第109話 新人その2
新人冒険者はあの3人組だけじゃ無かった様だ、3日の休養日を挟んでギルドに来たら見た事の無い男女が居た。
兄妹なのか良く似た2人でなんというか…明らかに貴族ですよね?
まずお揃いのキラキラ輝くハニーブロンドにサファイアの様に美しい蒼い瞳、立ち姿がシュッとしていて明らかに気品がある。
男性は20歳くらいで、リカルドを見た時も正統派イケメンで王子様っぽいとは思ったけど、優男風味がプラスで余計に王子様っぽい。
女性は成人したてだろうか、私と年齢が変わらなそうだ。
家事なんてやった事ありませんと言わんばかりの細く白い指、これまで日焼けをした事すら無さそうなくすみの無い肌、ひと言で言って美少女。
観察していたらパチリと目が合い、一緒に居た男性に話しかけた。
「お兄様見て下さい、わたくしより小さな子も冒険者の様でしてよ。あんな子でもなれるんですもの、私達の名が知られる様になるのもすぐですわ、ほほほほ」
貴族!! この人達間違い無く貴族だよ!
寧ろ貴族である事を隠すどころか誇示するかの様な言葉遣い、周りからも関わらないでおこうという雰囲気が伝わってくる。
「油断するなフェリス、市井には幼くとも強かな者も多いのだぞ」
「はいっ、お兄様!」
ほら、市井とか言っちゃってるし。
世間知らず感が溢れ出てますよ~って誰か教えてあげなよ、2人は周りが見えて無いかの様にお喋りを続けた。
リカルドは我関せずと言わんばかりに既に
ウチのリーダーが関わらないと決めた様なのでアレは視界に入れないでおこう。
ビビアナとホセが「凄い新人が現れたな」「確かにある意味凄いわね」とポソポソ話しているから気にはなってるみたいだけど。
「なぁ…、コレ…」
依頼掲示板を見ていたリカルドが皆に声を掛けてきた、なにやら
その指の先にある依頼札を覗き込むとこう書かれていた。
『要人警護 Aランク以上
対象 若い男女2人
条件 本人達に気付かれず、出来るだけ怪我をさせない様に見守る
期間 出来れば2人が満足するまで(応相談)
報酬 1日大銀貨1枚 』
「要人警護って…」
エリアスがさっきの兄妹をチラリと見る。
「若い男女2人…」
ホセが苦虫を潰した様な顔で振り向く。
「本人達に気付かれず…」
ビビアナが顳顬を人差し指でグリグリしながら目を瞑った。
「絶対あの2人だよね…」
私の呟きに全員が大きなため息を吐いた。
「よし、あの2人は見ない関わらないという事で」
リカルドの言葉に全員が頷く、そして討伐系採取の依頼札に手を伸ばそうとした瞬間、無骨でシワの多い大きな手がリカルドの肩を掴んだ。
「おお、数日前に立派に要人警護を成し遂げたAランクパーティの『
「ギルマス……、俺達はその要人警護の大変さを味わったばかりでな、暫くは気楽な討伐系を受けようと思ってたところなんだ」
リカルドは一瞬ジトリとした目をギルマスに向けたが、すぐに作った爽やかな笑顔で拒否した。
「わかってんだろ~? お前達ばかりに色々押し付けちまって悪ぃとは思ってるけどよ、ここで活動してるAランクなんて実力はあるけど粗野な奴らばっかなのは知ってんだろ!? お前らだけなんだよあのお嬢様が相手でも大丈夫そうなのはよ~、この通りだ、頼む!!」
「…………」
「結構報酬も良いだろ!?」
周りに聞こえない様に懇願するギルマス、断り文句を考えているのか黙ってしまったリカルドの肩を揺らして何とか受けさせようとしている。
「だが…、本人達に気付かれない様に、なんだろう? だったら粗野だろうが何だろうが関係ないんじゃないのか?」
「そいつぁ警護だと気付かれなきゃ良いらしい、出来れば偶然を装って同行して冒険者ゴッコに付き合って欲しいそうだ。どうせ過酷さにすぐに根を上げるだろうと言っていたからな、冒険者の厳しい現実を知ればさっさと引き上げるだろうよ」
「退いてちょうだい」
ギルマスがリカルドを説得していたらお喋りが終わったのか新人兄妹が背後に立っていた。
普段なら喧嘩になっているところなのに、依頼掲示板の前に居た他の冒険者も関わり合いたく無いのか何も言わずにそそくさと退いた。
「ふっ、冒険者にもわきまえた者がいるのですね」
男性にフェリスと呼ばれた女性はひと通り依頼掲示板を眺めると依頼札をひとつ手に取り男性に見せる。
「お兄様、わたくし達の初依頼としてこちらなど如何?」
男性が札を受け取り確かめると首を横に振った。
「フェリス、よく見なさい。ここにランクが書いてあるだろう、私達はGランクなのだからFランクまでしか受けられないのだよ。それに
男性は片手で顔を覆って俯いてしまった、ツッコみたい、物凄く色々とツッコみたいが関わり合いたく無いから我慢だ私!
そんな兄の姿を見たフェリスはショボンと肩を落とす。
「わかりましたわ…、この札は戻してきます。そのかわり一緒に選びましょう?」
顔を覆う手にそっと触れ、上目遣いで小首を傾げて甘える様に言うと、兄はその辺の女性を纏めて虜にしそうな笑顔を見せて頷いた。
「な? あんなの放置出来ねぇだろ? あんなのでも何かあったら戦争の火種になるかもしれねぇんだ、頼むよ…」
追い討ちを掛ける様なギルマスの言葉にリカルドは項垂れる様に頷いた。
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