第81話 初めての夜会 中編
話もひと段落した事だし、帰れるなら帰りたいけどガブリエルは今夜の主役だから最後まで帰れないんだろうなぁ。
せめてこのお子様達から解放されたい、ロイヤルな方々のお相手なんて言葉遣いとか気をつけなきゃいけないから気疲れする。
軽食をつまみつつ果実水を一緒にいただいている間にガブリエルがこっちに向かって来ていないかコッソリ探索魔法を使った。
「『
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、何も。ただそちらの騎士の方以外にも護衛をつけていますか?」
「いや、王宮の敷地内だから近衛騎士だけのはずだ、そうだな?」
「ハッ、左様でございます」
王子様の問いに騎士が答えた、おかしいな、ドアの前に待機していた2人の騎士達の他にも窓の外…小さなバルコニーにも人が居るんだけど、隠密だから知らされて無いかそれとも…。
「王太子殿下、第2王子殿下、今度は違うお話をお聞きになりますか? 今度は騎士の方にお話しして良いお話か確認しますね、こちらへ来て下さい」
もしもの時の為に王子様達から離れない方が良いと思い、騎士を呼び寄せて耳打ちする。
「バルコニーに人がいますが護衛ですか? それとも刺客でしょうか?」
そう言った途端に騎士は弾かれた様に窓を開けに行った。
馬鹿なの!? コッソリ教えた意味が無い!!
「そこに居るのは何者だッ!?」
騎士が窓から飛び出した瞬間何かが投げ込まれたが、騎士が走り出したと同時に王子様達の側に行き、窓が開く音に紛れて障壁魔法を展開しておいたお陰で投擲されたナイフは弾かれた。
弾かれたナイフは2本、しかも鑑定では毒が塗られている様で、どうやら2人共狙われていたらしい。
「ぐぁッ、くっ、待てっ」
騎士が下に向かって叫んでいる、どうやら逃げられた様だ。
王子様達がビビって目を瞑っている間にストレージから棒手裏剣を1本出しておく、じゃないと毒付きのナイフをどう弾いたか聞かれた時困るもんね。
騎士の声に反応して廊下に居た騎士達が入って来た。
「侵入者だ! 今ここから飛び降りて出口方面へと走って行った、人数は1人、全身黒い服だ!」
飛び出した騎士は窓から脇腹を押さえながら戻って来ると、入って来た騎士達に状況を報告した。
1人はすぐに飛び出して行き、もう1人は私に抜き身の剣を向ける。
「動くな」
「王子様達の命の恩人にどういうつもり? それとも貴方も刺客なのかしら?」
腰に手を当て、もう片方の手で床に落ちているナイフに親指を向けると、ナイフを目にして剣を納めた。
「すまない、王子様方を助けていただき感謝する」
ガシャッと鎧の音を立てて胸に拳を当てて敬礼の様なものをされた、この人は良い人なのかもしれない。
私達が話している間に脇腹を押さえたままの騎士が落ちているナイフを拾おうとしていた。
「あ、毒に気をつけて」
「何? 毒だと!?」
キッと私に疑いの目を向けてきた、毒が塗ってあるのを知っているのは刺客と関係あるからだとでも思ったのだろうか、だったら教えるはずないでしょうが。
「あ~…、刺客は王子様達が死んだか確認もせず逃げたでしょ、って事は掠っただけでも死ぬ様な強い毒が使われている可能性は高いわ。王子様は2人で私は1人、庇ったとしても1人しか助けられない…私が凄腕の冒険者じゃなきゃね」
ニヤリと笑って棒手裏剣をピコピコ動かしアピールしてやった。
助かった事に気付いた王子様達は私達の遣り取りをキラキラした目で聞いていて、王太子は何も持っていない方の手をギュッと握ってきた。
「そなた…、私の妃にしてやろう!」
「「「なっ!?」」」
王太子の言葉に驚いた騎士達と第2王子の声がハモる。
「ダメです! ぼくが結婚します!」
「王子様方、何をおっしゃっているんですか!」
「そうです、この者は平民ですよ!?」
騎士達が慌てているが、ツッコミどころが満載だ。
騎士達、慌てなくてもこんなショタっ子にプロポーズされて本気にする程私はお馬鹿じゃないから。
王子様達はきっと特撮ヒーローに憧れる少年の様な心境なのだろう。
「ふふふ、光栄ですが私は自由を愛する冒険者なのです。王族にも貴族にもなりたくないのでお断りさせて頂きますね」
「自由を愛する……そうか…」
王太子がしょんぼりと肩を落とし、騎士達はホッと息を吐いた。
その時イケボが耳に届く。
「アドルフォ! グレゴリオ! 無事か!?」
「「父上!」」
王様が王子様達に駆け寄り膝をついて2人を抱きしめた、ちゃんと愛されている事がわかってホッコリ。
「陛下、アイルが居るから大丈夫だと言ったでしょう?」
後からガブリエルがヒョッコリ顔を出した。
いやいや、たまたま探索魔法使ったから気付いただけで、完全なる不意打ちだったら危なかったよ!?
最悪治癒魔法で何とかなるのは何とかなるだろうけどさ、その場合それこそ帰して貰えなくなっちゃうかもしれない。
「先生…。何があったか詳しく報告せよ」
王様が騎士達に命じてこの場で起きた事を説明させた、そして差し出されたナイフをガブリエルが手に取り匂いを嗅ぐと顔を顰める。
「コレは…少しでも掠っていたら今頃お2人の命は儚くなっていたでしょうね、ヒパリスの毒が塗られています」
「何ッ!? アイル、改めて礼を言おう、息子達の命を救ってくれて感謝する。褒美は何が良い? 私に出来る事であれば何でも言ってくれ」
「「陛下!?」」
どうやらかなりヤバい毒だった様だ、王様の言葉に騎士達が咎める様に声を上げた。
「礼をせねば私の気が済まぬのだ、何が良い?」
褒美が貰えるなら
ガブリエルをチラリと見たが、ニコニコしてるだけなので頼れない、少し考えて私は口を開いた。
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