第189話 アイルを求める勢力(?) その2
トレラーガの冒険者ギルドに通信が入った、ギルドマスターはカタヘルナからの報告を聞いて耳を疑った。
既に
「……は?」
『ですから、大氾濫が終息したんです。他のギルドにも報せなければならないので失礼します』
カタヘルナのギルド職員は事務的にそう告げると通信を切った。
トレラーガのギルマスは驚きのあまりポカンとしたまま時間を無駄に過ごした。
どれだけそうしていたか分からないが、再び通信が入った事により正気を取り戻す。
通信の相手はウルスカのギルマス、ディエゴだった。
いつもなら適当な挨拶と軽口を叩き、要件を言うが、この時は何やら思い悩んでいる様子で重い口を開いた。
『お前の事だから薄々勘づいていたとは思うけどよ、とうとう『
「は? え? 何言ってんだ!? 賢者!? あの…エドガルドさんがご執心のアイルが!?」
『何だ、気付いてなかったのか、だがもうカタヘルナで攻撃魔法やら治癒魔法やら派手にやらかしたらしいからお前の耳に入るのも時間の問題だろ。ったく…、バレた事をガブリエルが知ったらまたうるせぇんだろうなァ。セゴニアに取られ無い様に迎えに行くとか言い出しそうだぜ』
「ちょ、ガブリエル様に言うのはちょっと待ってくれ、エドガルドさんも同じ事言いそうだし、それなら一緒に行って貰った方が安心だからな。この街はもうエドガルドさんが護ってると言っても過言じゃないんだ、何かあったら困る…」
『チッ、わかったよ。じゃあそのエドガルドとかいうヤツに知らせたらまた連絡してくれ、忘れてる様なら明後日にゃガブリエルに連絡しちまうからな!』
「ああ、わかった、戻って来たらすぐにでも連絡するさ」
トレラーガのギルマスは暫く頭を抱えていたが、意を決した様に立ち上がるとエドガルドの屋敷へと向かった。
そして屋敷の門衛に大氾濫と『希望』のアイルについての情報を持って来たと伝えると、すぐに客間へと通された。
屋敷で働くには少々幼いと思える少女が香り高い紅茶を淹れてくれ、口を付けようと思った瞬間乱暴にドアが開かれた。
息を切らせたエドガルドが大股で部屋に入って来てドカッとギルマスの向かいのソファに座る。
すぐに報告しろとエドガルドの目が訴えていたので、喉を潤すのを諦めてカップをソーサーへ戻した。
「先程ダンジョン都市カタヘルナから連絡が入りまして、大氾濫が終息したそうです」
「そうか…! ならばアイルもすぐに帰って来るな!」
喜色を浮かべるエドガルドにギルマスはおずおずと言葉を続ける。
「それが…、アイルは暫く戻って来れないかと…」
ギルマスの言葉にピクリとエドガルドが反応した。
「それはどういう事だ?」
Aランク冒険者でもここまでの威圧感は出せないんじゃないかと思える空気にギルマスはゴクリと唾を飲み込んで口を開く。
「アイルは賢者だったとかで、攻撃魔法や治癒魔法を使い活躍した様です。なので…その…、褒賞の受け渡しもそうですがセゴニア側があの手この手で引き留めようとするかと…」
ギルマスが説明しているとエドガルドはカッと目を見開いた、両膝に肘を置き、前屈みで組んだ手にグッと力が入り、その指先が白くなる。
「ふ、ふふふ、流石私のアイル、只者では無いと思っていたが賢者だったとは…。だからあの時も簡単に私の意識を刈り取ったんだな…、こんなに心惹かれるのも無意識に実力を感じていたんだろう。まぁ…、牽制ついでに昔の縄張りに姿を見せておくのも一興か…」
「あ、あの、エドガルドさん?」
「ああ、すまない、アイルが問題無く帰って来れる様に迎えに行こうかと思ってね」
さっきの笑みは見間違いだったのかと思う様な爽やかな笑顔で話すエドガルド、その言葉に我が意を得たりと頷くギルマス。
「それならば今
「ふむ…、あの時のエルフか…」
(アイルに擦り寄っていたのは気に入らないが、いざとなったらあいつを囮にしてアイルを連れ帰るという手もありだな、アイルに認めて貰いたがっていたから煽れば色々役に立つだろう)
昔はどれだけ気に入らない相手でもにこやかに対応して協力する事もあった、目的の為に己の感情をコントロールする事はエドガルドにとって造作も無い事だ。
ガブリエルを使えると判断したエドガルドは早速行動に移る事にした。
「ではすぐに準備をしてエスポナに向かおう、そのエルフとの連絡は冒険者ギルド経由でいいのか?」
「はい、ではガブリエル様にはこちらから連絡しておきます。先走って乗り込まないか心配ではありますが…」
「フッ、確か伯爵なのだろう、ならば王宮へ赴いて正式なパルテナの使者として許可を王様から頂くように言っておけば良い。もしも口実を作ってアイルを王宮に軟禁をしていたとしても会いに行ける様にな」
「な、なるほど…! その間にエスポナへ向かうのですね、その様に伝えます!」
ギルマスが帰るとすぐにエドガルドは遠出の準備を始めた、アイル達がタリファスに行った時に歯痒い思いをしたので、既にアルトゥロには仕事の代行が出来る程度に教育してあるのでひと月やふた月程度であれば留守にしても問題は無い状態だった。
エドガルドは引き止めるアルトゥロや他の部下達を振り切り、伝令の早馬も真っ青な速度で単身エスポナへと急いだ。
◇◇◇
@Freed0160さんからお薦めレビュー頂きました、ありがとうございます(*´∇`*)
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