私と従業員を見比べ、コクコクと頷く従業員の姿にサッと顔色を変えた。
でも知らないもんね~、向こうへ行けって言われたしィ~。
「け、賢者殿!? 知らなかったとはいえ申し訳ない! 私は王宮からお迎えに「あーあーきーこーえーまーせーんー」
凄く厄介なキーワードが聞こえた気がしたので咄嗟に両手で耳を塞いで階段へ向かおうとした、が、方向転換しようとしたらフワリと両肩を包み込む様に手が置かれた。
「ふふ、待ち切れなくて来てしまったよ、賢者殿がこの様に可愛らしい方だったとは。お迎えに来て正解だったね」
見上げると年齢は同じくらいの色気ムンムン美形が微笑んでいた、女慣れしてるちょっと遊び人な感じ?
色気と美形のコラボに対しビビアナで耐性がある私はフード被ってるのに可愛らしいとかちゃんと見ずに適当に社交辞令言ってるって自白してる様なものデスヨ、などと思っていた。
伊達に毎日美形に囲まれてないもんね。
「…………誰?」
きっと御令嬢達なら頬を染めるのがスタンダードな反応なのだろう、私のリアクションに驚いた様に軽く目を見張って可笑しそうに笑った。
「はは、失礼。私はこの国の第6王子カンデラリオという、賢者殿とは同い年の筈だよ。父上の命令で賢者殿のお迎えを任されたんだが役得だったようだね」
おっと、王子様直々に迎えに来られては突っぱねる訳にもいかないか、歳が近いから仲良くなって引き留めようって魂胆かな?
仕方ないのでフードを下ろして自己紹介をする。
「パルテナのAランクパーティ『
「すぐに出発と行きたいところだけれど準備もあるだろう、明日の朝一緒に王宮へ出発するから準備しておいてくれるかな?」
ニコニコしながら押しが強い、聞いてる様で明日出発は決定なのね。
「あの、仲間にも相談しないといけませんし、王都がここからどのくらい離れているのかも知らないんですが。それにまだ今回の報酬も受け取っていないのでカタヘルナを離れる訳にはまいりません」
そんな事言われても困ります、という事を全面に押し出してお断りしてみる。
とりあえず距離が近くて見上げるのに首が痛いから離れて欲しい。
そ~っと離れようとした時、宿屋の入り口にキラキラしい一団が入って来た。
「中々戻って来ないと思ったら…、賢者殿が居たのなら報せてくれれば良いだろう。気が利かないな」
カンデラリオ王子をインテリ眼鏡にした様な人物が気が利かないと言いつつ最初に大きな声を出していたおじさんをジロリと睨んだ。
「も、申し訳ありません!」
「まぁいい、ここでこうして賢者殿と出会えた事だしな。賢者殿、私はこの国の第5王子でエウラリオと言う、そこのカンデラリオとは同母の兄にあたるんだ、どうぞよろしく」
エリアスより腹ぐ…頭良さそうなエウラリオは、私の手を取ると指先に触れるか触れないかのキスをした。
ぅおおおお、王子様モーション!!
エドにお嬢様扱いしてもらう事はあるけど、コレは無かった気がする!
「こういう時は年長者からじゃないのかな? はじめまして賢者殿、私は王孫のアレハンドロだ、皇太子の子供で歳は18、よろしく」
優雅に、そしてさり気なくエウラリオから私の手を奪い取り、同じ様に口付けた。
線の細いカンデラリオやエウラリオと違ってアレハンドロは美丈夫タイプ、精悍な顔つきで部下達から信頼されてるという自信が顔に現れている。
っていうか、「おうそん」なんて韓流時代劇以外で初めて聞いたよ、面倒だから全員「殿下」で統一しちゃっても良いよね。
「兄上、私の事も紹介して下さらないと。私はロドルフォ、兄アレハンドロとは異母兄弟になります、歳は17」
これまた正統派イケメン王子という、タリファス公爵家のクロードと同じタイプだ。
キラキラ一団の最後の1人はロドルフォの後ろからおずおずと出て来てはにかむ様に微笑んだ。
「僕はフェデリコと言います、アレハンドロ兄上とは同母で、歳はカンデラリオおじ上のひとつ下で15歳です」
あ…、あざとい!!
童顔だし可愛い歳下の男の子アピールなんだろうけど、腹黒さが垣間見えてたよ!?
おじ上って言われて肩に置かれたままの手がピクッてなったもん。
一気に言われて名前も覚えたか怪しいし、一旦帰って貰って名前と関係の一覧表つくらなきゃ。
とりあえず仲間が全員揃わないと相談も報告も出来ないからという事で帰ってもらった。
王族はダンジョンに腕試しで来る事もあるので街に邸宅があるらしい。
相談すると言っているのに明日の朝迎えに来ると言い残して行ったので報酬とかギルドに無理言って精算させるのだろうか。
とりあえずビビアナとホセに説明する為にも殿下達の一覧表を先に作る事にした。
エウラリオ(眼鏡・第5王子)17歳
カンデラリオ(お色気・第6王子)16歳
以上同母
アレハンドロ(美丈夫・王孫)18歳
フェデリコ(童顔・王孫)15歳
以上同母、皇太子の子
ロドルフォ(正統派王子・王孫)17歳
皇太子の子
エリアスとリカルドが帰って来てから皆に一覧表を見せながらあった事を説明すると、4人共床やテーブルと仲良しになってしまった。
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